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-------------------------------読 後 放 談 (3)------------------------------------ |
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ミステリー短編集「淋しい狩人」宮部みゆきです。(1)6月は名ばかりの月(2)黙って逝った(3)詫びない年月(4)うそつき喇叭(5)歪んだ鏡(6)淋しい狩人、以上6篇が収録されています。
東京下町、荒川の土手下びある「田辺書店」という古本屋さんを頼まれて経営している岩永幸吉、通称イワさんと孫の高校生稔君コンビが活躍する短編集です。いろいろな事件が起きあがりますが、古本屋さんって起きても不思議じゃないような気がしますね。本に怨念や嘆き悲しみナドナド込められている訳じゃないですが、いろいろな所から集められた本は、それぞれ本箱や机の片隅から沢山の人生、生活を見聞きしてきた証人みたく感じられ、何かが宿っているような気もさせられます。まあ、現在ある大手のチェーン店の本にはそんな雰囲気はないでしょうけど。
ボクは本を処分できないタチでして小説以外の雑誌もかなり保存しています。パソコン雑誌のASCIIなど嵩張る上に今じゃ陳腐な内容ですが25年以上の分は保存していると思います。パソコン関係の雑誌はこれ以外にも購入していましたから全部集めれば相当な数です。まあ、雑誌ですらこうなのですから小説なんてとてもとても処分なんて出来ません。隠居でもしたら、もう一度読み直そうかとも。出来るかな。(^_^;)
あれれ、本の感想じゃなくて古本の話になってしまった。まっ、本書も期待を外すことなく十二分に堪能できる短編小説であることは間違いないです。(^_^)v |
宮部みゆき、時代小説短編集「かまいたち」です。宮部みゆきの時代小説、良いですねっ。表題「かまいたち」に「師走の客」「迷い鳩」「騒ぐ刀」の4篇が収録されています。この内、「迷い鳩」「騒ぐ刀」はデビュー前の1986年、1987年に執筆されたものに加筆したものです。これらは時代小説ながら、その後の「龍は眠る」「クロスファイア」などに続く原型とも言えそうですね。本書の解説を笹川吉晴氏(文芸評論家)が書かれていますが、宮部作品を鋭く分析してあり、ファンならずとも共感を覚えるでしょう。
どの作品も十分満足して読み終えました。宮部作品の時代小説全てですが、そのように当時の日常生活、生活習慣から社会規範、身分制度が実社会へどの様に反映しているのか、町並みの様子から地理的な位置、などなど下調べをしたのでしょうか、驚かされます。10年くらい前の出来事なのだから知っている人は知っているはず・・・・みたいな感じで実にサラッと書いています。海外小説を読む時のように、おぼろげながら知っている知識と、元々違う文化なのだからと当たり前に受け入れながら読む時と似ていますね。ですから、時代考証云々などしないで安心読める背景があるから、メインの物語へ没頭できるわけです。 |
乃南アサ「5年目の魔女」。女性の心理描写を書かせたら右にも左にも出る者はいないと言われているそうな著者です。男にとっては永遠に理解できない分野ですから、同感したとか共鳴したとか素直に言えないのですが、だからと言って簡単にコワイなんて片づけられるものでもない訳で、結局はそういうものなんだと納得するしかないのです。
仲良しの同僚が上司と不倫の関係になる。両方につき合いのある主人公は双方の話を聞きつつ心の中で非難しているのでした。社内に噂が広がり、いつしか噂のかたばを担ぐようになり不倫の双方から逆に非難されるようになった主人公は退社するのでした。・・・・それから5年、不倫の上司は離婚、破産、事故死、女性も退社し田舎へ戻るも身内の不幸などにより家を売り払い所在不明になります。5年間片時も忘れた事のない主人公は所在不明の女性の行方を捜し始めるのですが、同時に無言電話を受けるようになるのでした。
どちらの女性も男からしたらコワイです。たぶん、誰もがその女性たちと同じ行動をすると言うのではなく、そのような部分を持ち合わせていると解釈したら良いのでしょうけど、やはり、そういう事も有るのだろうなと言うくらいしかないですね。嫉妬、妬み、侮蔑、優越感、・・・なんて言葉が浮かんできますが、それもピッタリ当てはまるとも思えないのです。美しく優しい女性の皆様、ぼくらの女性像はあなた方が思っている10倍以上のイメージで捉えています。どうか、牙は見えないところで研いで、優しく美しい部分だけをください。 |
「紫蘭の花嫁」乃南アサ。物語は花嫁衣装の衣装合わせをしている時に婚約者の前から突然新婦が消えてしまった・・・・。そんなプロローグから始まります。時は経てシティホテルを使った連続殺人事件がおき、県警本部に特別捜査本部が設けられ本部長自ら指揮をとって事件に臨むのです。花屋さんを転々と渡り歩き、住まいを移して行く女性が。そして、それを追う男のミステリアスな話が並行して語られます。もう一つ、バーに突然雇って欲しいと謎の女が現れます。そのバーは県警本部長の行きつけの店。もう一つ、カットバックで一人の男の段々異常性を帯びてくる過去が語られます。もう一つ、県警本部長が監察医を疑い始める・・・・と、いくつもの物語が進行していくのですが、どの物語が何処に当てはまるのか見当もつかないのです。連続殺人事件と何処で結びつくのか・・・・。
しかし、読み終わり振り返ると、ちゃんと整合性が取れた説明がなされています。しかし、読んでいる最中は作者の意図した解釈にすっかり乗せられてしまいますから、本当にしてやられたなと思う事しきりです。詳しく書けないのが残念なのですが感想自体がネタばらしになりかねない本なので仕方ないです。しいて言うなら、追われる女に追う男、追われる男に追う女、これに尽きるのじゃないでしょうか。ラストに向かい何回もひっくり返されます。そして、最後の7行でもう一度・・・・・。 |
しかし、こうもハズレがないとは驚きです。「解決まではあと6人」岡嶋二人。プロットがまた素晴らしいですね。
興信所に女性が奇妙な依頼をするところから始まります。奇妙な依頼人は次々と興信所を変えては奇妙な依頼を。その一つ一つが重なり合うとき、ひとつの答えが浮かび上がるのですが・・・・。もう一つ、どんでん返しが。参りました。(^_^;)
いつもながら、ページをめくる手を止めさせないのですから、いかに無駄のない飽きさせない構成に成っているのかわかるというものです。映画で言えば100時間撮影して編集で2時間に仕上げる、そんな感じでしょうか。「解決まではあと6人」では5軒の興信所に奇妙な依頼をするのですが、その依頼に応えて解決します。一つ一つ解決する過程もそれだけでミステリーなのですが、その答えがどの様に繋がるのか、読者は薄々は感じつつも納得のいく解答を見つけるのは難しいでしょう。一つ一つの謎、そしてそれらを集めた大きな謎、まさしく、我がサイト名の「the
mystery of the mystery 」じゃないでしょうか。 |
連続で東野圭吾、「ブルータスの心臓」。産業機器メーカーの3人が、同じ付き合っていた女性社員に妊娠したと告げられる。脅迫にも近い女性の言動に殺意を抱いた3人は共同して殺害する事を決意するが、犯行後に殺されたのは殺そうとしていた3人の内の一人だった。そして、また一人。二転三転する息もつかせない展開、そして驚愕のラスト・・・・・。
題名の「ブルータス」とは開発中の産業ロボットの名前である。人間を排除し産業ロボット中心の構造を押し進めようとするメーカー。人間とロボットの関係を問いかけつつ、奇想天外な完全犯罪が進行します。動機も犯罪も緻密に構成された1級のミステリーです。ふむぅ、プロローグで刷り込まれたテーマに最後まで惑わされてしまいました。完全に脱帽です。(^_^)v
さて、事件の所轄が最初の死体発見現場である狛江署なんです。(^_^;) 実は狛江署の狛江市はボクの住んでいる所なんです。狛江市は東京都で都下36市に一つ。日本で2番目に小さい市です。都下ながら市街局番は唯一の03なんです。隣接は世田谷区成城、調布市です。・・・・、何と行っても小さい市なもので自前の警察署は無いのですね。所轄は調布警察署になります。成城署もまたがっていますね。と、言うわけで狛江署なんて無いのであります。まあ、小説ですから構わないのですが、住民読者としてはちょっと感情移入がしにくくなりrました。(^_^;) 東名高速の出口も話の中で出てきますが、関西方面からですと川崎インターの方が近いとなっていますが、距離感から見るとそう言えるのですが、用賀インターで降りてもそれほど変わらず、交通事情によれば早い場合もあったりします。自分の知っている地域が舞台だといろいろ細かいところまで目がいってしまうものですね。 |
東野圭吾「鳥人計画」です。冬季スポーツの花形、ジャンプ。ただ飛べば良いってものじゃない事ぐらいわかりますが、想像以上に厳しいジャンプです。ジャンプチームが合宿している最中に殺人が起きます。警察が介入、合宿所にあてられているホテルでの捜査が始まります。・・・・犯人に「自首しろ」と手紙が届きます。のちに警察に同様の犯人を名指しした密告状が。調査の結果、犯人は逮捕されますが動機を語ろうとしません。警察は動機調べに・・・・・。
犯人は中盤でわかりますが、動機が掴めません。犯人探しと言うより動機探しのミステリー・・・・・と、新趣向かなと思いつつも、何故?その謎に目が離せないのですから、さすがですね。ジャンプに関しての知識も得られて勉強になりますよ。刻々と動機の核心に迫りつつラストへ向かいます。しかし、さすが東野圭吾、これだけひっくり返されるとは思わなかったです。
スポーツと科学、オリンピックと評価、いろいろ話したいなと思うのですが、今回は止めておきます。そういう事も語らずにはいられなくなるようなミステリーでもありますので、十分堪能した上に、これ以上語れば作者の思う壺って事ですものね。 |
岡嶋二人「なんでも屋大藏でございます」です。便利屋を職業とする釘丸大藏が遭遇する奇妙な事件簿、5篇が収録されています。そういえば便利屋が大流行していた時代もありましたが、現在はどうなのでしょうね。様々な依頼が飛び込んでくる便利屋、この便利屋が無ければ成り立たないシチュエーションでもあったりします。5篇に各々についての感想は割愛しますが、どれもお面白く、楽しめます。とにかく依頼自体が奇妙なので、すぐさま虜になってしまいます。大藏に存在感がありますので、奇妙奇天烈なお話も絵空事には見えないのです。後書きで宮部みゆきが重ね合わせて読むと面白いという候補に「露口茂」「西田敏行」「川谷拓三」「橋爪功」の各氏の名をあげられ「菅原文太」が良いとか書かれていましたが、やはり「西田敏行」じゃないですか。金田一耕助も演られたしね。そういえば、ついこの間TVでこのドラマをやっていましたね。「片岡鶴太郎」でしたが。 |
小池真理子のサイコスリラー短編集「双面の天使」です。(1)共犯関係(2)眼(3)薔薇の木の下(4)双面の天使。元々、小池真理子を読み始めたのは競作の短編集で気に入ってしまったからです。そんな期待を裏切らずに満足できる短編集でした。世の中、うまく行かなくて当たり前、うまく行けば見つけもの。そんな、日常的に見かけそうな生活の中で、ちょっと道義的ならルールを破ったとか、ちょっと犯罪に手を染めてしまったとか、騙して玉の輿に乗ったとか、見つけものに出会った人々の転落のお話です。映画的にいうならば、「知らず知らずにミステリーゾーンに入ってしまいました」なんてナレーションが入りそうです。別に罰が当たったわけではないのですが、ちょっとした見つけものから奈落に落ちる姿を見ると「そんな罰はひどすぎる」と、しいて言うなら悪者側の立場で見てしまいそうです。世の中、ホントに甘くはないです。(^_^;) |
乃南あさ「微笑みがえし」です。微笑みがえしねぇ、さすが上手い題名です。殺人があるわけじゃないし、おどろおどろしたホラーでもないのですが、別な意味で恐ろしい話です。北海道、小樽同郷の同級生4人組の女性は夢と希望を持って東京に出てきました。それぞれの道を目指したものの夢破れ、今はそれぞれの道を歩んでいます。そんな4人組の一人は修学旅行でスカウトされアイドルになり有名プロデューサーと結婚をし、一時家庭におさまっていましたが、モーニングショーのキャスターとして再デビューする事になりました。デビューが数ヶ月後に迫ったクリスマスパーティを境に悪意に満ちた嫌がせが始まるのです。
女性ってコワイですね、・・・・何て言ったら叱られちゃうでしょうけど。男でもありそうな関係かも知れませんが展開が少し違うかも知れませんね。だいたい嫌なヤツとは分かった時点で付き合わなくなりますから。どうも、女性に限らず耐えるって言う事に何かを見いだすのか、争う事に怖じ気づくのか、将来有るかも知れぬ何か為の保険なのか、人間関係を切り捨てる事が出来ない人って結構多いのではないでしょうか。それも、ストレスを抱えつつ。でも、それもまた理解できないわけでもないです。放って置くくらいの気持ちが保てて気にとめなければ、自ら世界を狭くする事もないでしょう。世界は広い方が良いです。狭量と寛大は裏表みたいですが、結果というか、その先にたどり着く所にあまり違いがないって事もまた事実です。・・・・まあ、つまり、好きに生きれば良いって事ですか(^_^;)。煩悩の選別をしましょう。(^_^)v |
有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」。(1)動物園の暗号(2)屋根裏の散歩者(3)赤い稲妻(4)ルーンの導き(5)ロシア紅茶の謎(6)八角形の罠、以上6篇の本格ミステリーが収録されています。お馴染みの探偵役の火村英生、ワトソン役の有栖川有栖のコンビによるミステリーだ。
実はぼくとしては、印象に残るものは無かったのです。それぞれ、新趣向のミステリーには違いがないのですが、驚くべきものは残念ながら少なかったです。短編は確かに短いです。短いから一つ一つの言葉、文章が大事なんですね。本格派ならトリック、どんでん返し、謎解きが揃っていれば良いのかと言えば、そうじゃないですね。名コンビらしい火村、有栖川の存在感が全く感じられない。どういう人物か見えないのですから、他の登場人物もしかりですね。こうなると、名前じゃなく記号でも良いって事になるのじゃ。いかに短く、説明的ではなく、人物に生命を与えられるか、大事な事です。 |
中学生コンビが大活躍「夢にも思わない」の前作にあたる「今夜は眠れない」宮部みゆきです。こちらの方が1年早く出版されました。ホームズを気取る島崎君とおっちょこちょいだけど、愛すべき少年緒方雅男君の中学生コンビの活躍は楽しくもあり哀しくもあり、勇気と行動力で難問を解決する姿にある種の感動を覚えたりします。二人の絶妙の会話は「夢にも思わない」の方が多くなっているようですね。
緒方雅男君の所へ弁護士が訪れるところから始まります。母親の聡子さんへ独身時代に世話になった人から5億円の遺産が送られたと告げられ、緒方一家は隣近所から始まって会社やマスコミと好奇の的となり一大騒動に発展しますが、それと同時に父親の浮気問題に始まって家庭内の不協和音が吹き出してくるのでした。そんな中、目の前には誘拐事件が待ち受けているとも知らずに島崎君と雅男君は真相究明に乗り出すのでした。
大金は果たして家庭に幸せをもたらす玉手箱だったのでしょうか。夫婦とは、親子とは、家族とは。愛情と信頼さえ有れば乗り切れない困難なんてありゃしないのだ。一つのラストが終わると、もう一つのラスト。もう一つラストが終わると・・・・・・・。 |
「チョコレートゲーム」岡嶋二人。第39回日本推理作家協会賞受賞作。父親は小説家。ある日、息子の中学3年生の不登校、遅刻、早退の事実を学校から知らされるところから物語は始まる。問いただそうと息子に会うとアザだらけの身体を発見する。そして殺人事件が起きる。疑いを持たれる息子。チョコレートとゲームと?。真相究明に父親は乗り出すのだ。
中学生の実態などテレビなどで放送されていますが、もちろん全体の一部分であろうと思います。今の社会環境を考慮すれば、それなりの実態だろうと思います。ただ、同様な事は昔から変わらず、その時々の大人社会から見れば驚くべき実態っと言う事になるのでしょう。ですから、チョコレートゲームに驚くべき事はなく、それほどショッキングな題材ともいえないでしょう。父親と息子の関係がテーマにおかれています。これこそ家庭の実態かもしれません。犯人を、真相を追い求める父親は汚名をはらすことが目的ですが本質は失われた親子関係を取り戻すための、懺悔だったのではないでしょうか。 |
東野圭吾「十字屋敷のピエロ」。呪われたピエロの人形は全てを見ていた。・・・・十字屋敷と呼ばれる資産家の屋敷で自殺をした夫人の49日の夜に殺人事件が起きる。宿泊していたのは全て身内の人間だ。しかし、どうも犯行は外部からよりも内部の人間の可能性が高くなってくる。手掛かりを結ぶ線は何処へ向かうのか?。
密室でもなければ解けない謎が有るわけでもない。誰でも犯人にも探偵にもなれる。不思議な事など何もないのだが、各々の証言、行動、そしてどの様につながるのかわからない証拠の品。何が真実で、何が嘘か、誰が犯人で、誰が被害者か、真実は全て明示されているのだ。そんなミステリーが「十字屋敷のピエロ」なのです。まあ、十字屋敷なんて題名に出てきているわけで、ミステリーファンなら「何で十字や?」と、ここにも一つ伏線があるぞとチェックを入れてしまうので、かなり開け広げな話ではありますが。本に書かれている粗筋ではどんでん返し云々とありますが、どんでん返しというより、何回にもたたみ掛けてくるラストとでも言った方が良いでしょう。 |
小池真理子「彼方の悪魔」。帰国した留学生はリスの死骸を持ち込んだ。ペットとしていたのだが帰国直前に死んでしまい、自分に家の庭に埋葬しようと考えたのだ。だが、そのリスはペスト菌を持っていたのだ。同じ頃、深夜TV番組の女性キャスターに脅迫状が舞い込む。狂気に満ちた脅迫状、感染のおののく街、・・・・そして脅迫者はついに行動に出たのだ。
ペストの感染経路、脅迫者の正体、全てが読者には明示されています。知っていながら、天空の上から見おろすように、追う側の医療チームや警察がどの様にたどり着けるのかと傍観者のように見ている感じになるのでしょうか。ネタはばれているのに何だ、この緊迫感は。一分一秒を争うがごとくめくるページ。一休みしようものなら助からないぞ、と一気に読まされてしまうのです。謎こそ命のミステリー、謎など無くてもミステリー、ホント、ミステリーはミステリーなんです。 |
「6月19日の花嫁」乃南アサ。目が覚めた場所の記憶はなかった。ドアが開くと見知らぬ男が。雨の道路から連れてきてくれたとの事。何も記憶がなかった。・・・・まるで謎の女性が謎の男性の所から記憶を取り戻そうと行動に出たのだ。徐々に解明されていく過去ではあっあたが、その先には大きな壁がもう一つ立ちはだかっていた。6月19日の意味するところは?
・・・・・と、最初からドキッとするような謎の連続。解明されると新たな謎がまた広がる。もう、目が離せなくなる展開に怖々ページをめくります。詳しくは語れないので辛いのですが、どうして記憶喪失に?6月19日は?に集約される謎だけでラストまで引っ張られてしまいました。殺人事件なんて出てこないのですが、「何?」という、わからない謎(わからないから謎ですが)ほど怖いものはないって事でしょうか。ラストの意味するところは何だろう。果たして乗り越えられたのか、はたまた振り出しに戻ってしまったのであろうか・・・・。 |
岡嶋二人「どんなに上手に隠れても」です。またまた誘拐事件だ。アイドル歌手をめざす売り出し中の少女タレントがテレビ局の控え室から誘拐された。脅迫文が届き、身代金の受け渡しの方法が示される。広告業界にうごめく策略の中、無事に助け出す事が出来るのか・・・・。
・・・・と、言うわけで、相変わらず息もつかせぬ展開で、ぼくらを虜にする岡嶋トリック。マジックか?(^_^;)。しっかりした筋立ての中、伏線がはりめぐらされ、たたみ掛けるように次々と目が離せない場面が展開して行きます。ラストを見ずして今夜は寝られるものか・・・・と言うくらい面白いです。
岡嶋二人はご存じのように徳山淳一、井上泉、両氏の共作ですね。現在は田奈純一、井上夢人と別々に活動されています。共作と言えばフレデリック・ダネーとマンフレッド・B・リーのエラリー・クイーンでしょう。緻密に構成されたトリック、奇想天外な事件、凝った道具立て、そして合理的な解決と共作たる所以と言いましょうか類似性を見る事が出来ます。殺人の動機から始まってあらゆる部分で激しい意見の交換がなされると聞いています。相互チェックが既に働いて出来上がったミステリーです、読者がボロを探し出そうったって出来るものではありません。もう完璧と言っても良いのじゃないでしょうかね。 |
「墓地を・・・小池真理子」以来、どうもコワイのを無意識に避けているわけじゃないのに、ほのぼのミステリーが続きます。ご存じ、東野圭吾「浪速少年探偵団」。いいっす!ネ!。小学校教諭、しのぶセンセの魅力もさることながら、生徒たちの何て生き生きしている事。今日びの子供、こんなん居ますか?と思いつつ、居るんですよね。情報社会の弊害というか、昔からあった事なのか、一部が全部、際立ったものが代表のように取り扱われ、本質が見抜けなくなっています。大部分はそんなに変わっちゃいませんって。
しのぶセンセの短編が5篇収録されています。先生と生徒、刑事のコンビ、このコンビネーションで語られる物語は宮部みゆきセンセ憧れの関西弁だ。軽妙ながらも言葉の裏にあるニュアンスが何とも奥深い関西弁で語られる物語は、その軽妙さと裏腹にしっかりした本格ミステリーなのだ。だから、面白くて、楽しくて、すごいのである。こんなミステリー、大人だけで楽しんで良いのでしょうか。昔、ホームズで開眼したように、子供たちがミステリー、本、読書の楽しさ、素晴らしさを発見出来るきっかけにならないだろうか。 |
「人さらいの岡嶋」と業界で呼ばれているらしい、岡嶋二人の「タイトルマッチ」です。またまた誘拐ミステリーですが、最高に面白かったです。テンポが良いのは無駄を省いているからでしょうが、各章とか場面の区切り方がまさに映画的でシーンの積み重ねのような構成になっています。
元世界チャンピオンの生後10ヶ月の子供が誘拐された。2日後の世界タイトルマッチへ出る義弟がノックアウト勝ちをしとろ脅迫文が来る。警察は動きだしわずかな残された犯人の足跡を追う。ところが義弟が右手の中指に根元にひびを入れてしまう。試合は出来るのか?、犯人の目的は?、子供の命は?。3日間の攻防が始まるのだ。
3日間のお話なんです。まず、ページをめくる手ももどかしくなるほど、止められなくなりますね。止めると時間が無くなるような強迫観念さえ浮かんできて、早く読み進めて子供を助けなくてはと・・・・そんな気になります。凝縮された3日間、わずかな手掛かりから犯人を追う警察、アクシデントを抱えながら試合に出なければならない被害者側、これがタイトルマッチに向かって進んでいくのです。ラストのタイトルマッチ会場、そして試合開始、ゴング、・・・・息詰まる試合と重なるように犯人へ一歩一歩近づく警察、ハラハラドキドキの展開は息もつかせません。そしてラストを迎えるのです。素晴らしいとしか言いようがない!。 |
岡嶋二人の実質のデビュー作「あした天気にしておくれ」は江戸川乱歩賞受賞作「焦茶色のパステル」の前年の27回乱歩賞の候補作だった。なるほどねぇ。この辺の事は詳しく後書きにありますのでお読み下さい。
競走馬「セシア」は3億2千万で4人の共同馬主によって落札された。そのセシアが誘拐され、身代金を要求されるのだ。目的は一つ、それに向かう犯罪が2つ、不可解な真相は究明されるのか、身代金は受け取れるのか、ラストまで目が離せない息もつかせぬ展開はスリルとサスペンスだなぁ。
・・・と、言うわけで競馬の世界の勉強も十分させていただいた上に、おつりが来るくらい満足して本を閉じる事が出来ました。しかし、面白いですねぇ。おぼろげながら、あそこへ続くのではと思っても、前々つながりが見えてこない展開に、ひとつひとつの謎がどんどん深まって先が見えなくなってきました。こんなに予想がつかないなんて、さすが競馬ネタだけに予想は難しい。(^_^;) 詳しく書けないのが残念だけどホント面白い本でした。 |
またもや中学生コンビが活躍する「夢にも思わない」宮部みゆきです。しかし、なんです、宮部みゆきの中学生の語り口は上手ですよね。全く、違和感がない。大人になると中学生くらいの時代の事も忘れてしまうのですが、よくよく振り返れば結構に大人びた考え方をしていたり、大人が想像する以上に大人の事がわかっていたりしますものね。子供と大人の中間とでも言うのでしょうか、そんな位置が小説の上で生かされているのだと思います。
秋の「虫聞きの会」が催されている近くの公園で、恋心をいだいている同級生の従兄弟が殺されます。従兄弟は20歳の女の子。どうやら売春組織の影が見え隠れしてます。落ち込んでいる同級生の女の子のために中学生コンビが真相を追い始めるのです。
中学生コンビの会話はまるで漫才のようです。ボケ有り、突っ込み有り、オチ有り。殺人事件というのを忘れてしまいそうな愉快な展開ですが、所々にちゃんと散りばめられている思春期の心の葛藤やそれ故に犯罪にも染まりやすい不安定な年頃の心理描写などで奥行きのある物語になっています。物語は二転三転して着地するのですが、その展開だって十分楽しめるのに、ラストにもう一つ落としているのです。大人の話じゃこうは行きません。中学生という時期だからこそ生かせるラスト。スタンドバイミーがBGMで流れてくるよう。辛く悲しいけれど子供から大人に脱皮したのですね。爽やかな青春ミステリーでした。 |
小池真理子「追いつめられて」。短編集です。(1)窓辺の蛾(2)悪者は誰?(3)追いつめられて(4)泣かない女(5)隣りの女(6)予告された罠の6篇の作品が収録されています。う〜ん、やはり小池真理子の短編は良いですね。どの作品も密度が濃いです。こんな事言うと怒られてしまいますが、手抜き無しって感じでしょうか。短編ながら伏線あり、どんでん返しありで十分堪能できます。
余分な所をそぎ落とし凝縮された短編集はどの作家も同じようなのですが、ラストに含みを持たせています。後は読者が想像して下さいって事ですね。長編ですと大円団が欲しい所を原稿用紙の枚数制限のせいでしょうか、読者にバトンを渡す、そんな感じこそ、ぼくが短編集の大好きな大きな要因です。 |
阿刀田高「だれかに似た人」短編集です。阿刀田高らしいというか、出だしの文章が一ひねりも二ひねりもした妙がある語り口で始まっています。(1)Y路地の街(2)無邪気な女(3)灰色の名簿(4)黒い数列(5)愛妻物語(6)明日を売る女(7)海の蝶(8)女体(9)孤独な舞踏会(10)奇談パーティの10篇の作品が収録されています。
どれもが良いのですが、「Y路地の街」が好きですね。右に曲がるか左に曲がるか、人生にとって大きな岐路かも昼食のメニューまでいつも選択を迫られている私たちの日常です。人の出会いもそんな選択から生まれたりします。例えば会話にだって、ある事を言うか言わないかの選択もあります。選択の積み重ねが日常とも言えますね。そんな選択の積み重ねが他人とどの様にかみ合うのか、かみ合わないのか、で人間関係も出来上がっていくようです。そんな選択がかみ合いながらラストへ向かいます。そして、ラストのY路地をどちらに行けば良かったのかは読者の判断に委ねられるのです。
本のタイトル、「だれかに似た人」は収録作品にある題名ではありません。きっと収録作品を見回したところ浮かんだ題名じゃないでしょうか。そう、全ての作品の主人公はだれかに似た、そんな身近なありそうな物語なのです。 |
小池真理子のホラー小説「墓地を見おろす家」。小池真理子はこの他に「死者はまどろむ」の一編のホラーを書いている。・・・・どうも、ホラーっていうのは怖くてね。(^_^;) ミステリーではどんなに怖くても最後には論理的な説明が付いてどこかホッと出来るのだけど、読み終えても正体不明の出来事に何の解明も出来ず解決すら出来ない怖さも持っているホラーですからねぇ。
新築マンションに4歳の娘を持つ夫婦が引っ越してきます。格安の筈で隣が墓地、反対方向に火葬場と誰でも怖じ気づきそうなマンション。14世帯入居出来るのにまだ半分も埋まっていないマンション。それどころか、一世帯、一世帯と減っていくマンション。そんなマンションの8階に移り住んだ家族に恐怖が少しずつ広がり始めるのでした。
小池真理子のミステリーにも出てくる日常と非日常の交差。日常に忍び寄る非日常はいつでもコワイのです。暗闇の夜よりも明るい日中のコワさってまた別物ですね。誰も居ないマンションって誰も居ない学校の怖さがあるようです。むしろ墓地なんかいらなかったかも知れません。精々、大昔の墓地の後とか、刑場のあととか、そんなもので良いわけで、ごく当たり前の日常のほうが怖かったような気もします。さて、恐がりなのに恐がり好きなボクとしては、例のごとくたっぷり怖がりまして作者の思惑通り、夜中のトイレは行かれませんでした。(^_^;) |
吉村達也「戸隠の愛、殺人事件」です。本書は「そして殺人がはじまった」を改題、内容に修正を加えて文庫化した作品です。プロローグで一人の女性が雪の戸隠で自殺をします。この女性こそ、これから始まる4人姉妹を狙った惨殺事件の被害者の母親なのでした。東京、成城で顔を潰された惨殺死体が発見されるところから物語は始まります。しかし、その死体はその家の主人である女性。何故に顔を潰す必要があったのか、置いてあった純金製の将棋の駒と、謎が深まっていきます。4人姉妹の長女である被害者は資産家の娘です。そうして、二人目、次女が殺害されるのです。
容疑者らしき人物は長野、横浜、と遠方の上、アリバイが成立しています。資産目当てらしいが、動機がはっきりしない、何とも不可解な事件を解決するのが、吉村作品ではお馴染みの「朝比奈耕作」なんですね。
朝比奈耕作と平田均、警視庁志垣警部と和久井刑事、このそれぞれのコンビが相変わらずユーモア溢れる会話を繰り広げています。これはこれでとっても楽しいですが、やもすると悲惨な事件が軽く見えたりしてバランスを壊すすれすれの線にも見えるのですが。朝比奈耕作のホームズばりの名推理で事件は解決したかにように見えたラストに、題名が戸隠だけにもうひとつラストが隠されていました。見てはお楽しみのどんでん返しでした。 |
本格派推理小説、「マジックミラー」有栖川有栖。時刻表ミステリーといえば西村京太郎となるのでしょうが、一ひねりも二ひねりもしてある「マジックミラー」。何故に双子の登場か、双子だから殺す側に?、双子だから殺される側に?・・・・思いも寄らぬ展開はミステリーファンならずとも唸らせられるでしょう。
双子の兄弟の兄嫁が別荘で殺害される。しかし、その兄弟は一人は福岡博多にもう一人は山形酒田にと完璧なアリバイがあった。兄嫁の妹は兄嫁の結婚前の恋人であったミステリー作家と共にその謎を追いはじめる。そんな時に同じ別荘で双子の兄弟と思われる首と手首を切断された死体が発見される。深まる謎は解明されるのか・・・・。
ダイアローグで二人の男の何やら犯罪計画のような会話が語られています。ふむぅ、ありきたりと言えばありきたり、定番と言えば定番、何を示唆するのか後の展開を見れば一目瞭然なのですが、もう既にここで読者は偏見を刷り込まれてしまったのです。第一の殺人と第二の殺人がどう結びつくのか、ラストまで分からず仕舞で引っ張られてしまうのだから、まさにしてやられたとしか言いようがないのだ。鉄のアリバイを暴くのはほんの小さなミスとも言えないようなミス。コロンボのラストのような幕引きに脱帽でした。(^_^)v |
「ウィンクで乾杯」東野圭吾。同僚コンパニオンに青酸カリによる死体がホテルの一室で発見された。部屋は密室であった。真相を探ろうとするコンパニオン香子の隣に引っ越してきたのはなんと刑事。かくして二人の活躍は始まったのである。大人のコンビながら妙に爽やかで学園ドラマを感じたりしますね。
コンパニオンと言えば接客のプロですが、もちろんピンからキリまであって、ここの登場するコンパニオンは礼儀作法を心得た優秀なコンパニオン。何々ショーなどでパンフレット配ったり説明したりするのもコンパニオンですね。一度、説明などするコンパニオンチームを知る機会があったのですが、数回説明して資料を渡しただけなのに見事に説明しきっていたのに驚いた事があります。聞いてみると内容の意味はよく分からないとの事。それでもマイク片手に説明してします能力に感嘆せずにはいられませんでした。当たり前ですが、だから仕事として成り立っているのですよね。
ウィンクなんて最近じゃ死語に近いのではないでしょうか?。あまり見た事も、された事もないからな〜。・・・・・・ん、それは、あんただけだってぇ・・・(^_^;) |
乃南アサのデビュー作「幸福な朝食」。第一回日本推理サスペンス大賞、優秀作。ちなみに大賞は該当なしで実質第一回のトップ賞でした。まあ、読めばさもありなん、ミステリアスな語り口に「いつ、、何が起きるのか」と目が離せません。存在感ある主人公の行動を映し出す心理描写はまさにミステリー。
芸能界を夢見て上京した主人公は挫折の繰り返しで、今はフリーのベテラン人形使い。テレビ番組の人形劇に出演している主人公の挫折しながらも、未だに夢を捨てきれず芸能界にしがみついている状況。そんな中、声優との関係から新しい展開が生まれて来ます。夢を追うあまり、多くの犠牲を払って来た主人公は先の見えなくなった未来より、過去の楽しかった日々を、犠牲にしてきた頃を、取り戻すべく狂気の世界へ足を踏み入れてしまうのです。幸福な朝食が意味するところの戻らぬ過去に一体何があるというのだろうか・・・・・。
想定は芸能界となっていますが、むしろ日常的な世界でも常に起こりうる、いや当たり前に起きている事のようです。誰もが夢を持ち、希望の未来へ進んでいくのですが、実現する事の難しさ、自分の能力の限界などを知りつつ現実の世界と折り合いをつけながら生きていきます。夢の実現へ向かうには払う犠牲と可能性を天秤に掛け挫折の覚悟と正面から対決する時が来るのです。努力が報われるほど現実は安っぽく出来てはいないのです。可能性のない未来に夢を託して犠牲を払って進んだときに待ち受けているのは満足感なのか、焦燥感なのか、大きな挫折感なのか、ぼくにはわかりません。ただ、成功しても挫折しても「幸せだったあの日の朝食」はもう味わえないし、帰って来てはくれないのです。本書の主人公の嗚咽は1ページめから聞こえていたのです。 読み終えて本を閉じると「幸福な朝食」の意味が重くのし掛かる事でしょう。 |
「東京下町殺人景色」は宮部みゆきだ。まず、題名が良いですよね。「京都殺人案内」に匹敵しますね。
「・・・・・殺人事件」っていうのは「・・・・・MURDER CASE」って来るのでしょうけど、以外と海外作品では多くなく翻訳で殺人事件を付けているのが多いです。比べて日本では「・・・・殺人事件」が多いですね。わかりやすいと言えばわかりやすいのですが。全体像を表す洒落た題名、題名に謎があったり、解答が題名に隠されていたり、ナドナド、もう少し、考えて付けて欲しいですね。
好天の穏やかな日曜日、川岸で遊ぶ母娘がバラバラ死体の一部を発見します。日常的が一転して非日常になるプロローグ。日を置いてまた死体の一部が発見されますが最初の遺体と別人でした。続けて2人の死体。こんな謎が最初から提示されています。離婚をした警視庁刑事の中学生の息子がこの事件と触れあい謎の解明に進んでいくのです。陰惨な事件なのに爽やかなタッチで描かれるミステリーは日常と非日常の並行進行とも言えます。これが交わる時、謎が解き明かされるのでしょうか・・・・。
少年法の問題点など重い社会性を問いかける下地の上に存在感あふれる登場人物たちがこのミステリアスな事件を追うのですから面白くないわけがない。若者の想像力の欠如こそ少年犯罪の根元にある大きな原因の一つと解きます。ぼくも常々思っている事なので共感します。いじめなどもこの延長線上にあるとも言えます。
あまりにも小説の世界より悲惨な現実社会の事件の数々に人間の残酷な一面を見るようで暗澹たる気持ちになります。 |
小池真理子「プワゾンの匂う女」。13年前、心臓麻痺の婚約者を病院へ運ぶ途中、車の進路を妨害した3人の男女。一人殺され、一人は結婚相手をそして、今最後の一人が・・・・。復讐は始まった。
動機も解明されて、犯人もたぶんこの人だろう・・・・と、明かされている。それなのに、この最後の一人をどの様に始末するのか、犯行をどの様に止めるのか、正体はどの様に暴かれるのか、、、、という視点だけでサスペンス十分のミステリーに仕上がっています。殺害方法だってそれほど複雑な訳じゃない。むしろ、どの様に接近していくのかがサスペンスなのです。ちょっと視点を変えたミステリーですが、面白いです。当時は多重人格についての本も出始めた頃でしょうか。登場人物の存在感もあってか、重量感も感じられます。 |
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