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クライマーズ・ハイ・・・・・・・横山秀夫 隣  人・・・・・・・・・・・・・・・・重松 清 虹の家のアリス・・・・・・・・・・・加納朋子
日曜日の夕刊・・・・・・・・・・重松 清 コンタクト・ゾーン・・・・・・・篠田 節子 葉桜の季節に君を想うということ 歌野
晩  鐘 (上・下)・・・・・・乃南アサ ビタミンF・・・・・・・・・・・・・・・・ 重松清 流星ワゴン・・・・・・・・・・・・・・・・重松清
真相・・・・・・・・・・・・・・・・・横山秀夫 ZOO・・・・・・・・・・・・・・・・・・・乙一 五郎治殿御始末・・・・・・・・浅田次郎
ブレイブ・ストーリー・・・・・宮部みゆき 天使の耳・・・・・・・・・・・・・・東野圭吾 重力ピエロ・・・・・・・・・・・・伊坂幸太郎
リアルワールド・・・・・・・・・・桐野夏生 邪 魔・・・・・・・・・・・・・・・・奥田英朗 GOTH(ゴス)・・・・・・・・・・・・・・・乙一
手紙・・・・・・・・・・・・・・・・・ 東野圭吾 深追い・・・・・・・・・・・・・・・・横山秀夫 口笛吹いて・・・・・・・・・・・・・・・・重松清
ローズガーデン・・・・・・・・・・桐野夏生 石の目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・乙一 隣人・・・・・・・・・・・・・・・ 永井するみ
天帝妖狐・・・・・・・・・・・・・・・・・・乙一 ドリームバスター・・・・・・・宮部みゆき 嘘をもうひとつだけ・・・・・・・・東野圭吾
第三の時効・・・・・・・・・・・横山秀夫 殺人鬼の放課後・・・・・・・・・・・・乙一 夏と花火と私の死体・・・・・・・・・・乙一

 虹の家のアリス  加納 朋子 TOP HOME
 読書時間が減って来た昨今です。加納朋子「虹の家のアリス」は6篇からなる連作小説なので寝る前に読むのにちょうど良いと読み始めましたが、涼しくなったせいでもないでしょうけど眠りに就きやすくなったというか、かれこれ1ヶ月も掛かってしまいました。勿論、一押し二押しの加納朋子でありますからつまらないわけはない。面白いのに眠るなんて・・・・(^_^;)、まあ、例のごとく謀略やら殺人なんて縁のないミステリーですから普通に云うところの緊迫感や恐怖感は無いので、そんなのんびりムードがついつい眠りを・・・・なんでしょう。(^_^;) リストラ対策での早期退社でサラリーマン生活におさらばした探偵と自己発掘の意欲に駆られたお金持ちのお嬢様コンビが日常に潜むミステリアスな事件を行動力を持ってして解決していきます。語り口も品が有って良いですねぇ。恐い夢なぞ絶対に見ませんからナイトキャップにいかがでしょうか?
 隣  人  重松 清 10/9 TOP HOME
 重松清「隣人」です。実際に起こった事件を実際に犯行現場等に出向いて、重松清の眼で新しい角度から見直してみたノンフィクションです。和歌山のカレー事件、音羽の幼稚園児殺人事件など良く知られている12件の事件を検証しています。

 一番最初の事件が東急ハンズ前の通り魔殺人事件なのですが、偶然にも読み始めた翌日にこの事件の2審の判決が出ました。1審の死刑判決を支持し、被告控訴を棄却するというものです。争点は例のごとくというか犯行時の心神喪失問題です。裁判所は責任能力ありと判断しました。8名に殺傷、内2名が死亡した事件です。偶然にも判決と同じくして読み始めたものですから、4年前の事件ながら最近の事のように真実味も深まりました。
 被告の生い立ちを検証して行くにつれ、記憶も少しですが蘇り、確かに同情すべき痛ましい過去を背負っているのです。ですが、それらを酌量しても余りある卑劣な犯行に間違いないわけで、妥当すぎるくらい妥当な判決と云えましょう。全ての事件に共通しているわけじゃないのですが、怒りや恨みや妬みや様々な心の要因の向けている所がどうも違うような気がします。毎日のように起こる殺人事件(言い過ぎじゃないくらい多い)で恨みなど、復讐のような動機で起こしたものは、あまり聞かないような。勿論、それを肯定するわけじゃないのですが、殺人を犯すにはそれ相当の怒りが必要だと思うわけです。殺人という境界線を越える原動力となると生半可なものじゃ越せないきがするのです。ところが、実際は金(それも決して高額とは限らない)や、性的な動機、ストレスのはけ口やら、まるで遊びのようにそれ自体を楽しむため・・・、などなど、境界線を越えるには乏しいのではと思うような動機で事件が起きています。これって、どういう事なのでしょうね?。

 ・・・と、云うような事を考えさせてくれる本書です。他の重松作品と同様に回答はありません。しかし、これだけ数多くの事件が現実にはあるわけで、そこからいずれ加害者になりうる人も傍観者もそして被害者になるかも知れない人も何かを学ばなければいけない筈です。道を歩くだけでけばこの国の人々のモラルの低さに唖然とさせられ光景を沢山眼にするはずです。こんな間近に簡単に境界線を越えてしまう原点があるのです。
 クライマーズ・ハイ  横山 秀夫 9/26 TOP HOME
 横山秀夫「クライマーズ・ハイ」です。題名のクライマーズ・ハイとは気持ちが高揚し興奮状態が極限まで達して恐怖感さえ麻痺してしまう事だそうです。題名からして意味深長じゃないですか。舞台は群馬県の地方新聞社、登場人物は新聞社に勤務する人々、その家族、時代は過去、現在、そして未来、テーマは・・・テーマは・・・うむぅぅ、テーマは重いです、うんと重いです。

 かって部下を事故死(自殺説もあり)させてしまった主人公は同期の者が役職につきながら未だヒラに社会部記者。同僚と曰く付きの山に登る日の前日、日航ジャンボ機が御巣鷹山へ乗客520余名の乗客と共に墜落する。帰り支度をしていた主人公は全権デスクを命ぜられ墜落事故の指揮を始めるのだが、、その頃山へ一緒に行く筈の同僚が脳溢血で倒れる。「下るために登る」と云った同僚との関係、主人公の暗い過去、噛み合わない家族関係を下地に新聞社内の派閥争い、部署同士の争い、上司との軋轢、部下との関係、特ダネ争い、などがぞくぞくするような緊迫感の中でリアリティに描かれています。

 どんな仕事でも、または社内に置いて必ずしも筋が通る訳じゃありません。それは、家族、家庭のために振り上げた拳を下げ、理不尽な事であろうとも自分の中で折り合いを付けて辛抱するわけです。だからって何か得られるかとは限らない。全てに封印し落ち込む気持に鞭うって立ち上がり全てを忘れてまた歩くわけです。死を賭して登り切った頂上に立った時、待っているのは独り占めできる景色だけじゃないのです。嬉しいラストをありがとうございます。こうじゃなくちゃ。
 葉桜の季節に君を想うということ  歌野 晶午 9/24 TOP HOME
 「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午です。いきなりセックス場面から始まる本書はハードボイルドの香りを漂わせています。電車に飛び込む女を助けると、後には恋愛話に。知人からある金持ちの事故死の真相を探って欲しいという依頼を受けると、そこには催眠商法やら保険金殺人は浮かび上がったり。何となく頼りない上、思慮も足りない、ただむやみに突き進んでいくだけのミニクーパーに乗っている定職もない主人公が、願望なのかハードボイルドばりの格好良さを無理して追求しているようで、何となく歯車が噛み合わない流れが気に掛かるのですが、こりゃ飛んでもない伏線でした。種明かしをしたら本書は読む価値のないものになってしまいますので、多くを語れないので残念ですが後半にたたみ掛けるように、どんでん返しが押し寄せてきて息を付く間もなく最後には大津波が押し寄せてきます。ボクなど何度となく前を読み返してしまいました。事件とかは驚くに当たらないモノですが、まさに時代先取り、これからミステリーの幅は大きく広がる事でしょう。今こうして読み終えてみると、この長ったらしい時代ががった題名の持つ意味の深さに驚かされます。この手の本の評価は大きく別れる筈で、全てのでミステリーファンを満足させるものでは有りませんが、「本」ならではのトリックには落胆はしないと思います。ボクはこういうの好きですね!
 コンタクト・ゾーン  篠田 節子 9/18 TOP HOME
 篠田節子「コンタクト・ゾーン」はハードなサバイバル・ウォーズだ。独身女性3人は同胞のガイドもうんざりするような典型的な日本人女性旅行者だ。旅慣れた3人は政情不安な国こそ観光客も敬遠して優雅に遊べるのだとたかをくくって、旅行社が止めるのも聞かずにリゾート地へ向かう。案の定、高級リゾート地は閑散として大名気分で遊び呆ける。ガイドノの制止を振り切ってダウンタウンまで足を伸ばすのだが反政府ゲリラと政府軍との抗争に巻き込まれる。宿泊地へやっと戻るが既にゲリラに踏み込まれ宿泊客から従業員まで惨殺されていた。何とか舟を確保して島を脱出するが、やっとの思いで着いたところは同じ島の反対側。ゲリラの手が伸びていない島の農村に匿われながら脱出の機会を待つのだった。

 高慢で手前勝手な3人の女性は匿われた農村でその発展途上の国情や混在している宗教問題などを目の当たりに見る事になる。幾つにも別れている反政府ゲリラは同士討ちを繰り返しながら政府転覆を謀るのだが、それらが本当に人民の為なのか本質的な部分にも触れながら生き延びていくサバイバルは女性達の心へ大きな変化をもたらしていく。・・・・リゾート地の裏に隠された貧困な経済状態の中の島民の生活が描き出され、善と悪のような簡単な図式で表わせない途上国の抱える問題が浮き彫りにされる。主人公の3人の女性はわが国の国民の投影であり、行動はその意識の質を語っているのだ。克明に丹念に描き出された脱出までの生活はリアリティを持って迫ってくる。それはまさに迫力なのだ!
 日曜日の夕刊  重松 清 9/16 TOP HOME
 止まらない重松清です。「日曜日の夕刊」は(1)チマ男とガサ子(2)カーネーション(3)桜桃忌の恋人(4)サマーキャンプへようこそ(5)セプテンバー’81(6)寂しさ霜降り(7)さかあがりの神様(8)すし食いねェ(9)サンタにお願い(10)後藤を待ちながら(11)柑橘系パパ(12)卒業ホームラン、の以上12篇が収録されています。もう、今更何も云う事はありませんね。大人も子供も年寄りも幼児も男も女も、生きるって本当に大変です。辛い事ばかり。どの様にして困難に向き合っていけば良いのか、明快な回答を求めて人は右往左往、ホントに大変です。いつものように回答なんてありませんが、いつものように道しるべらしきものが見え隠れしています。そして、いつものように痛みを和らげて、いつものようにもう一度歩き出す勇気を与えてくれます。特効薬じゃないけれど常備薬にして下さい。
 流星ワゴン  重松 清 9/11 TOP HOME
 重松清「流星ワゴン」。さて、お目当ての「流星ワゴン」、読み始めたら止まらない。寝る前に数ページ読んでベットに入ってからまた読み始めたら・・・寝てしまった。(^_^;) トイレに起きてチラッとページをめくったら、止まらなくなって、とうとう読み切ってしまいました。AM3:00。(^_^)v  うむぅう、確かこの感じは東野圭吾の「秘密」を読み終えた時にもあったような。やられましたよ、負けました、脱帽です、もうすっかり虜です。

 一人っ子の中学1年生は中学受験に失敗し地元の公立中学へ行くが、受験勉強で疎遠になったかっての友達からイジメに遭う。その為、不登校になり家庭内暴力とエスカレートしていた。妻は家を空けるようになり、深夜の帰宅、朝帰りと家庭を顧みず言葉すら交わす事が少なくなってきたところへ離婚を申し出す。そんなおり、リストラにあった上に危篤状態で反目し合っていた父親を見舞った帰りに駅のベンチで「もう、疲れた。死んでも良い」と思い込み始めた夫の前に1台のワゴン車が止まる。助手席には小学生の男の子、運転席にはその父親らしき人物が。ドアが開き引き寄せられるように乗り込むと車は動き出した・・・。

 ワゴン車はその家庭の崩壊の発端とも云うべき過去の時間へ夫を連れて行く。後悔しなくてはならなくなった、その時へ。そこで反目し合っていた自分と同じ歳の父親と会い、2人3脚の過去への旅は始まった。・・・過去へ遡って崩壊を招くべき兆しの地点へ連れ戻されるものの、未来を替える事は出来ないと云う制約の中で、どうしたら家庭崩壊を防ぐ事が出来るのか、後悔の念をどの様に昇華させられるのか、夫は苦しみながら立ち向かいます。それと反目し合っている親子関係とワゴン車の親子の話が並行して語られます。
 どうしてもハッピーエンドを期待してしまいますから、過去をどの様にいじれば良いのか注目してしまいます。徐々に受験勉強中の息子の知らざる胸中や行動の一端がわかり、妻の隠された行動が暴かれ、救いようのない事実に直面する事になります。その時、どんな行動をしていれば現状を招かないで済むのか読者が一番知りたいところには答が見えませんでした。期待しても変えられない現実の壁は厚すぎました。

 例のごとく最後に光明のかけらが提示されます。受け入られるかはその人次第。現状、現実に不満や後悔の有る方、取り戻せないと思って居る方、過去に入ってその出発点を変えても現実は変わりませんよ。そうじゃなく、今をありのまま受け入れて、そこからもう一度出発する勇気こそが新たな未来を作る事が出来る小さなかけらなんです。そのかけらを手にするのは私たち次第です。
 ビタミンF  重松 清 9/10 TOP HOME
 第124回直木賞受賞作「ビタミンF」です。これから読み始める「流星ワゴン」を買う時についつい欲しくなりまとめて重松作品を4冊買った内の1冊です。「ナイフ」で大ファンになりながら、その後ご無沙汰してしまったのですが、いま重松作品を読みたい気分なのでまとめ買いしました。「ビタミンF」には(1)ゲンコツ(2)はずれくじ(3)パンドラ(4)セッちゃん(5)なぎさホテルにて(6)かさぶたまぶた(7)母帰る、以上7篇が収録されています。それぞれ、Family、Father、Friend、Fight、Fortune・・・と「F」で始まる言葉をテーマにして書かれています。

 どれをとっても心に染みる1篇です。テーマに沿った出来事が起きて、それぞれの登場人物が一生懸命に何とかしようとするのですが、明快な解決は明示されずに終わります。しかし、トンネルの先に見える出口のように、またはど忘れして思い出せない言葉が喉の直ぐそばまで来ていて思い出すまでもう後1歩のような、はたまた芝居の開幕のブザーを聞くような・・・・解決の糸口が何であるのか漠然としながらでも見えそうで期待に胸がふくらむ、そんな余韻を残しつつ妙に晴れ晴れとした気分にさせられます。思わず立ち向かっている主人公達に応援の拍手を送る自分に気づくはずです。いつ表と裏に変わってしまっても当たり前のような危うい道を歩いている私たちです、今裏なのか表なのかもわからない時でさえ有ったりします。でも、どんな時でもそれをひっくり返すのは自分でしか出来ないわけだ。ホッと、ホロッと、そして心はホットにさせてくれます。
 晩  鐘 (上・下)  乃南 アサ 9/5 TOP HOME
 晩鐘(上下)、乃南アサです。暑い。蒸し暑い。夏は読書に向いていないようです。ナイトキャップの短編集でさえまだ終わっていない。しかし、頑張ってド〜ンと分厚い上下2巻を読んでしまいました。宮部みゆきの「模倣犯」を越えたとか、どうとか、書評か本の紹介文か何かで見たような気がするのですが、ちょっと違うような・・・。

 長崎。両親の記憶のない小学校5年生の大輔と2年生の絵里は祖父母に育てられている。同じ敷地内には叔父一家も住んでいる。大輔は叔父の中学一年生の長男歩と同級生の女の子と男と女の関係にあった。歩に意地悪をされ続けてきた大輔はある日、関係を持っている女の子を使って歩に罠を仕掛けようとする。その結果、歩は殺される。何故に両親の記憶がないのか?全てが見えた時に待っているものは・・・。
 と、まあ、小学校5年生の性交なんて、何があっても驚く事がない現実の世界を見聞きしているぼくらから見ても衝撃的な話です。祖父母の前では優等生を演じている子供が何故に狡猾な犯罪者なのか?。環境が、または血がそうさせるのか?。暗澹たる世界の扉が開くのだ。

 本の帯やその他紹介文で云われるような、犯罪被害者と加害者双方の家族のその後の物語とでもなるのでしょうが、どうも犯罪が無くとも、そんな環境に置かれればあり得るのかなと・・・と云った気がしますが。双方に及ぼしたトラウマを克明に追っているようで、その出発点の犯罪の動機、経過もよくわからない上、犯罪自体に何かありそうな含みが持たされて、何となく納得するのだが不完全燃焼という気がする。それに被害者側の娘にしても加害者側の兄妹にしても犯罪以後の家族の対応如何でそこまではならなかったと云う事が見え隠れしているものだから尚更。もっと直接的な因果関係がないとわかりにくい気がしました。この手のテーマは最近多いですよね。まあ、「模倣犯」から始まって東野圭吾の「手紙」と濃淡は有るにせよ、これらの作品の方がわかりやすいと云えばわかりやすい。本の宣伝で(帯にもあるけど)犯罪加害者、被害者、または容疑者が家族から出た事で狂わされた家族の人生をどう癒すのか救うのかみたいな事が全面に出ているようだけど、ホントにそれなの?って感じでした。別な視点で紹介した方が良いように思うけどな。

 ここで犯罪の後遺症のように起こされ事件では、むしろ日常的にぼくらが理性や世間体や法律や、いろいろな枷で押さえられて邪悪な欲望など無いようたように取り繕ってはいるけど、何処か1つ外れればやってしまわないとも限らない無意識の奥底に眠っている凶悪性を見せられたような気がします。その隠された凶悪性こそが犯罪を生んでいるのであり、その犯罪に関わった(警察関係者からマスコミをも含めて)全ての人と我々傍観者の隠されたその凶悪性が今度はその犯罪の加害者や被害者へ向けられて救いようのない傷を広げて行くのではないだろうか。
 「ミステリーは全て出尽くした。最後に残っている最大のミステリーは最後にそれを読んでいる読者こそが犯人と云うミステリーだ」・・・・有る意味でこの最大のミステリーに1歩近づいている本ともいえる。
 五郎治殿御始末  浅田 次郎 7/18 TOP HOME
 浅田次郎「五郎治殿御始末」です。明治維新を迎えた江戸、武士社会の崩壊は侍たちを翻弄するのでした。(1)椿寺まで(2)箱館証文(3)西を向く侍(4)遠い砲音(5)柘榴坂の仇討(6)五郎治殿御始末、以上6篇が収録されています。しかし、なんです、見てきたように書けるっていうのは凄いですよね。宮部みゆきの時代小説も大好きだけど、この浅田次郎の時代は明治維新の短編集も凄いです。時代考証で云えば衣食住や道路など調べればそれなりに分かるのでしょうけど、考え方や生き方などなど心の部分ってどの様に検証するのでしょうね。話言葉など文献などから分かるのでしょうか? どの作品も維新を前に武士社会が崩壊して価値観の変わり様に翻弄される侍の生き様が生き生きと描かれています。ここから無国籍国家、日本がスタートしたのです。古いイコール悪、そんな図式が幅を利かせ出して、無宗教国家日本を支えていた道徳が崩れ始め文化が否定され始めようとしています。まさに国家再生、新日本国の誕生だ。さて、その結果いまがあるわけですが、階級制は無くなりましたか?差別はなくなりましたか?平等ですか?自由ですか? 政治家に役人、企業に社員、教授に学生、教師に生徒、親に子供、まあ、よくもまあ何処から何処までやりたい放題、言いたい放題、垂れ流しの国になったものです。いずれ憂国の士が再び立ち上がり維新が成し遂げられん事を節に願うしか無いのだろうか。
 ZOO  乙 一 7/14 TOP HOME
 乙一「ZOO]。(1)カザリとヨーコ(2)血液を探せ!(3)陽だまりの詩(4)SO−far そ・ふぁー(5)冷たい森の白い家(6)Closet(7)神の言葉(8)ZOO(9)SEVEN ROOMS(10)落ちる飛行機の中で、以上10篇の短編が収録されています。全ての作品に乙一の魅了が溢れています。

 殺人事件の現場に鑑識課が出動して指紋採取から血液反応などなど子細に調べ分析した結果犯人につながるものは何も出なかった。・・・と、書いて説明しようと、犯罪が行われた事だけしか書かれていなくても、通常現実に行われるであろう警察の調べは済んだ事として読み流していくのがつまるところミステリーお約束ですね。そのようなミステリーのお約束がお互い(作者と読者)に出来上がっている事を前提にしているのが乙一作品の特色の1つかも知れません。ですから無駄(実際は無駄なわけじゃないですが)なお約束事に触れることなく(読者の目もそらさずに済みますし)ストーリーを追求して行けるのです。もう少し詳しく言えば死体の死後経過はその置かれた場所、状態、季節、などなどで変化するモノで死後経過のストーリーならば少なくとその辺に触れないとリアリティに欠けてしまうと思われがちですが、犯罪解明に必要ならともかく関係ないならば触れずともそれらはクリアしているものとお約束してストーリーを進めると云う事です。ミステリーを書く上で法律、法医学や司法制度など知識が必要みたいですが、お約束からとんでもなく外れなければ細かい事は無しでも通じるのです。ただ、それには必要無しと云わせるストーリーが無くてはなりませんけど。勿論、そんなストーリーが満載です。
 真 相  横山 秀夫 7/9 TOP HOME
 横山秀夫「真相」です。(1)真相(2)18番ホール(3)不眠(4)花輪の海(5)他人の家、以上5篇が収録されています。厳密とは言い難いけど、事件終焉のその後が共通になるのでしょうか。まあ、事件は終わっていないぞと云う方が当たってると思うのですが。言うまでもなく完璧な一編一編でして、勿体ないので十分楽しんで読みました。今回は警察物語じゃなく犯人側のお話ですが熟考された構成って感じで落とし所もそれぞれ違っているので楽しめます。一編を読み終えるたびに一息つく感じで意識しない余韻が深そうです。例のごとくお薦め。
 重力ピエロ  伊坂 幸太郎 7/6 TOP HOME
 伊坂幸太郎「重力ピエロ」。弟は母親がレイプされて出来てしまった子だった。父親は生む決意をした。そして、母親が亡くなり今父親は癌で入院中である。そんな時、弟がボク(語り手)に街で起きている放火事件と塀の落書きの関係について奇妙な話を持ってきた。謎を追究していくと・・・。

 と、まあ、こんなお話であります。兄と弟の関係、どのように二人が現在まで付き合ってきたか、が二人の軽妙な蘊蓄有る会話で浮き彫りにされ、またそれがふたりの存在感を深めています。ストーリーは何となく先が読めてしまう程、謎はあるもののシンプルだと思います。母親のレイプ事件以外に(それを含めても)衝撃的な描写など無いので底に流れているテーマも見えにくく派手な展開も無いので見逃しそうになるのですが、実は重いテーマを抱えています。実はその辺を身に感じないと感動も得られないので、たぶん評価の別れる本じゃないかと思います。

 1997年神戸酒鬼薔薇事件は今思えば新世紀犯罪の幕開けを暗示する事件だったのかもしれません。今朝の新聞では中学生が数十人にリンチされ埋められた死体が発見されたとのこと。アレからどんな小説も上回る悲惨な事件がどれほど有ったでしょうか。松本サリン事件の教訓から被害者の人権が守られてきたでしょうか?。犯した罪に見合う罰が加害者に与えられたでしょうか?。少年法は改正されたのでしょうか?
 犯罪は増加し検挙率は低下し善良な市民の安全は脅かされ殺伐とした暗澹たる世界は益々広がってきて、犯罪を抑止する為の手段などとられる事もなく際限なく起きる事件の前でボクらはただ立ちすくむだけなのです。
 天使の耳  東野 圭吾 7/1 TOP HOME
 東野圭吾「天使の耳」は交通事故をテーマにした連作短編集です。(1)天使の耳(2)分離帯(3)危険な若葉(4)通りゃんせ(5)捨てないで(6)鏡の中で以上6篇が収録されています。思わずニヤリとしてしまうどんでん返しもあったりして気楽に楽しめる短編集です。
 ブレイブ・ストーリー(上・下)  宮部 みゆき 6/23 TOP HOME
 宮部みゆき「ブレイブ・ストーリー(上・下)」は本の厚さにまず圧倒されてしまいますが、見た目より長編ではないので怖じ気づかないように。でも、中身は大長編ドラマですのぞ。小学5年生の三谷ワタルはファミコン大好きで塾通いもする普通の少年です。近所の建設中止のビルに幽霊が出るという噂が広まり友達と探検し不思議な現象に出会う。そんな折り、両親の離婚問題が持ち下がり心を痛めるのだった。どうしてもやり直せない所まで来てしまった母親はガス自殺を図ろうとするが、その時ワタルの前に新世界が開く。その世界で女神に会えば運命を変えられると知ったワタルは旅に出るのだ。果たして運命は変えられるのか!・・・と、まあ簡単に云えばこうなりますが、どうしてなかなか。ルビがふってあるところを見ると読者層はかなり下まで見越されているようですが、大人の哲学が芯に据えてあって読み応え十分、子供にわかるかなぁ?。

 主人公が旅をする世界はまさにロールプレイングゲームそのもの。お約束通りの展開なれど結構にハマります。そう言えば宮部みゆきはこの手のゲームが好きなんでしたね。想像力の乏しいボクとしてはネバーエンディングストーリーとかドラゴンクエストとか見聞きしてきたイメージで旅の世界が見えてきてしまいましたが、この辺は読者の想像力次第と云いましょうか、経験の大きさで楽しめる度合いが違うかも知れませんね。
 苦しみがあるから楽しみがある、涙があるから笑いがある、憎しみがあるから愛がある、不幸があるから幸福が・・・となるからこそ困難ばかりの人生だけど立ち向かって生きなくてはと。そうなんですけど、不幸のタネはそこら中に転がっているくせに幸せの花を探すのは苦労します。この辺の考え方って千差万別、価値観次第でどうにでも変わってしまう危うい脆い世界です。そこは宮部みゆき、十分に登場人物に存在感を命を与えて見事に説得力を持った仕上がりで希望をぼくらに与えてくれます。勇気と希望はいつになっても旅の重要なアイテム、気持も新たにボクですら明日から頑張ろうって気になります。困難であれば困難である程、クリアする喜びが大きいのはRBGだって現世だって幻界だって同じですね。ほんの一瞬ですけど・・・。
 GOTH(ゴス)  乙 一 6/20 TOP HOME
 「GOTH(ゴス)」乙一です。6篇からなる連作ミステリー。文句なしに良いです!!。感動ものだな。・・・・猟奇事件が二人の男女高校生の廻りで起き、何らかの関わりを持ってしまいます。事件そのものは一般的に云うところの犯人逮捕でチャンチャンチャンというわけには行きませんが、二人にとって、または加害者、被害者にとって完結します。この有る意味、法律を無視した解決法がショックを受けると同時にこのストーリーの特殊性を表しているとも云えます。存在感たっぷりの二人の高校生も実は問題を抱えている、ともすれば犯人と紙一重のこの二人こそが一番のミステリーとも云えたりします。しかし、ホントに文句なしに良いです!!
 邪 魔  奥田 英朗 6/17 TOP HOME
 奥田英朗「邪魔」。久しぶりに読み応えのある本意当たりました。横山秀夫の警察小説を彷彿させるような警察内部の事情なども織り込まれリアルな世界が広がっています。身重の妻を交通事故でなくした刑事は今でも妻の母親、義母の元を訪れてはその身を気遣い墓参りを欠かしません。そんな刑事が同じ署内の刑事の素行調査を命じられ張り込み中にオヤジ狩りをしている不良少年を遭遇します。この変哲もないプロローグですが、ここまでさえリアルな世界に仕立て上げ存在感のある登場人物を作り上げているのです。ですから、読み始めからいつの間にか引き込まれ気が付いた時は手遅れ。こりゃ、すごいぞ。放火事件をメインに幾重にも交差される人間模様は現実感あふれる社会の表も裏も暴き出して、その人生の絡み合う複雑さコントロールの効かなくなった凧のようにひとり行くあてのない大空を舞うだけなのです。
 さらなるどんでん返しの後に残るのは台風一過の青空でもなければ、暗澹たる終局でもない。そこには、まだまだ終わってないぞ、いや終わらせないぞと闇夜で目を光らせ牙をむいて今にも襲いかかろうとしている現実社会が息を潜めて待ちかまえているのでした。お薦めの一冊だ!
 リアルワールド  桐野 夏生 6/05 TOP HOME
  ・・・・・・多忙のため休載。  ・・・・・だけど一言。作者を伏せて読んだら桐野夏生とはわからないでしょう。へえ、こんな作品もかくんだ。(^_^)v 面白かったです!! お薦め!!
 口笛吹いて  重松 清 5/16 TOP HOME
 
 ・・・・・・多忙のため休載
 深追い  横山秀夫 5/13 TOP HOME
 
 ・・・・・・多忙のため休載
 手紙  東野 圭吾 4/27 TOP HOME
 
 ・・・・・・多忙のため休載
 隣人   永井 するみ 4/20 TOP HOME
 
 ・・・・・・多忙のため休載
 石の目  乙 一 3/20 TOP HOME
 乙一の「石の目」です。表題作を含め(1)石の目(2)はじめ(3)BLUE(4)平面犬の4篇が収録されています。17歳でデビューした乙一、19歳から21歳までの作品です。入山した人が消息をたってしまうと云う山はその目を見たら石にされてしまう「石の目」が棲んでいると噂される山です。幼い頃に入山して消息を絶った母親の痕跡を探すため同僚教師と山に登った主人公が遭遇した者とは・・・。鬼婆が出てきそうなコワイ山のお話「石の目」を始めホラーと云うのでしょうか、摩訶不思議でコワイお話が収録されているのが本書です。まあ、何が凄いかコワイかは、どうしても目が行ってしまう作者の歳ですけどね。(^_^;) やはり、歳を考えると凄いものだと思わざる終えないです。漠然とストーリーの一つくらいは誰でも考えられるでしょうけど、原稿用紙に書き込むとなれば話は違いますものね。本書の帯に「この1冊であなたは乙一にハマる!!」とありますが、もう既にハマっているボクとしては、ただ頷くばかりです。
 ローズガーデン  桐野 夏生 3/20 TOP HOME
 桐野夏生「ローズガーデン」。(1)ローズガーデン(2)漂う魂(3)独りにしないで(4)愛のトンネル、以上4篇が収録されています。「ローズガーデン」は書き下ろし、他は小説現代に掲載されたものです。ハードボイルド女性探偵村野ミロが新宿を彷徨していた痕跡のような短編集です。
 第39回江戸川乱歩賞「顔に降りかかる雨」で初登場した村野ミロは最新「ダーク」まで実にハードでヘビーな生き方をしているわけですが、父親の跡を継いで探偵家業に身を置くはめになったきっかけは夫の自殺でした。その夫の自殺前の様子、ミロの少女時代からのエピソードから結婚に至るまでをフラッシュバックで描かれた書き下ろしの「ローズガーデン」はミロを知る上で重要な1篇になっています。何と重い一篇なのでしょうか。
 その他3篇は持ち込まれた事件ですが、これがまた良いです。描き分けられた登場人物の存在感は、さすが桐野夏生でしょう。人間の性は哀しくも惨めであり、表には出さずに隠されて封印されている筈ですが、その全てをさらけ出し、さらけ出すからこそ生きている実感が得られるような、とんでもない塊を飲み込んでいる新宿という街を村野ミロが袖口のすり切れた黒いジャケットを羽織って闊歩するわけだから、それだけでもハードながら故に持ち込まれる事件もヘビーなわけで面白くないわけないのです。中国マフィア、SMクラブ、ホモにレス、暴力団に風俗店・・・・訪れる方も迎える方も気取っちゃやってられませんがな。紳士の裏に隠された吝嗇な助平心、淑女の裏に隠された淫乱な金銭欲はネオンサインの下で蠢きながら一夜で多量に排泄され元の顔に戻って朝を迎えてそれぞれ帰路に就く。村野ミロは「ダーク」に向かってそんな街で生きていくしかないのでしょうか?。探偵家業に辛うじて生きる道を見出したミロ、益々ファンになってしまったのだ。
 嘘をもうひとつだけ  東野 圭吾 3/18 TOP HOME
 東野圭吾「嘘をもうひとつだけ」。(1)嘘をもうひとつだけ(2)冷たい灼熱(3)第二の希望(4)狂った計算(5)友の助言、以上5篇が収録されている短編集です。「卒業」以後も大活躍の加賀恭一郎が犯罪の小さなほころびから推理力をご披露する短編集はご安心の一冊とでも云いましょうか・・・・。と、まあ褒めているようで貶しているような言い回しですが、結構に捻ってあってダブルオチなどもあり十分楽しんでいただけます。迫力や緊迫感などには欠けますが謎、伏線、推理、とミステリーの常道を逃していませんね。
 いつも思う事ですが、短編ですから謎解きを主体にすると、どうしても登場人物の存在感までは描ききれない辺りに物足りなさが残ります。犯す犯罪に見合う人物像の台詞はどんな言い回しか、どんな行動を取るのか、何ページも費やせずに描き納得させて欲しいし、推理クイズに無理して肉付けしたような本格物には閉口させられる事が多いです。短編は長編を短くしたわけじゃないと思うのです。
 ドリームバスター  宮部 みゆき 3/16 TOP HOME
 「ドリームバスター」宮部みゆき。ロールプレイングゲームにもシューティングゲームにもなりそうな冒険活劇。時空の軸が狂ったとかで有る星から地球に凶悪犯の「意識」だけが逃亡してきた。・・・・なぜ意識だけか?詳しくは読んでいただきたいのですが、その「意識」は人間の夢の中が隠れ場所。その「意識」を捕らえに来た賞金稼ぎのドリームバスター、シュンとマエストロが大活躍するお話です。違う星からか、地球の未来からかは証されませんがどこが含みがありそうです。
 さて、宮部みゆきですからただの冒険活劇ではおさまりません。凶悪犯の「意識」は人間が無意識に持っている弱さとか悔恨だとか恐怖だとか・・・忘れてしまった、隠してしまった、封印された部屋に逃げ込むのです。悪夢の中から宿主にされた人間はドリームバスターと共に秘められた過去を思い起こし向き合う事になります。「意識」と対決すると云う事は取りも直さず封印を解き自分と対決すると云う事でもあります。まさに人間を描いているわけで、過去を取り戻す作業はミステリーでもあるのです。
 今月にいよいよ第2弾、続編の「ドリームバスター」が発刊されますね。(だから読んだみたいな所もあるのですが。(^_^;) ) 
 天帝妖狐  乙 一 3/10 TOP HOME
 「天帝妖狐」乙一。表題作他、「A MASKED BALL」が収録されています。どちらかと云うと「A MASKED BALL」の方が好きです。学校のトイレの落書きから始まるサイコな人間の犯罪が次第にエスカレートして殺人まで示唆するようになります。トイレの壁があたかもネットの掲示板のように使われる発想が面白くもあり不気味でもあり、その着眼点に驚かされますね。デビュー後間もない作品なのでしょうか。無理が来ない程度の作品環境の設定が活かされているようです。体験や取材など、執筆にあたり欠かせない要素に限界があるなら、無理することなく自分のテリトリーの中で作り上げる方が間違いありませんね。
 夏と花火と私の死体  乙 一  3/9 TOP HOME
 乙一、17歳のデビュー作「夏と花火と私の死体」です。いやはや、なるほど、これが17歳とはね。やはり驚きでしょう。ホラーの定義がわからないのですが、これはしっかりしたミステリーです。兄と妹に妹の友達は仲良し三人組で妹とその友達もお兄ちゃんが大好き、いつものように遊んでしてある事をきっかけに妹はその友達を殺害してしまいます。折しも近県で子供の誘拐事件が相次いで起こっている事から誘拐事件に見せかけようと兄妹は死体を隠す事にします。果たして上手く隠し通せるのか、発見されるのか・・・異様な設定で何処か重苦しい中、あっけらかんと死体を運び移動させる兄妹にハラハラさせられ、いつの間にか物語に引き込まれてしまう。しかし、それだけで終わらないのだ。そうか、そんなラストがあったのか・・・と、また驚かされるのである。表題作の他に「優子」一篇が収録されています。さてと、まだまだ攻めるぞ、乙一。ええーと、次は・・・。
 殺人鬼の放課後  乙一 恩田陸 他2名 3/8 TOP HOME
 乙一、恩田陸 小林泰三 新津きよみの4氏によるミステリー・ホラー・アンソロジー。(1)水晶の夜、翡翠の朝、恩田陸(2)攫われて、小林泰三(3)還ってきた少女、新津きよみ(4)SEVEN ROMMS、、乙一 の4篇が収録されています。殺人鬼の放課後と題するように主人公は少年少女で恐ろしい体験をする事になるのです。実は、乙一が読みたくて求めた一冊でしたが以外にも読み応えのあるアンソロジーで得した気分です。全く、甲乙付けがたい作品です。・・・こうやって、見過ごしてしまう作品ってどれほどの数になるのでしょうね。

 さて、目的の乙一氏ですが、なるほど驚くべき才能なんですね。今、デビュー作の「夏と花火と私の死体」を読み始めた所ですが17歳でのデビューですからねぇ・・・(^_^;)。それを今まで知らなかったボクもボクですが。収録の「SEVEN ROMMS」がボクにとって初めての作品になるわけですが、スピルーバーグが「激突」で運転手の顔を見せない暴走トラックに終われる恐怖を描きましたが、その「激突」を連想しました。家具も何もないから説明しようがない無味乾燥な部屋が舞台で(これが映画なら相当制作費が安くて済みそうなシチュエーションですが)むしろ、そんなシンプルさが恐怖に結びついていたりしています。個人的に救いようのないラストって好きになれないので云う訳じゃないのですが、ラストの光明の身当て来る兆しはストーリーを引き締めていると思います。他の作品を読むのが楽しみです。
 第三の時効  横山 秀夫 3/4 TOP HOME
 横山秀夫「第三の時効」です。2001年から2002年までに「小説すばる」に掲載された以下の短編6篇が収録されています。(1)沈黙のアリバイ(2)第三の時効(3)囚人のジレンマ(4)密室の抜け穴(5)パルソナの微笑(6)モノクロームの反転。お馴染みのF県警が舞台。F県警捜査第一課 田畑一課長を筆頭に、強行犯捜査一係通称1班 朽木班長 2班 楠見班長 3班 村瀬班長ら3人の強烈な個性的な班長たちが繰り広げるハードでヘビーな警察物語は哀しいミステリーでもあります。表題の「第三の時効」に限らず他の収録作品も短編で収めてしまうのが勿体ないような密度の濃いストーリーは有る意味、感動的。今更云うまでもなくリアルに描かれた警察内部を舞台に行われる現実的な事件解決の過程は現実感にあふれ驚く程ミステリアスでサスペンスに満ちています。現実的でありながら謎を解く過程はまさにミステリー、推理小説の基本から外れることなく伏線を踏まえて落とされます。

 表題作「第三の時効」は殺人事件の時効1週間後に迫った日から始まります。夫を殺害した犯人は妻の元同級生。殺害後、逃亡したのだが一度だけ妻に連絡を取ってきた事があった。その事実を重視した警察は容疑者が事件後台湾へ1週間渡航した事を突き止め、海外出国期間は時効期間から差し引かれる事で実際の時効成立は1週間延長になることを容疑者が知らなかった場合に備えて待機するのだった。時効成立となったが連絡の電話も入らず連絡がない事から容疑者も時効が1週間延長になっていることを知っていたと認識し、盗聴に張り込みも延長する事になった。・・・・しかし、第二の時効成立が刻々と迫っているのに何の連絡も入らないのだ。この間々何も連絡がないのか・・・・。時効は成立してしまうのか?警察に打つ手は無いのか?・・・・と、まあ簡単にあらすじをご紹介しましたが、何故容疑者が連絡をしてくる可能性があると思えるのかとかなどはご自分で読んで見て下さい。

 どの作品が表題作になっても良いくらい作品のレベルは高いです。1係の班長たち、そして部下たちはそれぞれが様々で複雑な過去を引きずって獲物を狙うハンターのように時には動物的に、暴力的に容疑者を追う、「正義のために」と云ってしまえば、あまりに薄っぺらい。怨念や怒りが蠢いている哀しい冥府魔道の世界なのだ。
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