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--------------------------------------読 後 放 談 (2)-------------------------------- |
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女流小説家の恋人が殺された。真相を探るべく女性編集者と乗り出すが、また殺人が。過去の海難事故の生き残りが次々と・・・・。果たして海難事故の真相は?。復讐は始まった!。「11文字の殺人」東野圭吾です。トリックは売り物じゃ無いのですが、サスペンスはありますよ。そしてお馴染みの2回3回とひっくり返すラストには唸らせられます。本書の解説を宮部みゆきが書いていますが、東野圭吾分析の腕はさすがです。最初から最後まで楽しめました。 |
東野圭吾の初期の作品「白馬山荘殺人事件」。兄の自殺に疑惑を持つ妹は友達と二人で真相を究明すべく山荘へ赴く。そして、第二の殺人。過去の事故死と関係があるのか?。マザーグースの歌の秘密は?
・・・・と、まあ本格派と分類されるべきか謎解き小説でした。27歳でデビューした3作目に当たる作品と断れば、納得のミステリーですね。今に繋がる人物描写にテンポある運びがちゃんと見え隠れしています。おどろおどろした所がない殺人事件はこれ以前の作品と同じですが、1回じゃおさまらないラストが嬉しいですね。さわやかミステリーが「秘密」や「白夜行」「片想い」と、どのような遍歴を重ねてたどり着いたのか、これからの検証が楽しみです。 |
続いて小池真理子「間違われた女」です。郵便受けに入っていた、切手の貼っていない手紙は十数年も会っていない高校時代の同級生の男からでした。手紙には勝手に二人は結ばれる運命だとか書かれ求愛しているのでした。顔も思い出せない男が何故、今頃こんな手紙を・・・・。・・・・・と、言うわけでサイコサスペンスは始まりました。不安を覚え、友達に相談する女性側と、パラノイア症のストーカー側と両方の視点で書かれ、進行していきます。ますます狂い始めるストーカー側、追われる女性と恐怖が何処でぶつかるのか。コワイ。その上まだまだ話は混迷して行き、驚きのラストへと向かうのです。
ある種、ストーカーの恐怖とでも言いましょうか、狙われたら防ぎようの無い犯罪に、どのように決着を付けるかというのは現実世界だって難しい問題でもありますね。防げるか、または犯罪そのものを起こさないかは、すべてストーカー側に委ねられていて、被害者の無力に等しい関係です。ストーカー側の話の進行でストーカーしている女性との会話の駆け引きと、ストーカーしている最中に知り合う女性との駆け引きが語られるのですが、筆者も文中でそれを普通の恋人同士でもあり得る言葉の掛け違いや心のすれ違いあり、それと変わらないのでは投げかけています。うむ、確かに恋愛中の心の動きって、ちょっとした言葉や態度でもあれこれ考えて悩んだりしますものね。相手がどう想っているのか想像するのは日常茶飯事ですものね。
題名「間違われた女」にはストーカーしている女性を間違えている意味もありますが、もしかしたらくい止められるかも知れなかったもう一人女性との関係で、ストーカーはその女性像を間違って見てしまったという意味にもとれるようです。そうそう、山本文緒の「恋愛中毒」もストーカー側からの話でしたね。 |
これから、読み始めようとしている、小池真理子「あなたか逃れられない」です。短編集「蒼迷宮」で「死体を運んだ男」が面白かったのがきっかけです。他の短編集でも読んでいると思いますが長編は初めてです。
有名画廊経営者の妻と浮気相手の愛人。密会の場に愛人の付き合っている若い女性が訪れ、そこで死亡します。自殺だという愛人ですが殺人の疑惑も。二人で死体を始末に行き、帰りに一人の男を同乗させる事になります。そして、脅迫が始まるのですが、この男、ホテルで殺害されます。いったい、犯人は・・・・。
ミステリーもサスペンスも盛りだくさんです。「あなたから逃れられない」とは、愛人からなのか、脅迫者からなのか、それとも夫からなのか・・・・サイコムードもあってドキリとさせられます。テンポもあって読みやすいから結構に引き込まれますね。ファンになりそうです。 |
東野圭吾「卒業」は乱歩賞受賞1作目にあたります。高校時代からの仲間は大学生に。そして、もうすぐ卒業という時期が来た。そんなある日、女子寮で仲間の一人の女性が手首を切って死亡しているのが発見される。部屋は密室であった。自殺の動機が思い当たらない仲間たちは自殺、他殺を巡って調べ始めるのでした。そして第二の殺人が・・・・。
動機を探るが何も出てこない。思い当たる事もない。友達って分かっているようで何も分かっていない事実に突き当たるのでした。まして、その仲間の中に殺人者がいるかも知れないとは・・・・。親や兄弟よりも深い関係があると思っていたのに、あまりにも脆く壊れやすい人間関係に絶望するのでは、あまりに寂しい。では、どのようにすれば保てるのか、作り上げられるのか、最後のシーンで希望を持たせてくれます。子供から青年へ、青年から大人へ、卒業の階段を上がるためには、何かを捨てて来なければならないのですが、それは寂しい、悲しい事じゃないのです。卒業するたびに新しい結びつきが始まるのですから。 |
「どちらかが彼女を殺した」東野圭吾です。愛知県警の交通巡査の兄が東京に出ていた妹の死体を発見します。自殺のように見えるが他殺の疑いを見付けた兄は証拠品を隠し警察には自殺で処理させようとします。自ら犯人を突き止め復讐するために。 証拠品は全て提示されます。他殺に見せかけた自殺とも見えたり、二人浮かび上がる容疑者ですが、どちらにも該当する証拠の数々。果たして真実は?。
・・・・と、まあ、なっているわけですが、さすがの展開で読まさせられます。経過を追う毎に次々に手がかりが出てくるのですが本当にどちらとも、誰とも取れる証拠で、どうなっていくのか目が離せませんね。所轄の刑事が兄の証拠隠しを感じているような行動をとりながら接触してくるのですが、このくだりは刑事コロンボを思わせるようなやりとりがあります。復讐を止める事が出来るのか、という所も読みどころになっています。さて、どのように幕が引かれるのか?。ここに全てがあります。ミステリの感想や書評で言ってはいけない部分なので書けませんが、こういう終わりは初めてじゃなかったかな。
所轄の刑事って、乱歩賞受賞後の第一作「卒業」に登場する大学生なんですね。刑事になったんだ。今、その「卒業」を読んでいるもので・・・・。 |
遅まきながら東野圭吾のデビュー作、第31回江戸川乱歩賞「放課後」です。ここ数年、これぞと言う本に出会えなくて新刊をポツポツ読みあさる程度でしたのでお気に入りの作家もなく過ごしてきましたが、桐野夏生、宮部みゆきなど読んでいるうちに、面白い本が沢山有る事に気づきました。そんなわけで、今になって読みあさっている中に東野圭吾もあったわけです。
高校教師が何者かに命を狙われているのではと感じる事件が連続で起きます。そんな時に放課後のクラブ活動の後、更衣室で同僚教師が殺害されます。ところが、それが密室殺人。警察の捜査が始まる中、体育祭の最中にまた殺人事件が。犯人は生徒なのか?、同僚教師なのか・・・・。さらなるどんでん返しが待ち受けています。
・・・・と、言うわけで導入部から目が離せない展開です。無駄なシーンをカットしたテンポの良い映画を見ているようなリズム感溢れるミステリーにページをめくる手が止められなくなります。殺人などとは無縁な女子校で何故?と、それだけでも謎ですよね。いろいろ仕掛けがばらまかれいて流れに乗せられそうになるものの、それじゃミステリーにならないぞと深読みをするものの、なかなか真相には行き着けません。しかし、最後の謎解きで、「やられた」と唸ってしまいます。ちゃんと伏線も張られてますから尚更ですね。こういうラストシーンが有るからこそミステリーファンは虜になるのです。すっかりはまった東野圭吾、これから読むのがますます楽しみです。 |
吉村達也の「ケータイ」。掛かってきた携帯電話から聞こえるのは、殺されてようとしている友達の声。そして、断末魔までの実況中継が始まった。連続女子中高生殺人事件は同じように7件も起きたのだ。一体、誰が何のために・・・・。もう、これだけで引き込まれてしまう本です。しかし、ホントにしかし、なんですが、「ふたご」と同じような展開で、ぼくとしては何とも残念でたまりません。生身の犯人が懐かしい、恋しい。・・・・と、言ってもつまらないわけじゃありません。さすがというか、携帯電話検証がしっかり書かれている事が後々までの支えになっていますのでミステリーな展開を保ってくれていました。「ふたご」と同じになりますが、面白くないわけないですね。 |
ゲノムの世界は勉強になりました。「ふたご」吉村達也はちょっと毛色の変わった本ですが面白かったですね。人気スターの男が金持ちの娘と一緒になろうと美人の妻をホームレスに殺させ、自分は口止めのためそのホームレスを殺します。アリバイもあり疑われることなく月日がたちますが、殺された妻の父から双子の妹が居る事を告げられます。しかし、ただの双子ではないと・・・・・。
パーフェクトツインズとは完全同一体。親ですら見分けがつかない完璧な双子。それをDNAから立証できるのか?。大胆な仮説まで出てきて人間のルーツまでさかのぼります。眠くなるような講義も、ミステリーだと不思議に頭に入りますね。勉強、勉強。(^_^)v 誰も居ないはずの殺人現場の家の2階の寝室の窓に映る女性の影は?。・・・・・ううっ、コワ。果たして犯行は暴かれるのか・・・・と、さいごの舞台へ。
人の耳は単純計算で音を22倍増幅して感知しているそうです。コレ、小説からの抽出ですが、22倍と言う事は、実際の音は22分の一。つまり私たちの廻りで発せられている音は以外と小さいようです。世界は思ったより静かなんですね。これらの事は現実と真実の違いを論議するときに出てくるのですが、初めて知ったので妙な感動を覚えました。見聞き、いや聞きだけですが、現実の音量じゃないとはね。以外と5感なんて当てにならなかったりして。そんな訳で、「ふたご」では本編のミステリーも楽しめる上にゲノムの世界もかいま見たり、人間とは?、神とはなどと考えさせられたり、盛りだくさんな本です。これだけ詰まっているのだから面白くないわけないですね。 |
「再生の朝」乃南アサ。高速道路を品川から荻まで夜行高速バスが走る。乗客のそれぞれの想いを乗せ走る。・・・・そして、殺人。殺人者に脅された運転手は高速道を降り山道を走る。そして激突。台風の中、闇に取り残された乗客たちは・・・・、と、いうわけでスリルとサスペンスで描かれる「再生の朝」です。まあ、殺人事件に謎は無いのですが、乗客の心理描写と台風の中の闇という状況がミステリチックなのでしょう。何か、芝居を見ている雰囲気が漂っています。確かに3幕くらいで(場合によっては1幕でも)仕上がりそうな舞台劇です。いかに登場人物に生命を与える事が大事なのだと再確認させてくれる小説とも言えますね。 |
乃南アサ「凍える牙」。深夜のファミリーレストランで人が炎上。捜査本部が設置され第三機動捜査隊女性刑事音道貴子が招集された。捜査中に人が獣に咬殺される事件が発生。炎上事件とのつながりが推測され、音道は所轄刑事と追い始めるのだ。過去に傷を持つ女性刑事と家庭に問題を抱えるベテラン所轄刑事のコンビは互いに反発をしながらも謎に迫る。暴かれていく謎の行く先にあるのは・・・・。
これまで短編小説でしかお目にかかれなかった乃南アサですが、いよいよ本格的に取り組もうかと選んだ最初の一冊目が「凍える牙」でした。想像したとおり期待は裏切られなかったものの、期待が大きすぎたせいか今ひとつ物足りなさも残りましたが十分に満足しています。謎が解明されて行く捜査過程と女性捜査官が過去を断ち切って一人前の刑事として育っていく過程が大きな柱になっています。それが交差し終盤に並びますが、それを象徴するのが深夜の高速道路を走る追われる獣と女性刑事のバイクでしょう。このシーンこそ乃南アサが一番書きたかった所じゃないだろうか。中央高速から首都高速、湾岸線そして幕張の海岸までのシーンは目の前の映像が広がるように書かれます。追いつめる公園の木立の中でバイクが転倒、立ち止まる獣、双方の見つめ合う眼が互いの中に見たものとは何だったのでしょうか。115回直木賞受賞作。 |
時代小説短編集「堪忍箱」宮部みゆき。言うまでもない宮部みゆき時代小説ですが、さえ渡っているといしか言いようがない。梅雨時のまとわりつくような小さい雨粒、冬の身も凍るような冷たい北風、とうとうと流れる川を行く船先の砕け散った白い波・・・・雨のにおいが、風び冷たさが、目に映る波しぶきがまるで体感しているように、鼻の中を冷気が通って行くような、キリッとした作品集です。
貧しい時代の貧しい長屋、そこに生きる人々にあるのは、たくましさや野心などではなく普通の、ごく普通の人々が持つ弱さや、ねたみや、悲しみ。そんな、普通の人の貧しい日常生活を描きながら、悲しみや苦労をさりげなく、ありのままに受け入れて生きていく事は決して弱さではないと問うているようです。。
物が溢れすぎて、当たり前に手に入る人々の欲望は際限なく広がり、感謝なんて言葉は死語に、哀れみや慈しみなんて忘却の彼方へ、人と接することの煩わしさから極力裂ける人間関係、相対的にか感じられない幸福、果たして我々は貧しい時代から脱却できたのか、何を勝ち得たのでしょうか。一杯のうどん、一つの握り飯、一枚の着物に喜びと感謝を持てる時代は輝いていた。 |
宮部みゆき「蒲生邸事件」です。続いていたら短編集でしたが、やはり長編は読ませますねぇ。しかし、久々の長編にもかかわらずのめり込むように読み切ってしまいました。タイムトラベルですからジャンルはSFになるのでしょうけど、そんな枠を越えた感動の一編に出会ってしまいました。
地方から大学受験に失敗し、今度は予備校受験の為ホテルへ泊まりに来た尾崎孝史は火災に遭遇します。煙に巻かれ、非常階段の扉も開かず逃げ道を失い危機一髪のところで一人の中年男に救われます。しかし、助け出された所は50年前の二.二六事件勃発時の東京、陸軍蒲生大将邸。タイムトリップをする中年男の正体は、蒲生邸で起きる殺人事件の真相は、元の世界に戻れるのか・・・・歴史の流れの中で尾崎孝史が得たものは・・・・。
・・・・・と、あらすじを書いてしまうとSF推理小説のようですが、そんな枠なんて越えてしまう文学的ですらある作品です。勿論、筋立ても面白いしタイムスリップした過去からどの様に戻れるのかという最大の問題だけでも引っ張られてしまうのですが、タイムスリップした先が歴史的事実である二.二六事件の真っ直中で殺人事件に出会ってしまうのですから、もう目が離せません。蒲生邸の住み込み女中の「ふき」との出会いは恋愛小説でもあり、ラストの現在での約束の再会は感動さえ覚えます。壮大な歴史ドラマを体感したような錯覚に陥るでしょう。そして、その中で歴史の流れの中で過去とは?未来とは?と大きなテーマが検証されます。タイムトラベルと言えば誰もが頭をよぎる「変えたい自分の過去」は果たして希望の未来へと続くのか。解答がちゃんと用意されています。読み終えたとき誰もが大きな希望を肌で感じる事でしょう。 第一級のミステリーだ! |
「踊る少女」吉村達也。ホラー短編などと紹介されているけど、怖さはホラー級だが話は日常的でさえある。その日常も日向に有るときには屈託のない表情をしているのだが、たまに影に入ったときに見え隠れするしぐさや日が落ちてやがて訪れるだろう闇の顔を垣間見たときに恐怖が私たちを包み込むのだ。(1)モナリザの微笑み(2)美和さん(3)隣の江畑氏(4)踊る少女(5)ぜったいナイショだよ(6)親戚(7)11037日目の夫婦、の全7篇の短編が収録されていますが、全ての作品が第1級のミステリーに仕上がっていて、改めて吉村達也を見直してしまいました。
日常に隠された狂気とは?。恋人が、妻が、夫が、愛娘が、隣人が見せる笑顔に隠された狂気の表情を誇張することなく描いた世界に恐怖を感じる事でしょう。是非ともお薦めの一品です。未読の方は是非お読み下さい。きっと「モナリザの微笑み」の見方が変わる事でしょう。 |
宮部みゆき「地下街の雨」。(1)地下街の雨(2)決して見えない(3)不文律(4)混線(5)勝ち逃げ(6)ムクロバラ(7)さよなら、キリハラさん 以上7篇が収録されています。
しかし、短編集を読み付けてしまうと離れがたいですね。ちょっとの時間で読めるのが一番ですが、一冊で何倍もの物語が読める事も魅力ですね。それがお気に入りの作家のだったら尚更。一人の作家のも面白いのですが競作もまた面白い。和食だけも良いけど、和洋折衷バイキングなんていうのも悪くないという感じでしょうか。
あまり短編集に肩入れすると長編がつらくなりそうです。「地下街の雨」、期待通りでした。 |
吉村達也、6篇収録の短編集「クリスタル殺人事件」です。長編と変わらない吉村達也の魅力が溢れている短編集です。何が良いって、やはり意外性でしょうね。短編集ですから言ってしまうと種明かしになりそうなので控えますが、ラストにも本編にも語り口にもそれぞれ違った趣向で意外性が盛り込まれています。例によって読みやすいものですから片手間のちょっと時間が有れば読み切れるのも良いところです。その上、十分ミステリーも堪能出来るのだから、もう言う事無しでしょう。 |
短編集の読みやすさと凝縮された濃厚な味に舌鼓を打っておりましたが、ここらで一つとグッと厚みのある長編を味わおうかと。(^_^)v と、言うわけで「レベル7」宮部みゆきなんです。さすが読み応え十分でした。勝手に想像していたレベル7の意味と違っていましたが、お味の方のレベルは最高値でした。
突然、見知らぬ部屋で目覚めた男女。スーツケースにギッシリ詰まった札束、弾の込められた拳銃、血が付いたタオル、新品の洋服や身の回り品、等々が有ったのですが、二人の記憶が無くなっていました。自分が誰か、名前すら思い出せない二人は記憶探しへ・・・・。その頃、一人の女子高校生が失踪します。残された言葉が「レベル7になると戻れない・・・・」。果たして、レベル7とは?記憶の行方は? 2家族皆殺しの殺人事件との関係は・・・・。もう、これだけ広げられたら目が離せませんよね。二転三転するラストまで突っ走るか仕方ないです。
やはり人物描写がしっかりしていると薄っぺらにならないのですね。そこへ持ってきて冒頭から二人が記憶喪失だなんて、思いも寄らない謎が出てくるのです。一人ならまだしも二人ともだなんて・・・・。これじゃ、目が離せない展開ですもの、例によって睡眠を減らし読了いてしまいました。二人を手助けする隣の部屋の住人。途中、偶然とはいえ随分ご都合主義な展開かと思いきや、それなりにちゃんと理由が。それも二転二転させられて納得の幕になったのです。最後のページを終えて、プロローグを読み返しましたが、同じ事をした読者も多いのではないかな。最近、物忘れがたまにあるのですが、これ記憶喪失と違うでしょうね。(^_^;) 読後感想のレベルが低いって?。ほっといて!。さて、未読の宮部作品があと10冊あります。楽しみ、楽しみ。(^_^)v |
期待を裏切らない面白さでした、宮部みゆき「本所深川ふしぎ草紙」。すっかり時代劇ファンになってしまいましたよ。さて本書は本所七不思議と言われるうわさ話に絡めておきる犯罪を岡っ引き回向院の茂七が解くわけですが、犯罪話と言うよりは人情話、茂七は物語の進行役みたいなものです。七不思議と言われているように7つの短編が収録されています。
「紅色江戸ごよみ」同様に、どれも素晴らしいので甲乙付けがたく一つ一つを取り上げる事は出来ませんし、粗筋さえも紹介しない方が良いように思います。まるで見てきたかのように江戸の町を宮部みゆきは書いていますが、読む側も違和感なくその情景が浮かび上がって来て、まさにタイムスリップしたかのようです。
現代では不思議は科学の力で解明され、科学で説明できないものは存在しないかのように思われるのが一般的ですね。しかし、江戸のその時代では科学が未発達だから不思議が存在して良いわけではないのですが、何故か不思議がそのころは存在しても当たり前、いや存在したのだという気分にさせられます。解明されたから無くなったのではなく、昔は有ったのに時代と共に消えてしまった・・・・そんな感じにさせられます。 |
「幻色江戸ごよみ」宮部みゆきの時代小説に魅せられましたよ、ホント。「幻色江戸ごよみ」には1.鬼子母火、2.紅の玉、3.春花秋橙、4.器量のぞみ、5.庄助の夜着、6.まひごのしるべ、7.だるま猫、8.小袖の手、9,首吊り御本尊、10.神無月、11.侘助の花、12.紙吹雪と12篇の短編小説が収録されています。どれもが長屋住まいのその日暮らしの江戸庶民を描いています。納得の解決編など有りませんが、それでもミステリーと言っても良いのではないかとぼくは思っています。
取り上げるのが迷う程なので個別な感想は書きませんが、一番先に頭をよぎったのは江戸庶民の日常をこれだけ描くには相当な下調べがあったのだろうな・・・・と。時代小説はそれほど読んではいないので新発見ばかりです。TVドラマや映画じゃこうは行かないですね。そんな庶民の日常から非日常への移る瞬間がミステリータッチで描かれています。短編ながらも、全ての作品において存在感のある人物描写と書き込まれた日常生活があるからこそ、物語に引き込まれるのです。庶民の哀歌は何を語っているのか、どの作品にも残される切ない余韻が妙にたまらなく後ろ髪を引かれるようなエンディングでした。
すっかり虜になったぼくは、もう既に「本所深川ふしぎ草紙」を手に散ってしまいました。 |
怒濤のごとく続く宮部ワールドだ。最初の長編小説「パーフェクト・ブルー」は現在につながるものが見え隠れしていますね。それは、構成であり、テーマであり、語り口であり、題名の付け方にさえあらわれているようです。これから読む予定の本にも登場する元警察家犬マサの目を通して展開されるストーリーはこれが原点。
倉庫街で人形が燃やされる。・・・・同じように同じ場所で甲子園の優勝候補のピッチャーの焼死体。高校野球の出場規定や今じゃお馴染み人名無視の製薬会社の巨悪がテーマ、次々に出てくる謎の数々に眼が離せない。今ひと足りないかなと思える人物描写も違和感なく、無心で謎を追いかけられます。行き着く先に救いはあるのか?。
・・・・と、言うわけで宮部ワールドのスタートにやっと立ちました。しかし、なんですね、スタート作品と断りが無ければ、書き下ろしなんて言われても、それほど驚かないのじゃないかな。さすがだな。・・・ミステリーファンなら殆どの人が自分にも書けそうと思うのがミステリーであります。どのくらいの人が目の前に原稿用紙を広げた事でしょうか。しかし、ミステリー、まさかミステリー、果たしてミステリー・・・・・と言うわけで物になるわけじゃ無いのが世の常。マラソンで言えば抜き出てトップグループに入るのも至難の業だけども、トップになるにはそれこそ至難。指南は山村正夫。山村正夫の養成塾で学んだとの事ですが、学んだだけで成し遂げられるものじゃないのだよな。 |
宮部みゆき「R・P・G」は初の書き下ろし文庫だそうです。「R・P・G」はご存じのようにロールプレーイングゲームの事ですが、まあ、なるほどと言うかあまりよくわかりませんがね。(^_^;) でも、本は面白かったですよ。
ネットワーク上で疑似家族を楽しんでいたハンドル「お父さん」が殺されます。現実では「お父さん」は浮気者でして特に若い娘がお気に入りのようで。その一人、若い愛人も殺害されました。さて、犯人は?。動機は?
疑似家族の母親、娘、弟が取り調べを受けますが、その様子をマジックミラーで隣の部屋から実の娘が見ています。果たして3人の内の誰が犯人なのか?・・・・・と、なるわけですが、取調室のネット家族側には模倣犯の武上刑事、実の娘側にはクロスファイアの石津ちか子刑事がそれぞれ配置されています。豪華メンバーですね。
ネットワークコミュニケーションのある一面をついています。ネット家族なんて思いつかなかったけれど、有っても不思議じゃないですね。出会いから恋愛、そして結婚までたどり着いてしまうケースも少なくないようですものね。BBSやチャットで展開されるコミュニケーションには現実社会では語れない本音も入っているけど、やはり嘘もある。虚像なのに実像に見え、実像に見えるけど虚像、そんな感じでしょうか。そんなネット社会を題材にしていますが、テーマは現実社会の事です。ネットで心が通じ合えるのに実社会で通じ合えないのは不幸な事です。
豪華メンバーによる「R・P・G」です。しかし、読み終えたときに、意外な結末に感動し、何故?武上、石津の両刑事を登場させたか分かる事になります。ある種、裁判劇でも見ているようでした。 |
「ステップファーザー・ステップ」宮部みゆき。短編集で表題を含めて7篇収録されています。7篇の短編集と言っても設定が同じ続き物と言った方が良いかも知れません。宮部みゆきは。この設定でいつか長編を書きたいと後書きで言っていますが、ホント実現して欲しいお話です。
ある嵐の夜、泥棒が屋根から落ちてきました。その家には双子の中学生が。気を失い倒れた泥棒を看病したのがその中学生。意識が戻りった泥棒は何故か親が居ない事に気づきます。問いただすと、父親は愛人と、母親も愛人と駆け落ちをしたそうな。父親、母親とも同時に駆け落ちしたものだから、双方、それぞれが子供の面倒を見ていると思いこんでいるそうなのだ。ところが実際は双子の中学生ふたりで生活をしているわけなんです。その泥棒、気に入られて二人から「お父さん」と呼ばれ、3人の不思議な関係が始まり、いろいろな事件に遭遇するわけです。まず設定が面白いのと3人のユーモア溢れる会話が楽しいです。遭遇するミステリアスな事件を解決するたびに3人の絆は深くなりますが、いつでも付きまとうのが実の親子ではない現実、そんな心の流れが一層哀愁を誘いいつの間にか引き込まれてしまうのでした。
3人の他に泥棒の「元締め」、偽札作りの老人「画聖」など脇役もまた楽しい。ドラマや映画にしても受けるのじゃないかと思ったりも。ホントに楽しい短編集でした。表題のステップファーザー・は「継父」と訳すようです。 |
吉村達也の短編集「ダイヤモンド殺人事件」です。「お楽しみはこれまでだ」、「時計台は語る」、「君の瞳に恋してる」、「鼻」、「大井松田−御殿場 渋滞20キロの逆転」、「如月透の犯罪」の6篇が収録されています。長編作品で本格物系の作品ばかり読んでいましたが、初めて読んだ短編で本格物というより、まさしくミステリーな作品に出会え、ますます吉村作品の虜になりそうです。
一番好きなのは「鼻」でした。こういうオチが来るとは予想もつかなかったです。まっ、どれも予想を反するストーリーでしたが「鼻」はまた格別。やりきれなさと共に人間性のある一面を突かれたようでギックとしました。「お楽しみはこれまでだ」のオチも良いです。宮部みゆきの短編集でも感じた事ですが、短編だからこそ凝縮されたストーリー展開と意外性が求められのでしょうが、見事に応えてくれています。長編にない味わいに大満足の一冊でした。 |
続々と続く吉村達也。しかし、読みやすいですね。いろいろな探偵が登場する吉村ミステリーですが、今回は家庭教師、軽井沢純子シリーズの「算数・国語・理科・殺人」です。
サイパンのホテルのプールで家庭教師の死体は、常夏のリゾート地にもかかわらず冬物の三つ揃いのスーツ姿でナイフを首に指したまま発見されます。発見者は春休みで訪れていた、資産家の娘と息子とその家庭教師軽井沢純子。そして帰国後に待ち受けていたのは等々力渓谷で高さ10mの木の上で首を吊っている家庭教師の死体。「金曜日に家庭教師は殺される」の脅迫文の意味するところは?
相変わらずの軽妙な語り口、流れるような文章でテンポ良く読めてしまう吉村ミステリーは、カッパえびせんのCMじゃないけれど「やめられない、とまらない」だ。でも、分類するならばやはり本格派の部類なのでしょうね。おどろおどろした怪奇性はないけれど、ミステリアスで伏線もはられています。解けそうで解けない謎にミステリーファンはガックリ来るでしょう。そうそう、しいて言うなら赤川ミステリーに似た味があるようです。 |
吉村達也「観音信仰殺人事件」です。シンプル・イズ・ベスト。振り返れば、あまり謎が交差しない吉村ミステリー。しかし、謎はミステリアスで最後まで引っ張ってくれます。良いんじゃないですか。(^_^)v
ポルノ系出版社からアイドル女優のヌード写真集が出版される・・・・という企画が事前に漏れて中止となる。しかし、同じ出版社から女優が自ら撮影した写真集が出版されることになった。撮影旅行の日光で女優の妹がボウガンから発射されたと思える矢で眼を射抜かれて死亡する。犯人は?。事前に撮影された東照宮境内陽明門の写真が謎を解くカギに・・・・。
と、言うわけで謎を解くカギの陽明門の写真ですが、なんと!本に添付されています。これほどカギが示された本は無いのじゃないかしらん。観音片開きで本に挟まれた写真は小説の中でも同じように写真集に付いている。読者の前に提示された写真の謎を解く事が出来るのか?。よっしゃ!やったるぜ!とルーペ片手に写真を隅から隅まで調べましたよ。・・・・で、結果ですが謎の問題点は見付けたものの、それが何を意味するのかさっぱりわからん、お手上げ状態でした。解決編で、なるほど!と納得。これじゃ、探偵にはなれませんがな。しかし、斬新なミステリーですね。「文通」でも筆跡の違う4人の手紙も実物を添付していました。その内、箱入り小説で中には本と証拠品など入っていたりして。(^_^)v |
宮部みゆきと同じく連続で来る気配の、吉村達也「文通」です。吉村達也を読んだ事が有る方はおわかりでしょうが、文章が固まることなく行数が非常に多いのが特徴です。とてもテンポ良く読めて良いと思いますが、その分、ページ数は多くとも実質的な文字数が少ないので長編と言っても4、5時間有れば読み終わる事が出来ます。暇な休日なら2冊くらいは楽勝です。
さて、「文通」は女子高校生が何気なく投稿した文通雑誌の読者から4通の手紙が来た事から物語は始まります。4通の内3通の手紙の内容がどうも異常に見え恐怖を感じ始めます。一番信頼出来た1通の大学生と文通を始めますが・・・・・・。全てが同一人物からのものと分かってきます。誰が、何のために・・・・。と、言うわけでこの設定だけで引きずり込まれちゃいますよね。ミステリーの大事な要素は「?」を何処まで引っ張って行かれるか、「?」をどれだけ増やしていけるか、そうして、いかに合理的(ぼくは垣根を低くしていますが)に解決するかですね。強弱の違いはあれど吉村達也の作品にはいつもこれがあると思っています。
文通なんて今じゃホントに死語になってしまいました。まあ、インターネットも持ち出すまでもなくコミュニケーションの手段は格段と増えましたものね。でも、姿の見えない相手との交際はメールだってあり得るわけで事件すら起こっています。とても優れたコミュニケーションの手段なのに一部の者のために信頼性が薄れてしまうのは惜しいことです。ネットワークを生かすも殺すも全て参加している者の責任ですね。 |
さて宮部みゆき作品の長編小説にアタックです。「龍は眠る」は1992年の第45回日本推理作家協会賞の長編部門の受賞作なのですね。心に秘めたる龍は眠らすべきなのか、起こすべきなのか、SFチックな話をリアルに描き宮部みゆきの世界はミステリアスに広がります。
雑誌記者「高坂」は台風の夜の国道で一人の少年と出会います。少年は自らを超能力者と言い、二人が遭遇したマンホール事故の真相を語ります。この事件をきっかけに接近する二人ですが、もう一人の超能力者の出現、高坂への脅迫状、そして誘拐事件と次々と起こる出来事の中で、超能力の存在を認めるや否かで距離を置くようになります。しかし、超能力者故の苦しみや悲しみが語られて行くなか厚い信頼が生まれて来るのでした。
スーパーヒーローになれるやも知れぬ超能力とは、身につけた者を滅ぼしかねない両刃の剣でした。また持ったからといって、人々を幸福にする事が出来る手段にもなり得ないのが分かってきます。人の心が読みとれるって辛い事なのですね。家族、友人、恋人・・・・本心をさらけ出してこそ結ばれるいべき関係と思いがちですが、本当に本心をさらけ出しているのかと問われれば、肯定出来ないのでしょうね。決して本心と表に出るものとは本音と建前のような関係じゃないと思います。優しさや慈しみや愛情の表れではないだろうか。それも、本心ではないだろうか。文中、超能力に対して「現実と非現実、合理と非合理は、それとよく似た形で共存している。永遠に交わる事のない二本のレールだ。我々はその両方に車輪を乗せて走っている」と言っています。心の中と表に表すもの、同じように2本のレールで私たちはその両方に足をかけているのではないでしょうか。
人の持たない能力を持った者、人が持って当たり前の物を持てなかった者、そしてただの人。その全ての人の心の中で龍は眠っているのです。 |
宮部みゆきの短編集「人質カノン」です。表題を含め、10年計画、過去のない手帳、八月の雪、過ぎたこと、生者の特権、溺れる心、の合計7作が収められています。どれもが日常的に遭遇しそうな事件ですが、悲しみや、憎しみや、哀れみ、怒りや、喜びをテーマにミステリアスに語られています。しかし、繰り返しになりますが短編集って良いですね。長編を読んでいる最中でもナイトキャップにはもってこいです。(^_^)v
ところで下にも書いた読書熱ですが、読み込んでいる事には間違いないのです。しかし、読んだ後の読後放談、コレですね。これは、必ずしも読み終えた日付と一致していない場合があります。今日も「人質カノン」と「龍は眠る」の2編が同日付けで書かれていますが、「人質カノン」は前から1編づつ読んできたもので、「龍は眠る」と同時に読んだわけではありません。今も既に別な作品を読んでいる最中でもあります。但し、読み終えた時と読後放談を書いている時とでは1週間と離れているわけではありません。精々外れても2、3日でしょう。
また、読後放談は昨年の8月22日から書き始めたもので、基本的に読んだ後に書いていますので8月22日以前の作品の読後放談はありません。従来から書評のようなものには否定的な見方をしていましたが、HP開設以後、読書歴を振り返り既読の軌跡がないのに少々不満もあり、また愛してやまない蔵書に対しても何かしてあげたい気持ち、そしてメモ代わりにもと簡単な感想を書こうと始めました。以前の作品は振り返ることなく現在の時点でと読んだ直後の気持ちをありのまま書いています。 |
何だろう、最近の読書熱は?(^_^;) こういう後には一挙にダウンしてしまうのだろうな。さてと、またまた続きまして(当分、続きそうですが)吉村達也「六麓荘の殺人」です。
大富豪の芦屋の六麓荘にある通称「西のお屋敷」と東京は田園調布の「東のお屋敷」で同時刻と起きたと思われる殺人事件が発生します。被害者は富豪の二人の一卵性双生児の美人姉妹。田園調布ではベットで全裸の頭の毛を剃られた絞殺死体で、芦屋では血まみれのベットに剃った後の頭髪のみで死体は無し。しかし、血液型、頭髪のDNA鑑定でそれぞれ被害者の物で、その上芦屋の血の量は失血死してもおかしくない程のおびただしい量。・・・・もう、いきなりこれですから、引っ張られてしまいますよね。サイコセラピーの氷室想介が謎に挑みます。完全な本格派だ!
いやあ〜、面白いですね。何故、今まで吉村達也に出会わなかったのだろうか。ホント、遅すぎます。まっ、これはいずれ埋め合わせていきますが。妙に構えて無くて、テンポ良く語られていく本格派推理小説の小気味よさは格別なものがあります。ユーモア溢れるしゃれた会話も適度に散らされていますが、しっかりした謎が提示されているので目をそらされる事はありません。トリックや殺害方法に細かい指摘などせずに、そのまま楽しんだら良いのではないでしょうか。これから吉村達也の作品が大幅に増えると思いますが、他にどんなタッチで書かれているのか読むのが楽しみです。ミステリーは幅が広いぞ。 |
吉村達也の「会社を休みましょう殺人事件」です。・・・・いろいろ考えさせられる本です。会社とは?家庭とは?夫婦とは?・・・・と、会社で起きた殺人事件をきっかけに様々な問題が浮き彫りになってきます。
東大卒のサラリーマン森川は学生結婚をしていて子供はいません。入社7年目にして営業部係長に昇進します。会社での上司との固執、妻との溝が、真面目に会社人間に徹して来た森川の心に重くのし掛かり出社拒否が芽生えてきます。そこへ上司の部長が会社で殺されます。犯人と社内で噂され自分で犯人を捜し当てますが、妻との仲は決定的なところまで進んでしまいます。そんな時、学生時代の友人に出会い小説を書こうと決心します。その小説とは?。森川が心から望んでいたことは何でしょうか?。胸の詰まるラストシーンへ。
思い当たる事ばかりで身につまされるのではないでしょうか。何故に会社人間になってしまったのか?。何故に妻との間に溝が出来てしまったのか?。森川と妻との会話の中から解答がおぼろげながら浮かんできます。心に素直に生きる事の難しさとともに困難でも素直に生きて行かなければならないと心に留めらずにはいられません。簡単な事なのですがね。私たちが日常的に当たり前のように使っている言葉や態度、行動が実は虚勢や自己愛や見栄や弁解の裏返しであったりするのではと鋭く説かれます。故に自分自身で自分を、家族を、最愛の理解者で有るべき妻でさえも縛ってしまうのです。小説内小説である「会社を休みましょう」にはそれから逃れて真に心に素直に生きて行こうとする主人公の心を描いて行きます。果たして救われるのか、救われるのは誰なのか、ページを閉じてからも想い巡らす事でしょう。 |
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