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殺意の爪・・・・・・・・・・・・小池真理子 同級生・・・・・・・・・・・・・・・・東野圭吾 初ものがたり・・・・・・・・・・・・宮部みゆき
焦茶色のパステル・・・・・・岡嶋二人 とり残されて・・・・・・・・・・・宮部みゆき レイクサイド・・・・・・・・・・・・・東野圭吾
死者はまどろむ・・・・・・・小池真理子 発火点・・・・・・・・・・・・・・・・真保裕一 ト キ オ・・・・・・・・・・・・・・・・東野圭吾
変 身・・・・・・・・・・・・・・・・東野圭吾 眠れぬ夜の殺人・・・・・・・・岡嶋二人 ある閉ざされた雪の山荘で・東野圭吾
「Y」の悲劇・・・・・・・・・・有栖川有栖 99%の誘拐・・・・・・・・・・・岡嶋二人 仮面山荘殺人事件・・・・・・東野圭吾
死んでも忘れない・・・・・・・乃南アサ キスより優しい殺人・・・・小池真理子 天狗風・・・・・・・・・・・・・・・宮部みゆき
記録された殺人・・・・・・・・岡嶋二人 闇の楽園・・・・・・・・・・・・・・戸梶圭太 犯人のいない殺人の夜・・・ 東野圭吾
水の中のふたつの月・・・・・・乃南アサ 球形の季節・・・・・・・・・・・恩田  陸 花咲村の惨劇・・・・・・・・・・・吉村達也
探偵倶楽部・・・・・・・・・・・ 東野圭吾 宿命・・・・・・・・・・・・・・・・・・東野圭吾 蠍のいる森・・・・・・・・・・・・小池真理子
心とろかすような・・・・・・ 宮部みゆき 光源・・・・・・・・・・・・・・・・・・桐野夏生 とってもカルディア・・・・・・・・岡嶋二人

 初ものがたり  宮部 みゆき 9/6 TOP HOME
 本所深川、岡っ引きの回向院の茂七が難解な事件を解く「初ものがたり」宮部みゆきだぁ〜な。短編が6篇収録されているってわけよ。連作になっているので全作を横断する逸話や謎の屋台の主人なんてぇのもで出てくる事には出てくるが、個別に読んでも構いやしねぇようになっとります。しかし、なんだな、みゆき姐さんの小話はいつもながらうめぇ仕掛けになっておりやすね。殺人事件あり、人情話有りで、科学捜査なんぞありゃしない時代ですから、子分の糸吉や権三の足と茂七親分の知恵だけが頼りなんです。そこがまたシンプルでいいやね。四半時が30分で六つ半が午後6時なんてぇのも分かったり、うまい料理の作り方なんぞや町の情景などなどいろいろ覚えられるてぇのも、おいらのような者にとっちゃ有り難いはなしだ。おいらが驚くのはみゆき姐さんがまるで見てきたように書くもんだから、浄心寺裏の読売屋の書きて手じゃねぇかと思ったりもしたけど、浅草寺のほうの長屋に住んで、いっときは「よろず相談所」へ奉公もした事があるとかで、そこで見聞きした事が良い勉強になったとかで、独りで書いているって噂じゃねぇか。てぇしたもんだ。あとがきでみゆき姐さんが「いつか必ず再会を」と言ったとか言わないとか、糸吉が風呂屋の二階で話していたのを聞いておりやしたので、そのうち続編が出るんじゃないかと期待しておりやす。いやまあ、ほんとに、てぇした面白い本だぜ。
  同級生  東野 圭吾 9/6 TOP HOME
 「同級生」東野圭吾。いやぁ、学園物は良いですね。大人の世界と変わらないと言われて、やはり登場人物の若さと世間の煤に汚れていないのと、何よりまだ未来がある。オーバーに言えば躍動しているのだ。・・・・そんな素晴らしい世界ではあるのですが残念ながら事件が起きてしまった。
 身籠もっていた宮前由紀子がトラックにはねられた。西原壮一が父親だ。目撃者の話から生活指導の先生が近くに居た事がわかる。事故の真相を探る西原壮一と野球部の仲間。そんな時にその教師の他殺死体が西原の教室で発見される。入り組んだ人間関係を解き明かして行くその先に待っているものは・・・・・。

 しかし、学園物って良いですねっ。もうかれこれウン十年前の話ですが蘇ってくるような。忘れていた心を取り戻せそうな錯覚に陥ります。所詮、無理な話ですね。そうそう、大人から見れば子供なのですが、一端の大人の気分で闊歩していましたっけ。勿論、足りないところだらけの歳ですが、それなりに皆な真剣に考え生きていました。そんな、軽薄と真剣、遊びと本気、嘘と真実・・・・・様々な相反するものが不規則に交差してとらえ所のない先の見通せない霧の中を彷徨うような青春の一幕に起きた事件は、尊い命と引き替えに大人への一歩を踏み出す避けられなかった出来事だったのですね。本当の友情を、本当の愛を見つけて欲しいですね。
 殺意の爪   小池 真理子 9/5 TOP HOME
 サウペンスたっぷりの小池真理子「殺意の爪」。洋書専門店に勤める木部比呂子は既婚の医者と逢うためのマンションの部屋で階上の部屋の殺人事件に遭遇する。犯人は逮捕されるが、現場の階下の部屋にいた比呂子は犯人は逮捕された男ではない可能性を知っている。しかし、不倫がばれる事を恐れ口を噤んでいるのであった。そんな折り、犯人の無罪を信じる異母兄弟と出会い、体験の事実を公表する事に決心するが、何者かに命を狙われる事に・・・・。管理人の怪しげな息子、何処にでも現れるクリーニング屋、逮捕されている犯人の異母兄弟、不倫相手の医者、・・・・全てを知り得る容疑者たち。意外な犯人とは?。

 赤いマニキュアに執着する異常犯罪者は誰か?。話の進行に従い登場する人物の行動に不審を感じさせ怪しさが広がる。その危険な怪しさの中、真犯人探しが始まるのだが、まさにサスペンスですね。冤罪で捕らえられている男の裁判中、真実の糸口を知る比呂子が狙われるのですが、これが最大の伏線となってラストで唸らさられます。ミステリーファンならずとも冤罪事件のカギを握っているなら、こりゃ真犯人は放ってはおかない筈と、ストーリーさえ読めてしまう意外性のない本に見えますが、そうは問屋がおろさないところにミソがあります。犯人は意外なヤツという定番定義が頭を埋め尽くしている読者だからこそ、取り巻く登場人物の一挙一動に忍び寄る恐怖を感じてしまうのです。そして、それこそ作者の意図する事なんですね。裏の裏って感じでしょうか。迎えるラストで何と合理的な解答を見る事になりますが、その意外性にまた驚く事でしょう。さすがです。
 レイクサイド   東野 圭吾 9/2 TOP HOME
 「レイクサイド」東野圭吾です。少子化が進んで受験も段々楽になってくるのではと思うのですが、実情はどうなのでしょうか?。中学受験もそれほど珍しい事でもなくなり、塾通いも善し悪しは別として当たり前の現象になっているようです。
 そんな受験が当たり前の昨今ですが、湖畔の別荘に塾を通じて知り合った4家族合同で塾の講師を招いて受験合宿を行うなんて非現実的に見えるけど、逆に現在なら有りそうな話でもあります。4家族の中に裕福な医師の家庭があり、そこの別荘に親が滞在し子供たちは塾講師と共に近くの貸別荘に籠もります。食事の世話など雑用は父兄が行います。4家族の内の一人の父親が仕事で遅れて別荘に着くところから話は始まります。その父親の家族は再婚で子供は妻の連れ子。到着して間もなく父親の会社の女性が父親が忘れた書類を届けに来ますが、実は彼女は父親の愛人、そして彼女はその夜に妻に殺害されます。何故か、みんなでその事実を隠そうと画策し湖に死体沈めるのでした。奇妙な4家族の連帯感や不審な妻の行動。湖畔の殺人事件の真相は・・・・・?。

 木を見ず森を見よ・・・・そう、推理の壁にぶつかったら改めて事実を見直して何が真実か見極めないとね。でも、そんな事は解答が示されてからこそ言えるのですし、また言っても遅いわけで進行中は騙されっぱなしでいるわけです。でも、騙されているからこそラストを迎えるのが楽しみなのです。いくら海千山千のミステリーファンだって簡単に解けたりしない、いや解けないように作られているのがミステリーとも言えます。(解けたらミステリーじゃないよね(^_^;) ) それで良いのです。それでなくてはならないのだ。
 とり残されて   宮部 みゆき 8/31 TOP HOME
 宮部みゆき「とり残されて」。全7篇収録の中、短編小説集。超常現象を扱った作品集です。収録作品は(1)とり残さされて(2)おたすけぶち(3)私の死んだ後に(4)居合わせた男(5)囁く(6)いつも二人で(7)たった一人、以上です。

 何を書いても絶賛される宮部みゆき、今更ボクが書く事もないし、各作品も短編だから感想を述べるとストーリーに触れそうなのでヤメにします。で、今回は少しだけ。文章力の重要さは改めて言うまでもなく、これなくして何の小説や、となりますね。現在では宮部みゆき、解散になってしまった岡嶋二人をぼくは上位にあげます。ボクの独断ですが少しムラが見える東野圭吾、桐野夏生と続きます。最高峰は松本清張ですね。文章力のある方は当然のように構成力にも優れていますから、下世話な言い方になるけど”読んで損しない”作品ばかりです。ミステリーで言えばプロットやトリック、登場人物の設定など基本的なパーツの意外な趣向のものは数多く生み出されて来ていますが、果たしてそれを十分に活かせている本になっているかと言えば、そうでもないのはご承知の通りです。それを活かす文章力が見合っていないからですね。恐れずに言うなら新本格派と標榜されるものに目が付きます。
 登場人物の設定を「30代の男性で気の弱いところもあるが、カッとなると暴力を振るう。身なりには気を遣う方だが金銭感覚はしっかりしていて無駄遣いはしない。・・・・・」と、文章で説明されておしまい、ところが言動や行動が説明とチグハグ。そんな本って見かけませんか。「良いぞ!」とされる本は総じてこんな人物説明はしないです。行動や言動でさり気なく性格説明をし存在感を与えている事に気づくと思います。舞台設定、登場人物、トリック、殺害場面、謎解き場面、ラスト、等々全て同じ部品を使って、いろいろな作家に書き上げていただき見比べられたら面白いでしょうね。
 焦茶色のパステル   岡嶋 二人 8/30 TOP HOME
 第28回江戸川乱歩賞受賞作品「焦茶色のパステル」岡嶋二人です。惜しくも前々年受賞を逃した「あした天気にしておくれ」の無念の敵討ちじゃないのでしょうが、同じ競馬を題材にしての受賞。「あした天気にしておくれ」を読んで、何故コレが受賞を逃したのか疑問に思っていましたが(選考されなかった理由は他の著書の後書きなどでもふれられています)題材を同じくしての挑戦に先の悔しさが伝わって来るようです。

 競馬評論家を肩書きとする夫を牧場で銃殺された妻と競馬誌に勤める友達のOLの二人が夫殺しの謎に挑戦します。上手く構成されていて競馬の知識が無くともちゃんと理解できるようになっています。さすが!。謎は別の殺害事件との関係から深まり汚職事件の相を呈してきたり二転三転しながらアッと驚くどんでん返しのラストまで読者を引きつけずにはおられないテンポのいい運びで楽しませてくれました。

 ミステリーで難しいのは事件の動機ではないでしょうか。なかなか納得させられるものに仕上げるのはトリックを考えるのと同じくらい大変な作業でしょう。怨恨だってそんなに簡単に人を殺せるののじゃないのが現実ですからそれに見合うくらいの憎しみの原因を作ったり、長々と心理描写を書き連ねたり、金銭なら莫大な金額にしなければ成らなかったりと、苦労の割には「こんあ事で殺すかな〜」と違和感を覚える作品も少なくないですね。本格派を標榜する作品で一番気に掛かるところも動機でしょう。これが納得できないとどんな素晴らしいトリックも屁のカッパっていうわけです。社会性云々よりもこの辺をきっちり押さえて欲しいです。

 さて、その動機に関してもパーフェクトで攻めてくるのが岡嶋二人ですね。馬の血統くらいで二人も三人も殺せるかいなと思っていたけど、ちゃんと隠された動機がありました。ああ、疑って申し訳ありませんでした。たっぷり楽しませていただきました。競馬誌のOLm芙美子ちゃんに惚れちゃうな〜
 ト キ オ  東野 圭吾  8/29 TOP HOME
 「トキオ」東野圭吾です。「秘密」以来の感動、また素晴らしい本に出会いました。不治の病で病床につく17歳の息子の前で夫婦は涙します。・・・・危篤状態になった時に夫は妻に話しておきたい事があると申し出ます。そして、20数年前に自分は息子と出会ったと語り始めるのでした。

 夫は高校に入学する時に養子である事を知ります。以来、自分は実の親に捨てられた人間だと自堕落な生活にのめり込んで行くのでした。卒業後、養父母の元を去り自活を始めますが定職に就かず転職を繰り返している23歳の時に、自分の息子だと名乗る若者が突然現れ一緒に過ごすようになるのです。恋人に去られ、また事件に巻き込まれながら自分の過去を見つめ直すように息子に仕掛けられ親子の旅は始まるのでした。旅の先に待っているものは・・・・。感動のラストまで息もつかせずに展開する東野ストーリーだ。

 何とも偶然というか・・・・、先に読んだ真保裕一の「発火点」では父親が殺されたトラウマから抜け出せなかった若者が大人に成長する過程を描いていましたが、「トキオ」では生み捨てられた主人公が時を越えて来た息子の助けられながら、自分の過去を見つめ直し大人に変わって行くという、そっくりな展開でした。「トキオ」では細かな心理描写などはありませんが登場人物のさり気ない会話や行動から心の中までしっかり語ってくれています。恋人が突然消えてしまうミステリアスな事件を軸に話は展開しているのですが、そこには過去を見つめ直す作業や恋愛の機微とか青年から大人になるスパイスがたっぷり振り込まれています。

 最近、また新聞紙上を幼児虐待の記事が目に付くようになりました。幼い子供に虐待をする人間の精神構造はどんなのだろう?と誰もが疑問に思う事ですね。人間のなせる技じゃないと憤りを覚えるでしょう。多くの要因があるのでしょうが、一つ言えるのは子供を育てる資格のある大人に成りきっていないのではないでしょうか。資格といっても子供を持つ事に大層なものが必要な訳じゃないのですが、ひとつ大事な資格は無償の愛を与えられるかですね。愛に限らず、もらう事が当たり前、もらわなければ損、出来るだけ沢山欲しい・・・・と、もらう事が権利であり、それが愛情と錯覚しているのではないだろうか。恋愛も愛されるよう努力する事が美しいと誤解されていないだろうか。与えられる事に慣れてしまい、与えられる事しか知らないのは悲しい事なのだ。
 発火点  真保 裕一 8/28 TOP HOME
 真保裕一「発火点」です。主人公は12歳。伊豆のある町。父親の同級生の自殺を発見。一命を取り留めたその友人を主人公の家で退院後、面倒を見る事になったが、数日後、その友人は父親を刺殺してしまう。
 ・・・そんな過去を持った主人公は現在21歳。過去のトラウマから抜け出せずに高校を卒業後定職に就かずフリーターで過ごしている。転々と職を変えるなか遊園地のアルバイトで同じフリーターの女性と知り合、交際を深めていくが、過去を引きずり、それに甘え、幼い主人公は荒れた生活が続いていたそんな時、父親の殺害犯が仮釈放で出獄してくると知らされる。その日から父親殺害の真相を探り始める事になるのだった。・・・・

 父親の刺殺事件にどうもすっきりしない印象を与えながら、そのトラウマに向き合って闘うことなく、逆にそれが故に許されると思いこんでいる主人公の甘えた意識を書き連ねながら、日常生活を追っていきます。読んでいる読者も反感を覚えるでしょう。その生き方に2人の女性が関わり合って来ます。見るも無惨な結果を招く事になりますが、父親殺しの犯人が仮釈放される事から、もう一度事件に向かい直そうと過去への旅が始まります。身勝手な主人公を生き方を語られても・・・・と少し不満を持ちながらページをくくりますが、事件の真相の疑問がちらほら出てくるので途中投げ出さずに読みすすむといつの間にかズッポリ浸からされてしまっている事に気が付きます。なんだ、こりゃ。・・・・時はすべに遅し、そうなったら感動のラストまで一直線でした。作者はどんな年代層をターゲットにしているのだろう。殺された父親に近い年代のボクとしてはそれなりに評価できますが、例えば主人公を同年代とか、未婚に既婚の別とか、女性と男性の違いも有るかも知れませんがいろいろな立場で感想が変わって来るようにも思えます。そんな違った視点の感想も聞いてみたくなるような1冊でした。
 死者はまどろむ  小池 真理子 8/27 TOP HOME
 小池真理子「死者はまどろむ」。題名からしてコワイのにプロローグでいきなり、怪奇、狂気、幽霊、死後、心霊、なんて言葉が次々出てきてボクはすっかり怯えてしまいました。(^_^;) 作家は妻と子供が一人。賞をとったものの最近は筆が進まずに悩んでいる。しかし、実家が裕福あので生活に困る事もない。その妻が東北のある山村の小さな村の元ペンションを買い別荘にする事を計画。気分を変えて執筆をと作家の夫、妻、子供、夫の母親、妻の離婚をした妹の5人が村を訪れるところから物語は始まります。
 小さな村はまるでおとぎの国のような村で教会がある。村人全員がクリスチャン。外国を思わせるような風景だが人影が見えない。村に入って村役場に行くと、車から見えた人影が隠れるように消え、村役場にはいると中から村長という背の低い男と医者という背の高い男が出てくる。・・・・題名からして頭に入ってますから、のどかな風景と書かれても信用するわけには行きません。まして村役場の挙動不審な男たち、こりゃもう村ぐるみのコワイ話とハラハラドキドキです。嫌なんだよね、ホラーは。話は、その後元ペンションの逸話、ペンションになる前の逸話などなど、不気味がジワジワと・・・・・・・・。

 頑張って最後まで読み切りました。あーコワかった。こういう話は想像力の強い人は注意が必要ですね。書いてある以上に情景を想像して怖さも倍増です。暑気払いの怪談なんていいますが、読み終わったらクーラーの寒さが身にしみました。
 ある閉ざされた雪の山荘で  東野 圭吾 8/25 TOP HOME
  「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾。凝った設定ですね。屋敷や別荘や島など隔離された場所に被害者と犯人と探偵をまとめて閉じこめてしまう本格派ミステリーの定番設定でもあります。いかに閉じこめるのかいろいろ工夫を凝らしていますね。本書ではある芝居のオーディションに合格した7人の男女が舞台稽古という名目で演出者から山荘へ集められます。まだ雪など降ってはいませんが、大雪で閉じこめられた7人と設定での推理劇と指示され、山荘から出たり、外部へ連絡を取る事を禁じます。違反した場合はオーディションの合格を取り消すとなっている為に「閉ざされた雪の山荘」に従います。・・・・そして、殺人、また殺人。死体なき殺人が起きますが、劇として捉えて居るため、与えられた中で犯人を推理しますが、ある時点から本当の殺人事件ではないかと、揺れ動き始めます。そして最後の日にまた殺人が・・・・・。

 いやあ、これほど難しいミステリーは久しぶりというか・・・・。動機がまずわからない、死体の消えた訳や謎だらけなのです。読者は読者の常として何が伏線か探したり、何とか与えられたデータから動機なども考えるのですが登場人物と同じく、作り事か、本当の事件かで彷徨いますので尚更全貌が見えてきません。勿論、ラストで合理的な解答を聞くわけですが、してやられたと脱帽される事でしょうね。伏線も生きていました。混沌とした人間劇はほろ苦い、すっきりしない不完全燃焼のような気持ちを持ちながら、「ああ、良かった」と胸をなで下ろす事でしょう。いやあ、面白かったです。
 眠れぬ夜の殺人  岡嶋二人 8/23 TOP HOME
 岡嶋二人「眠れぬ夜の殺人」。酒を飲んで帰宅する途中にに酔っぱらいに絡まれる。振り払って離れようとすると相手は倒れる。急いでその場を離れる。・・・・よく有りそうな光景ですが、翌日新聞の報道でその時間、その場所で振り払った男が死んでいるのが発見されるのです。故意の殺人ではないので警察に出頭するが、それでも傷害致死にはなるのでした。それを恐れ、知らない振りをすると、ある日被害者名で脅迫文が届くのでした。
 酔っぱらいの喧嘩殺人が頻繁に起き疑問を感じた警視庁刑事部長は捜査第0課を招集するのでした。捜査第ゼロ課とは・・・・どうも警視庁の秘密組織のようです。ワクワクするぞ。これはまさしくMission Impossibleだ。東野圭吾「仮面山荘殺人事件」でも書いてしまいましたが、スパイ大作戦なんだな、これが。非合法組織0課は果たして謎の真相を暴けるのか・・・・。

 ハードボイルドだじょ。(^_^;) こういうのも良いですね。でも、ちゃんと伏線も貼られてミステリーなんです。まあ、岡嶋ミステリー風じゃないというえば、言えますが展開の巧さは相変わらずで、めくるページは止められないのでした。続編で「眠れぬ夜の報復」も出ているそうで、また機会がありましたら読みたいです。岡嶋ミステリーに魅せられていますが、つくづく解散は残念ですね。
 変 身  東野 圭吾 8/22 TOP HOME
 東野圭吾「変身」です。部屋探しの最中、不動産屋で成瀬純一は突然乱入してきた賊に拳銃で撃たれるところだった少女の身代わりに頭に銃弾をくらった。・・・・大学病院で世界初の脳移植が成功するが患者は純一だった。リハビリ、退院と日を追う毎に純一は自分の中に別な人格が生まれてくるのを実感する。脳移植に提供された脳は誰のか?、自分の中で成長する人格と闘いながら 提供者を捜し始める。
 脳死判定でも医学的見地から、倫理的見地から、その他、宗教など、どこから見るかで大きく意見が分かれている現在です。脳移植となるとクローン問題とも関わって来るようですし、果たして医学はそこまで行き着く事が出来るのでしょうか。さて、その脳移植が成功したら というお話です。脳のメカニズムは既に多くの事がわかって来ているのでしょうけど、脳イコール心とも言えるので果たして他の臓器移植のように行くのでしょうか?。
 臓器移植を考えると行き着くところが「死」。「死」とはと考える事は取りも直さず「生」を考える事。つまるとこ
ろ「生きるとは?」になるのですね。あまりにも大きな命題です。ですが、じっくり考えて見る事は大事な事ですね。そんな解答の1つでもあるのが本書とも言えます。ちなみにボクは4年前から臓器提供カードを持ち歩いています。
 仮面山荘殺人事件  東野 圭吾 8/22 TOP HOME
 「仮面山荘殺人事件」東野圭吾。老主人の山荘に集まった人々は事故死した娘の関係者だった。娘は結婚式を1週間に控えていた。集まった山荘に銀行強盗をして逃亡している二人組みが侵入する。人質となった人々だが監禁中に殺人事件が起きる。事故死した娘と関係有るのか?。徒労のような推理劇が始まるのだ。
 面白い構成で楽しめるのですが、結構先が読めた読者も多い事と思います。バレてもバレたなりに楽しめるのですが、意外な設定の割には驚きは少ないのですね。つまり虚構の世界では無さそうだけど大いにあり得る設定でして、現実には有りそうだけど無い話なんですね。Mission Impossible なのだ。どの様に展開していくか
仕方によって成否が問われるわけですが、まずは成功なのでしょう。動機が薄そうに見えますが、結婚前の男女、男でも女でも揺れ動く事はあるようですから、むしろ結婚式直前だからこそとも言えそうです。こういった場合、乃南アサ氏や小池真理子氏だったら逆の復讐劇がありそうですね。
 99%の誘拐  岡嶋 二人 8/21 TOP HOME
 「おかしな二人」こと岡嶋二人の「99%の誘拐」です。いつもながら導入部が良いですね。いきなり引きつけて、引きつけたら離さない、岡嶋二人に惚れる所以でもあります。お得意の誘拐事件ですが、過去に起きた事件と現在起きる事件と2つの誘拐事件があります。一つづつでも十分本になりそうですが。過去に起きた事件が回想として語られ、その時に誘拐された被害者だった子供が成人して同じ誘拐で復讐をするという図式としては簡単で間もなく双方の犯人や意図もわかってしまうのですが、その過程が息もつかさず面白いのです。誘拐事件の最大のポイントはお金の受け渡しですが、2つの事件とも驚くような展開があるのです。
 
 復讐にあたる誘拐事件ではパソコンが重要な機材として使用されています。15年ほど前に書かれた本ですが、当時としては最先端の技術を駆使していますね。まだDOSの時代でインターネット以前、パソコン通信初期になるのでしょうか。モデムやカプラーの時代ですが十分活用されています。現在しか知らない読者ですと少し違和感を持つかも知れませんね。パソコンの進化の早さを考えると、こう言った作品は時代背景の説明が必要になるかもしれません。現在の携帯電話とインターネットの普及、パソコンの高スペック化を考えるともっと複雑な展開も出来そうです。
 時代の変化が激しく文化のサイクルも早い現在、ミステリーに限らず小説や映画など時代背景がくるくる変わるもので、それらを基調にしたものはすぐに陳腐な物になりそうな不安がありますね。んまあ、未来永劫生き続けるのは無理な話でしょうけど。時代を理解しながら読んだり観たり聴いたりしていくわけです。
 「Y」の悲劇  有栖川 有栖 他 8/19 TOP HOME
 「Yの悲劇」有栖川有栖、篠田真由美、二階堂黎人、法月綸太郎の競作短編集。「エラリー・クィーンの名著「Yの悲劇」に捧げる華麗なる競演・・・・」と、うたっている短編集です。度胸の良いこと。(^_^;) どの作品も題名に「Y」が付いているのだが。(^_^;) 。
 「Yの悲劇」は前に「Xの悲劇」のちには「Zの悲劇」「ドルリー・レーン最後の事件」となるバーナビー・ロスの4部作の一つですね。バーナービー・ロス、実はエラリー・クィーンの別名でした。エラリー・クィーンはアガサ・クリスティーをかなり読破した後に読み始めた作家です。その後、いろいろ海外ミステリーを読んだのですがぼくにピッタリなのはクリスティーとクィーンなのでした。よく言われる事ですが、倫理的な謎解きに酔いしれたものです。さて、海外物の傑作でも語学の壁のおかげで感動が半減してしまう作品も少ないのが最大の欠点でもありますね。もちろん文化や習慣の違い、考え方の違いなどもあるのですけど。その言葉の違いで損をしている作品がこの「Yの悲劇」でもあります。大きな損はしているものの論理的な推理の醍醐味は十分味わえるのでお薦めの作品には違い有りませんけどね。ここで、その言葉の問題を話してしまうと、まだ未読の方に申し訳ないのでこれ以上言えませんが、凶器にマンドリンが出てくるのですが、これが何故マンドリンかで捜査が混沌としてくるのですがラストで唖然とさせられるのであります。まさしく、これは原文(理解できればですが(^_^;) )で読んでこそなのですね。まあ、こう言った伏線は国内ミステリーでも結構あります。
 さて、「今をときめく気鋭の4人」は恥ずかしくない作品を捧げられたのでしょうか?
 天狗風  宮部みゆき 8/18 TOP HOME
 霊験お初捕り物控第2弾「天狗風」宮部みゆき。短編集「かまいたち」に収録されている短編「迷い鳩」、「騒ぐ刀」で初登場した岡っ引き六蔵の妹で超能力も持つ「お初」を主人公にした長編小説です。
 商家の嫁入り目前の娘が神隠しで消息を絶ちます。南町奉行根岸肥前守の密命を受けたお初は神隠しの謎に挑みます。阿片の密売組織あり、誘拐犯あり、言葉を話す猫あり、謎は謎を呼び真相は深くなるばかり・・・・。霊験お初って謳っているわけですから摩訶不思議な世界もあるわけですが、それも人間の心のなせるわざ、地道な捜査なくして解決しないのは捕物帖となんら変わるところはありません。まるで見てきたような錯覚にとらわれそうな江戸の町に、存在感あふれる登場人物たちが躍動しています。この臨場感こそが本書の命でもあります。現代にもつながる女性の怨念を取り払うものは超能力なんかじゃなく生きている人間の言葉なのです。昔も今も憎しみも怒りも悲しみも喜びも全て心の中にあり、幸せは心の中にしか作れないものなのです。
 キスより優しい殺人  小池 真理子 8/16 TOP HOME
 小池真理子「キスより優しい殺人」です。表題を含めて15篇収録されています。いくつかは短編らしき長さですが、殆どがショートショートのような感じの短編集です。元々、小池真理子を読みたいと思ったきっかけは短編をいくつか読んでファンになったからですので、本書も十二分に満足して楽しみました。カバーには「直木賞作家が綴る日常の恐怖15篇」と謳っていますが、15篇の作品にそれほど恐怖を呼ぶものなどあるのでしょうかね?。なかなか意外性があって面白いけどコワイって感じじゃないな。しいて言うなら当たり前の日常生活の中でこんなにも犯罪に結びつくような事があるのかと、そちらの方が恐怖ではありますが。もっとも現実の犯罪はホントに日常生活の中に入り込んで来て、普通の通勤や通学さえも安心していられない怖さがありますね。その上、犯人は殆どが面識のない人間で突然思いついたように行動し、小説のようにラストまで解決出来る保証のない犯罪ばかりです。事実は小説より奇なりとは言い古された言葉ですが、まさに日常の犯罪はますますエスカレートして猟奇的ですらありますものね。現実の日常は非日常化し、その垣根は確実に低くなっているようです。
 死んでも忘れない  乃南 アサ 8/15 TOP HOME
 「死んでも忘れない」乃南アサ。心理描写がサスペンスの大事なスパイスになっている乃南サスペンス、家庭崩壊の過程はやはりコワイのです。再婚した家庭は中学生の男の子一人の3人家族。継母ながら気持ちの通じ合う親子でありました。子持ちの男へ嫁いだのは若き母親ですが再婚3年目にして子宝を授かります。それが、わかった日に夫は通勤電車で痴漢の疑いを掛けられ示談で対処します。息子は普通の中学生ながらいじめに加担しているような生徒ですが、父親の痴漢疑惑事件が生徒に知られる事になったことから.,いじめられる側になってしまいます。子を宿した継母は事件がいつの間にか知れてしまった近所の噂に悩まされます。これをきっかけに、仲の良かった家族は崩壊の道へ進んで行くのでした。

 最近、痴漢裁判でぞくぞくと無実が立証されて行きますが、現実には逮捕、裁判と無実を訴える道を選ぶより、仕方なく認めて示談で済ます例の方が多いようです。しかし、会社や地域社会や学校においても痴漢で逮捕された事と痴漢に間違われて逮捕された事は同じなのです。相変わらず留まるところをしらない「いじめ問題」を絡めて会社、学校、地域社会、と当たり前の生活圏で生きていく難しさが提示されています。どうしたら、この世界を生き抜いて行かれるのか、たくさんある解答の一つが本書でもあります。継母が引っ越したいと訴えた時、息子は逃げるを拒否し闘う道を選びます。そして、父親も。重松清「ナイフ」でのいじめに対抗する女子学生の清々しさをここでも感じ取れるのです。家族の絆は、信頼は、愛情は、最大の特効薬にはならないものの最低の治療薬であり闘う為の源でもあるのです。

 タイトルの「死んでも忘れない」から真っ先に浮かんで来るのは復讐とか嫉妬とか恨みとかで、こりゃあ壮絶な復讐劇じゃないかと思ったのですが、全く正反対の「こんな幸せ、死んでも忘れない」というなんとも羨ましいタイトルでした。「死んでも忘れない」と言える時間を持ちたいですね。
 犯人のいない殺人の夜  東野 圭吾 8/14 TOP HOME
 東野圭吾「犯人のいない殺人の夜」。(1)小さな故意の物語(2)闇の中の二人(3)踊り子(4)エンドレス・ナイト(5)白い凶器(6)さよならコーチ(7)犯人のいない殺人の夜、以上7篇が収録されています。この短編集は表題になっている「犯人のいない殺人の夜」に言い尽くせそうな、それをテーマに括った短編集とも言えそうです。事件が起きれば必ずいる加害者ですが、そう簡単に犯人にはならないぞと意識的にまた無意識に、一ひねりも二ひねりも加えた「山椒は小粒でピリリと辛い」、そんな作品が収められています。ブラックじゃ苦いし、ミルクを入れてドロッとさせるのも嫌だし、じゃあアメリカンでと飲んでみたら、あっさりしているもののコクがあって意外と美味しいじゃない・・・・そんな感じでしょうか。こう言うのも大好きです。
 闇の楽園  戸梶 圭太 8/14 TOP HOME
 第3回新潮ミステリー倶楽部賞、受賞作品「闇の楽園」戸梶圭太です。過疎化を止め、地域振興をはかろうと計画をした地方の町はテーマパーク建設を企画する。しかし、その候補地の市有地に隣接する土地から市有地へに廃棄物を無許可で破棄していた会社と隣接土地の所有者の町議はテーマパークの阻止を画策する。しかし、その土地はカルト教団も目を付けていた。やがて、町とカルト教団の壮絶な闘いへと・・・・・・。
 オウム真理教を彷彿とさせる新興宗教のカルト教団、過疎化の町の振興策、廃棄物処理と未だに全国で引きずっている問題が一つの土地を巡って三つどもえの闘いを繰り広げる・・・・と、思っていたら廃棄物は途中脱落で、今なお巷で軋轢を起こしているオウム真理教と地域住民の闘いのようになっていました。それなりに面白いし、息詰まる闘いとも言えるのですが、廃棄物処理業者が町議に罠を仕掛けたりと当初は大きな重点を占めていたはずですが、カルト教団が出てくると簡単に廃棄物処理業者は教団に入信してしまい図式が大きく変わってしまいました。カルト教団のいろいろな手口は詳しく書かれているのに、廃棄物処置業がいかにして入信するまでになったかは説明されていません。最後まで三つどもえで行かせる方が良かったじゃないでしょうかね。
 スリルとサスペンスもどきは有るのですが、細切れで持続性がない。やはり大きな柱って必要なのですね。登場人物も結構魅力的に書かれているものの、舞台で言えば一幕ごとに主役が変わってしまう感じで、この辺も1本通ったものがないので気持ちも分散されてしまうようです。大事なラストはもっと苦しみ抜いて考え出して欲しかったな。結局、何を書きたかったのだろうと考えてしまいました。
 記録された殺人  岡嶋 二人 8/13 TOP HOME
 岡嶋二人の短編集「記録された殺人」。全て単行本未収録作品。表題のほか「バット・チューニング」、「遅れてきた年賀状」、「迷い道」、「密室の抜け穴」、「アウト・フォーカス」、全6篇収録。
 相変わらず、意外なプロットで構成されている短編集です。しかし、ハズレが少ないですよね、いや、今まで無かった。共作の強みだけじゃないでしょうね。それぞれの持ち味が生かされていると言ったら良いのでしょうか。

 あとがきで北上次郎氏は「中村真一郎氏は共著「深夜の散歩」の中で次のように書いている「探偵小説の長編とは結局、”長い短編”に過ぎない」・・・・中略・・・・探偵小説は短編のほうが似合っている、ということなのだろう。」と引用を交えて語っている。はて、ボクはむしろ言うなら「短編とは、”短い長編”だ」と思う。長編と短編は別個のものではないと言う感じも気になるのだけれど、長編が長い短編であるとする点は同感できないのだ。短編に手を加え(まあ、平たく言えば、登場人物を掘り下げて描写したり、舞台環境を細部まで書き込むとかを指す事になるのだが)原稿用紙の枚数を増やして長編なら、短編を書くのは無駄というか出版する方だって収支面を考えても損な投資じゃなかろうか。折角、知恵を絞った作品だ、長編にして稼ぐのが理に合うように思える。しかし、世に優れた短編が溢れている事を見れば、短編は短編の持ち味を生かした小説であり、長編の贅肉を省いて短くしたものではない事は一目瞭然なのだ。何故か、短編でも小説として必要なものは長編と同じで、省いたり付け足したり出来ると思う事がそもそも大きな間違いであり、仮に駄作と呼ばれるような作品があれば、まさにその作業をした証でもあるのだ。・・・・読めばわかるのだよね、そんな作品。(^_^;) 探偵小説が短編の方が似合っていると考えるのは、なぞなぞゴッコの延長でしか捉えていない証でもあるのだ。結局のところ、謎が出題されて解答があれば良いと言う事なのだろう。小説としての体をなさない未熟な小説には、探偵だろうが、恋愛だろうが、冒険だろうが、本格物だろうが、短編、長編だろうが、・・・どんな冠を持ってきても誰も見向きもしないって事だ。
 花咲村の惨劇  吉村 達也 8/11 TOP HOME
 吉村達也「花咲村の惨劇」。吉村達也の「惨劇の村」5部作の1作目。東京、マンションの屋上から素っ裸に毛皮をまとっただけの女性が転落死した。目撃者の証言から自殺や事故死とは思えないのだが、殺人と断定も出来なかった。2ヶ月後、鳥取、花咲村で殺人事件がおき東京の事件と結びつける投書が舞い込む。父親の痕跡を追う推理作家朝比奈耕作は鳥取へ・・・・。

 ・・・・と、まあ5部作らしい惨劇シリーズだそうです。ふむ、惨劇なんだろうな。(^_^;) 鳥取の山村の財力を誇る閉ざされた地域に血みどろの歴史が浮かび・・・なんて横溝ワールドっぽい感じなんだけど、あまり怖くないのだ。5部作と言うからには、まずは1作目でグーッと引きつけてもらわないとゴールまで持続できるかわからないぞ。

 いろいろ巷に「本格物」を冠にしてミステリー本流は我にあり・・・みたいな薄っぺらな謎解き本をばらまいている輩が多いのには閉口させられます。社会派やら蘊蓄派など異端児扱いにし、トリックこそ命と一生懸命考えたのだろうが、背景や動機、人物描写、人間関係、ナドナド基本的な整合性のないまま、冠をとったら小説の体もなさないただの謎々問題になっている事に気がついていない作家とそれで読者を騙し通せると平気で出版している出版社にミステリーという活字を使わせない法律が出来ないものでしょうか。小説家はプロデューサー、監督、脚本家、カメラマン、そして役者まで兼ねて一つの作品を作り上げるわけです。パーフェクトならずとも全てにバランスが必要ですね。どうか、ご自身が、御自社が満足出来るものだけ出版して下さい。数を出せば中には駄作があっても仕方ないなんて決して言ってはいけないですぞ。
 球形の季節  恩田 陸 8/9 TOP HOME
 恩田陸「球形の季節」は素晴らしい。東北の小さな地方都市。そこで奇妙な噂が4つの高校を中心に広まった。4つの高校生で作られている「地理歴史研究会」なるメンバーが噂の発信、真相を探るべく4校の生徒を対象にアンケート調査を開始したが、噂どおりに一人の女子高校生が行方不明となる。不安と恐怖を感じつつ真相究明に再度取りかかるメンバーの前にまた新しい噂が流れ始めるのであった。

 言いしれぬ恐怖感が漂う中、高校生たちが探るべく真相とは?・・・・バラしても本書の魅力を妨げるものではないと思うのですが、やはりルール違反ですので止めておきましょう。全く系統もテーマも違うのですが宮部みゆきの「クロスファイアー」が頭をよぎりました。この作者も高校生を登場させても違和感なく書き上げる作家の一人ですね。存在感ある若者たちが本書を素晴らしい作品にしています。
 
「さあ、決めてみろ。やりたいことがいっぱいあるんだろ?勉強なんか大嫌いなんだろう?じゃあ、とっと始めたらどうなんだい?自分の人生とやらを。何を犠牲にして、何をして食べていくのか、どういう人間になりたいのか?右を歩くか左を歩くか。ささ、早く始めたらどうなんだい?何かを決められる人というのは、よほど恵まれている人かよほど選択肢がないないのかどちらかだ。けれど世の中はそのどちらでもない人が圧倒的多数をしめている」と一人の女子高校生言わせています(長い引用でスンマセン)。親の干渉からか、若い人の多くは自分の人生がまるで決められたレールに乗せられているように感じているようです。そして、そこから這い出たい、その世界を捨てたいと。しかし現実の壁が、先に挙げた女子高校生の台詞のように、立ちはだかっている事に気づき、立ち止まるわけです。そう、そのように現実に直面して自分で世界が切り開けないなら導いてあげようと大きな手が広げられます。しかし、その手を振り払い自分の力で進む道を選択するのです。
 水の中のふたつの月  乃南 アサ 8/8 TOP HOME
 乃南アサの「水の中のふたつの月」。偶然、故郷を離れて11年ぶりに再会した3人の女性には封印された秘密の約束事があった。3人の内の一人の女性の恋人が他の二人の女性と関係を持ち始めてしまい、その過程と並行に小学生時代に失踪してしまった一人の男の子の話が交互に語られています。何故、失踪したのか?3人と失踪事件の関係は?。またしても一人の男を中心に回り始める3人の関係はどう変わるのか・・・・。3人3様のおかしな癖も含めて多くの何故?が少しずつ明かされて行くと同時に新たな封印されるべき話が始まろうとしているのだ。
 ありきたりの、有りそうな友達関係ながら、開かれつつ過去と深まりつつある現在を目の当たりにすれば、普通に見えるわけがありません。不気味です。・・・・思えば、実にコワイ、コワイお話です。3人寄ればかしましいなんて言いますが、そんな微笑ましい話じゃないぞ。男なぞ到底太刀打ちできっこないのです。こう言うと「へぇ、そうかしら?」なんて女性に言われそうですが、そこがまたコワイのです。
 蠍のいる森  小池真理子 8/6 TOP HOME
 見事に土俵際でうっちゃられてしまいました。「蠍のいる森」小池真理子。最初に事件が有るわけでもなく、ミステリアスな出来事もない。それなのにミステリアスでサスペンスなんだな。自意識過剰は親譲りの心身症の図書館司書、国際結婚に破れロンドンから帰国、翻訳を始めた誇り高き女性、便利屋の看板を掲げるも女を騙し詐欺まがいの事をして気楽に生計を立てている男、3人の生活が一つの点に吸い寄せられるように集まりラストへと向かうのだ。まあ、そこにいろいろな人々が絡み合って来るのでそんな簡単じゃないのですけどね。何も起きていないにもかかわらず、それを予感させるように時が刻まれて行く過程はまさにスリルとサスペンスですね。

 まどろっこしいようにも思える人物描写と心理描写で登場人物に生命を与え十分な存在感を作り上げています。役柄が決まって人格が与えられれば、役者は自ずとそれぞれの芝居をすれば良いわけで、観客は安心して事の成り行きを見守って楽しむ事が出来るのです。役柄に、人格に反することなく芝居が進めばラストも見えて来るのが常ですが、それらに反することなく観客の思惑とは違う着地点が見えて来そうな、まさにその瞬間こそミステリーでありサスペンスなのですね。それを本書は見事にお披露目をして幕を閉じたのであります。拍手喝采だったは言うまでも有りませんね。
 宿命  東野 圭吾 8/5 TOP HOME
 東野圭吾「宿命」。小学校、中学校、高校と同級生でありながらライバルだった二人は容疑者と刑事として再会する。また、容疑者の妻は刑事のかっての恋人だった。・・・・これだけでも興味をそそられるのではないでしょか。いや、これに殺人事件があり、遺産相続あり、過去の犯罪の匂いのする秘密ありと、おまけがたっぷり。本格派東野圭吾から「秘密」や「片想い」に通じるドアが、まさに開き始めた瞬間が本書ではないでしょうか。だからと言ってはなんですが、多少の無理もボクとしては甘んじて受けましょう。・・えっ、何処が?なんて聞かないで。書き足らなくなるよ。(^_^;)
 探偵倶楽部  東野 圭吾 8/2 TOP HOME
 東野圭吾「探偵倶楽部」。黒い服を着た二人の男女。どちらも背が高い。男の方は彫刻のように彫りの深い顔をしていて不気味な印象を受ける。女の方は切れ長の目をしていて美人なのだが、なんとなく暗い顔をしている。肩まで届いている髪が黒過ぎるせいかもしれない。・・・・会員制探偵倶楽部に調査を依頼すると、そんな二人が依頼人を訪れる。秘密厳守の倶楽部だ。その探偵倶楽部が解決する5つの事件が収録されています。
 短編集です。、一つ一つの事件がみんな奇妙な事件でして興味をそそられますね。まあ、会員制調査機関という設定に違和感がないわけじゃないのですが、これも新趣向の設定と思えば、それなりに楽しめたりします。
それぞれの事件についての感想は短編ですのでばらしてしまう恐れがあるのでヤメにしますが、事件の真相は暴かれますが、事件のその後は読者の想像に任されています。そんな心残りのする終わり方も、また面白いかも知れませんね。
 とってもカルディア  岡嶋 二人 8/1 TOP HOME
 「とってもカルディア」岡嶋二人。表題のカルディアとは、全自動EEコンパクトカメラの商品名です。持ち主の 土佐美郷と織田貞夫はTV局の下請け会社で再現フィルムの担当をしています。そのカメラを織田の友人が無理矢理借りていき失踪します。時を同じくして絵画を見る同好の士の集まりで死体を見たと言う人物が現れますが警察が駆けつけると死体は消えていた・・・・そんな事件が発生。番組企画の上でも乗り気な関係者は死体なき殺人を追いますが、次第に2つの事件は結びついてくるのでした。

 ・・・・と、言うわけで、今回は再現フィルムペアが事件を追います。相変わらず二人の絶妙の会話で飽きさせずに楽しみながら読めてしまうのですよ。人物に性格を持たせているので発せられる言葉からでも存在感を際立たす事が出来ていますね。注釈を付けないと誰が言っているのかわからない下手な本で閉口する事もありますからね。脚本のようにダラダラ会話が続き途中から誰の言葉かわからなくなったり、逆に一々「誰々が笑いながらこう言った」を連発させる本も少なくないです。この辺、本お読み易さ、読み辛さに関係してくるようです。
 再現フィルムペアはバイタリティ溢れる調査を展開して応援したくなるのですが、引きつける謎は十分あってもミステリアスな怖さは相変わらずあまり感じないところが不満と言えば不満だけど、ぼくとしては大好きなパターンなんです。主人公ペアの名前は二人とも前から呼んでも後ろから読んでも同じというお遊びも大好きです。
 光源  桐野 夏生 7/31 TOP HOME
 久々の桐野夏生「光源」です。今までとはガラッとかわってハードな叫びから静かなる闘志とでも言えばi良いのでしょうか、映画界を題材にしながら華々しさはありませんね。
 簡単に言ってしまえば、女性プロデューサーが新人監督を起用してひと山当てようとするお話を、かっての恋人であった撮影監督(カメラマン)が語ります。彼女が発掘した今では人気の男優、元アイドルの再起を掛ける女優、新人監督、芸能プロダクションなどなど、野心と思惑が入り乱れながら映画製作にそれぞれの情熱を傾けるのでした。

 映画の撮影現場の様子や撮影されていく過程など、ちょっと真新しく感じます。派手さのないストーリーですが存在感ある登場人物が深く潜航して物語に奥行きをつけているようです。ただ、それぞれの存在感に優劣がないもので、登場人物全てが主役であるようにも思えたり、逆に誰が主役かわからないようであったりしているのです。・・・・ん?、いや、だからこそ光源なのかな。(^_^;) 光源を何処に求めるのか、それが移動しながら進行しているのだろうか。なるほど、ライトを浴びている時、影になった時、その明暗の中で人間模様が展開されているわけのだ。ふむぅ、こりゃ、侮れないぞ。
 心とろかすような  宮部 みゆき 7/28 TOP HOME
 宮部みゆきの短編小説集「心とろかすような」です。元警察犬マサと蓮見探偵事務所の娘、加代子のコンビが事務所に持ち込まれる難事件を解決するお話です。ただし、その全てが元警察犬マサが語るというちょっと趣向が変わっていますが、このマサ、なかなかの話し上手で面白おかしく語ってくれます。表題を含めて5篇収録されています。

 さて、本書は宮部みゆき長編第一作「パーフェクト・ブルー」で活躍したマサと加代子コンビが半年後からマサの語り口で書かれた始めた4つ短編と書き下ろし1篇で構成されています。イワさんの田辺書店と同じく下町を舞台に活躍するマサと加代ちゃんは一般的には従属しているのはマサの筈ですが、どうもマサの言い分を聞いていると逆のようです。加代ちゃんの妹の糸ちゃん(高校生ですが)にはまるで保護者ズラしているマサですから単に犬の視点からと言う以上に面白いのですね。
 そうそう、我が家にも今年からシーズーのモモちゃんが来ました。シーズーはどうも流行遅れなようで最近では見かけるのも少ないようですが、家では最初からシーズーだけしか眼が入らなかったもので滅茶苦茶可愛がっております。廻りから聞いていたように、まだ6ヶ月ほどのモモちゃんですが家族の序列を作っているようです。やはり、可愛がりもするけど怒るのも多いボクは2番で餌から始まって散歩などあれこれ世話をする家内が1番、3番4番が長女に長男、そして最後が高校生の娘ようです。まだ6ヶ月の犬にあしらわれている娘はTVで仰向けに寝かせて上乗りすれば従属ずると聞いて無理矢理実行しようとして家族のヒンシュクをかっておりました。(^_^;)
 話がそれましたが、犬同士の会話があったり、飼い犬の気持ちが語られていたりと、愛犬家には2倍楽しめる本です。
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