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連 鎖・・・・・・・・・・・・・・・・ 真保裕一  i レディ・・・・・・・・・・・・・・・ 吉村達也 取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・真保裕一
ダレカガナカニイル・・・・・・ 井上夢人 先 生 ・・・・・・・・・・・・・・・ 吉村達也 真実の瞬間・・・・・・・・宮部みゆき 他
熱 氷 ・・・・・・・・・・・・・・・・五條 瑛 滅びのモノクローム・・・・・ 三浦明博 動 機・・・・・・・・・・・・・・・  横山秀夫
罰・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新野剛志 パラレルワールド・ラブストーリー・ 東野圭吾 悪 意・・・・・・・・・・・・・・・・ ・東野圭吾
そして扉が閉ざされた・・・・ 岡嶋二人 暗鬼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・乃南アサ ぼんくら・・・・・・・・・・・・・・・宮部みゆき
むかし僕が死んだ家・・・・東野圭吾 半落ち・・・・・・・・・・・・・・横山秀夫 珊瑚色ラプソディ・・・・・・・・・ 岡嶋二人
家族趣味・・・・・・・・・・・・・・乃南アサ 七日間の身代金・・・・・・・・岡嶋二人 陰の季節・・・・・・・・・・・・・・ 横山秀夫
妻の女友達・・・・・・・・・小池真理子 スナーク狩り・・・・・・・・・・・ 宮部みゆき 400年の遺言・・・・・・・・・・柄刀 一
クリスマス・イブ・・・・・・・・・・岡嶋二人 美しき凶器・・・・・・・・・・・・・東野圭吾 八月のマルクス・・・・・・・・・・・新野剛志
あかんべえ・・・・・・・・・・・・宮部みゆき 震える岩・・・・・・・・・・・・・・宮部みゆき 怪しい人びと・・・・・・・・・・・・・東野圭吾

  取引  真保 裕一 10/29 TOP HOME
 「取引」真保裕一。公正取引委員会に勤務する審査官の伊田は汚職の嫌疑をかけられるが、検察庁から出向している参事官橋上から汚職疑惑は政府開発援助ODAのマニラでの内定調査をする為の策略で、潜入調査を引き受けさせられる。マニラに渡り伊田が接触しなかればならない相手は大手建設会社の勤務するかっての高校の同級生だった。ところが内定調査に掛かる前に誘拐事件が起きてしまう。巨大プロジェクトに群がるハイエナ達のODA疑惑、誘拐事件の真相とは?

・・・と、言うわけで舞台はフィリピン、テーマはムネオハウスでお馴染みのODA、隠し味に正義と友情と来ればつまらないわけがない。公正取引委員会が表舞台に出てくるっていうのも何やら新鮮です。実際の審査官の仕事もこんな感じなのでしょうか?。ムネオハウス事件などODAにまつわる疑惑の数々を目の当たりにすると警察官なみの資格や権限を与えてバシバシ取り締まってもらいたいものですが、何たって政治家から官僚、大会社から中小企業まで都市や地方を問わず汚職だらけの我が国です。汚職を頂点に税金の無駄遣いは留まる事を知らず、それを止める手立てもないのです。やり放題。「正しい」という言葉は死語になりつつあります。でも怒りの鉄拳も上げられず、嘆き諦めるしか術のないか弱き国民は指をくわえて見守るしか能がないとは、どっちもどっちってわけです。そうですよ!もっと怒らなければ!声を大にして叫ばねば! 景気回復、構造改革、最良の手立てをしなくてはならないのは当たり前ですが、全ての分野で不正を無くし正義が貫ねかれれば税金だって余るかも知れないですぞ。正義なんて理想だって?。おいおい、だからダメなんだよな〜。
  i レディ   吉村 達也 10/25 TOP HOME
 吉村達也「 i レディ」です。食品会社の営業部長、今泉は部下に厳しく鬼の営業部長として知れ渡っていた。そんな今泉の楽しみはとあるサイトで女性の振りをして書き込みをする事だった。今泉の作り上げた虚構の女性はネットで多くのファンを作りあげていく。そんな、ある日いつものようにキーボードを叩いていた今泉は自分の意図しない文章を勝手に指が叩き始めるのに驚くのだ。そして、それは今泉の中でその人格を現し始めた時だったのだ・・・。

 まあ、チャットやら掲示板なので女性名のハンドルを使い、女性の振りをして参加している者がいる話は昔から良く聞きますね。ボクもパソコン通信時代は結構はまった時期がありましたが最近はご無沙汰です。あれは気力がいる。(^_^;) また携帯電話のせいではないでしょうが、チャットなど使わずにメールや掲示板がチャット化してるが現状のようです。振り返ればパソコン通信時代のインターネット始動期には会議室をチャットのように使っているのを目の当たりに見た事がありますが、今の兆しの表れだったのでしょう。

 女性の振りをしている内にいつの間にか女性に成りきって行く・・・と聞けば、「サイコ」のように神経の方に異常が出てきてみたいな、または願望の現れだとかに成りそうですが、今回はどうも違うようです。インターネットが抱えている多くの問題がそれも無きにしもあらずかと言えそに思えます。世の中に、人の心に、悪意が消えない限り逃れられない問題でもあります。どんなツールも全て使う人次第なのであります。
 連 鎖  真保 裕一  10/24 TOP HOME
 真保裕一「連鎖」、第37回江戸川乱歩賞受賞作です。最初は「ホワイトアウト」で次に「黄金の島」を、そしてついこの間「発火点」をと、今まで3冊程しか読んだ事がなかったのですが、少し読み込もうと思ってまずは「連鎖」を選んでみました。なるほど、原点がここにあったと。面白かったです。

 親友の雑誌記者が自殺、意識不明の重体・・・・物語はそこから始まった。検疫所に勤務する元食品Gメン羽川はその親友の妻と不倫関係を持ったばかりであり、それが自殺原因とされる。時を同じくして親友が紙面で追求していた輸入汚染食品の横流し事件の余波とも言うべき事件が起き、その真相究明の為に専属捜査を命ぜられる。自殺の原因もこの事件に関連していると密かに思い、また自殺そのものにも疑問を抱いている羽川は調査に乗り出すのだ。

 放射能汚染問題、残留農薬問題、また現在では狂牛病問題と食品の安全性に関する数々の問題がありますが。規定値を設けたり、検査を敢行しようと確信犯には何の効果もありませんね。しかし、食品を扱っていながら何故にこれを金儲けの手段にしなければならないのか驚きを隠せませんが、雪印問題をはじめ、そもそも普段の安全性に対するモラルが欠けているので、儲かりさえすれば食品に携わっている責任など平気で捨てられるわけです。狂牛病問題では破棄する肉の政府よりの補助金ほしさに、疑いのない肉を偽って補助金をだまし取るメーカーも続出、これが誰も知っているメーカーの仕業なのですから元々ゴロツキ会社としか言いようがないのです。この不況の時代ですから会社を潰した時の反響なども取りざたされていますが、反社会的会社の存続など認めるほうがおかしいのですね。どんな分野でも、どんな会社でも大なり小なり裏の面があっても不思議じゃないような捉え方は止めたら良いです。いくら縛っても悪い事をする人間は出てくるものですが、会社という器はいつでも汚れさせてはダメなのです。これは、役所や政治についても同じです。社会に、しいては国に、希望をもてないような、諦めしかもてないような、そんな状況を作っては絶対にダメなのです、絶望しない為に。
 真実の瞬間(傑作選)  宮部 みゆき 他 10/22 TOP HOME
 「逆転の瞬間」、「オール讀物」推理小説新人賞傑作選(3)です。(1)新・執行猶予考・・・・荒馬 間(2)世紀末をよろしく・・・・浅川 純(3)我らが隣人の犯罪・・・・宮部みゆき(4)庭の薔薇の紅い花びらの下・・・・長尾由多加(5)小田原の織社・・・・中野良浩(6)我が羊に草を与えよ・・・・佐竹 一彦、以上六編が収録されています。

 どうも、長編が続くと短編集は息抜きになりますね。「オール讀物」推理小説新人賞受賞作ですから読み応えも十分です。題材もバラエティに富んでいて面白いです。「小田原の織社」は時代小説ながら密室殺人であったり、「庭の薔薇の紅い花びらの下」の繰り返されるどんでん返しなど小粒でピリリと辛い作品の数々、たっぷり堪能できました。
 先 生  吉村 達也 10/20 TOP HOME
吉村達也「先生」。・・・・コワイです。5件の中学生連続殺人事件で騒がれた夏休み明けの総美学園中等部の新学期。病気のため退職した担任教師に替わって新任の教師が3年A組みの教室の扉を開いた。髭で顔を埋めた教師の挙動を不審がる生徒だが翌日の授業中にさらに教師の異常を目の当たりにする。・・・・学校を恐怖が襲う。

 学校では、とりわけ学級の中での教師の絶大な権力は使い道を誤るととんでもない事件を引き押しかねないというお話ですが、確かにそうなのだろうけど現実には生徒の傍若無人な教室での態度が云々されるのも事実ですから、その力の加減は一口には語れないようにも思えます。父兄の力も大きいようですしね。敢えて言うならば、教師の人格によるのではないだろうか。教師次第って事でしょう。しかし、最近の新聞にも取り上げられていましたが、教師の破廉恥行為には目に余るものがありますね。ほんの一部で全体からいえば少数という見方もあれば、氷山の一角だという見方もある。少数なら良いってもんじゃないだろ。資質の低下は確実にあるだろし、それは生徒も親も同じで、みんなで教育を、この国を破壊しているのか。
 
 連続殺人事件という背景はあるものの、2日間の恐怖であります。恐怖の兆しから、一方で教師の過去を追うジャーナリストのストーリーが展開してながら、アッという間にホントの恐怖がたたみ掛けるように襲います。ラスト間近で小説と映像の合体とでも言いましょうか、一瞬画面が真っ暗になり徐々に画面が開いて行く趣向があったりします。ここでニャリとしますが、そんなつかの間の休息の後の恐怖はホントにコワイのでした。(^_^;) 
 ダレカガナカニイル・・・  井上 夢人 10/20 TOP HOME
 「ダレカガナカニイル・・・」井上夢人。コンビ岡嶋二人解消後の第一作目に当たります。やはり岡嶋二人の時とは作風も変わっていますね。ただ、最初から引きつけて離さないストーリーの運び方は相変わらずで、かなり長編なのに飽きさせません。ジャンル分けに意味はないけれど、SFの範疇になるのでしょうが、実は本格派ミステリーでもあるわけで、まあ、引っくるめてミステリーって事でしょう。ボクは好きなんですね、こういうの。荒唐無稽な絵空事なんて思いませんし、だからといってあり得る話だと納得しているわけでもありません。有り難い事に何の抵抗もなくすんなり受け入れてのめり込める下地を持ち合わせているのです。ミステリー好きの共通の特技かな。

 警備会社に勤務する西岡は山梨県にある新興宗教の警備へ左遷される。着任の日の夜、堅固なフェンスの中にある祈祷堂に火災が発生し教祖が焼死する。その火災発生の直後に西岡は見えない力によって突き飛ばされたように転倒するのだ。そして、その時から西岡の意識の中にもう一人別人の意識が入り込んでいる事に気が付く。入り込んだ意識とは? 火災の真相は? 2つの意識を持ちながら追求が始まる。

 何やらオウム真理教を思わせる信仰と教義を持つ新興宗教です。ストーリーから新興宗教も切り離せないテーマですが、実はラブストーリーであり推理小説であったりします。教義や何故に信仰に走るかなど興味深い説があって、オウム真理教も犯罪に染まらなければ何ら非難を受けるものではない事も改めて思ったりします。空中浮遊を信じたって、お好きなようにと言うしか無いわけですね。どうも新興って言葉に胡散臭さが付いているようで、歴史があろうが無かろうが宗教皆同じで良いじゃないかと言う気もします。そんな多くの、実に多くの考え方がある宗教を題材にするのは小説として途中気持を削がれかねない危ういさがあるのですが、本作品は2つの意識の存在を宗教だからでなく、そのような能力が有るからという設定を土台にしています。能力自体は宗教じゃないですものね。人間の思惑が宗教にしてしまうのですね。・・・と、言うわけで特別な能力が悲劇を生み謎を作り、それを愛が救う・・・そして、後ろ髪を引かれるような哀しさいっぱいのラストを迎えるのでした。
 動  機  横山 秀夫 10/19 TOP HOME
 横山秀夫「動機」です。日本推理作家協会賞受賞作。しかし、横山秀夫は良いですねぇ。言うまでもないのですが、まずは小説が書けていますから上にどんな冠を付けてもそれらに囚われることなく奇手を諂う事もない。文章がしっかりしているので、意味不明の詩的表現に接することなく読者は安心してストーリーに没頭できるのです。メインディッシュを邪魔していないわけです。宮部みゆきに次いで文章力があるとボクは思っています。
「動機」は表題の動機を含めて4篇収録されています。(1)動機(2)逆転の夏(3)ネタ元(4)密室の人。ボクから見るとどれもが甲乙付けがたい素晴らしい作品です。

 「動機」は警察署内から警察手帳が30冊も紛失する事件です。そもそも紛失事故を無くすために県警警務課企画調査官、警視の貝瀬が勤務が終わった警察官は手帳を持ち帰らず一括して署内で保管する事を提案し、その試験運用の最中の出来事でした。最悪の立場に立たされた貝瀬は二日間の猶予の間に事実解明にのりだすのだ。警務課と刑事課、キャリアにノンキャリア、署内に渦巻く固執の中、真実は果たして・・・・

 ・・・、と言うわけで、警察署内の手帳紛失事件で殺人も有るわけじゃない物品紛失事件なのですが、やはり警察内事件もあって緊迫感があり、シンプルな事件な程にその隠された謎が非常に大きく感じられます。他の作品にも共通するのですが、高速道路や列車から見る夕暮れの街並みに感じる孤独感と人恋しさ、ホームシックになった時の心細さと今にも泣きたくなるような心の不安定さとでも言えばいいのでしょうか、そこはかとない哀しさや寂しさを全編通じて感じます。警察官や裁判官、弁護士に検察官、新聞記者などなど法曹界を舞台に法を守る強くなければならない人たちの力強いストーリーの筈なのに、反するような心の弱さや、哀しみ、寂しさに覆い被されています。それこが横山ワールドの最大の魅力なのです。もう一つ共通点は、まるでボクら読者をも救ってくれるような、ハッピーエンドじゃないけど、まだまだこれで終わりじゃないぞとラストに救いがあるのです。この危うい確実じゃないけど少しの期待と希望が持てる救いが全てのストーリーを救ってくれています。それが読後感にもたらせる影響は計り知れないくらい大きいでしょう。涙が出るくらい優しい本なのです。
 滅びのモノクローム  三浦 明博 10/17 TOP HOME
 平成14年度第48回江戸川乱歩賞受賞作「滅びのモノクローム」三浦明博です。今更ですが、乱歩賞と言っても本格派推理小説を指しているわけじゃ有りませんが、受賞作の傾向など興味深いものがありますね。
まさにミステリーの冠が似合いそうな作品が多いです。

 骨董市で古いフライリールと錆びた箱を手に入れた広告代理店に勤務する主人公は箱の中に入っていた16ミリフィルムを発見する。折しも政党のイメージコマーシャルの仕事が入り、そのフィルムに写っているフライのキャスティングを完全修復して使えないかと考えるのだ。同じ頃骨董市に出品してしまった日光の老舗旅館の娘と持ち主である祖父は取り戻そうとする。戦時中の特高警察の隠された秘密、保守政党で今なお影響力を行使する引退した老政治家、戦時中の在日二世の動向を調査する週刊誌記者・・・と、フィルムを追い、様々な人間が関わって来るのだ。フィルムに隠されたものとは一体・・・。

 実はこういうシチュエーション、好きなんですねぇ。お国のために国民が総動員されているというのに、あちらこちらで密かに暗躍して悪事をはたらく輩が沢山居たのですから、後からいろいろ出てくるわけです。その悪事をはたらく輩が一般国民じゃなく地位や権力のある輩がやるのだから、何がお国の為だか分からなくなってしまいます。まあ、現在も文明国らしからぬ情けない悪事をはたらくのは政財界の面々という未発達なこの国の現状ですから驚きはしませんけどね。神も仏もない・・・と嘆く前に正義が機能する国家を作り上げて欲しいと思うわけですが、法整備を含めて気構えさえも喪失して居る有様。憂いのポーズだけで「自分さえよければ良い」が我が国民の合い言葉ですからホントは望む方もいい加減だったりしているので、まさにこの国民ありてこの政治家、この政治家ありてこの国家じゃなかろうか。腐ったリンゴは自ら腐っているのが分からないのでしょうか。

 そう言えば、戦時中の外国人はどうしていたのだろうか?・・・と、この本で初めて振り返りました。近隣諸国の方々が強制連行されたりしたの周知の事実ですが、ヨーロッパやアメリカなどの2世を含めた方の処遇はどうだったのでしょうね?。その一つの実情がこの本で描かれましたが、もう少し掘り下げて書かれるとフィルムの本当の重さが分かるような気がするのですが。戦争や政治を登場人物に語らせているいますが共感をしました。ぼくは戦後生まれですが、まだ戦後を感じる時代を過ごしてきたもので、この手のシチュエーションはよくわかるのですが本当の戦後世代はどのように感じるのでしょうね。興味有ります。一読する価値は十分すぎるくらいあります。
 熱  氷  五條  瑛 10/14 TOP HOME
 「熱 水」五條瑛です。氷山から作るミネラルウォーターがある。その材料とも成る氷だが、氷山を銃で撃ち、適度な大きさにして採集するのだそうだ。コレにはテクニックがあって、どこを狙っても良いわけではないらしい。水面下にその質量の4分の3が沈んでいるので下手に壊すと氷山が回転して船舶に危険を及ぼすのだ。だから狙い場所の熟練した考察と射撃の腕が必要とされている。カナダから帰国した主人公は氷山ハンターだった。

 突然の姉の死でカナダから帰国した主人公は義兄は行方知らずで姉と残された息子、年老いた義父の3人で生活していた事を知らされる。姉の死は事故死、自殺の両面で捜査され自殺として処理された事を知る。そんな帰国間もなくの時、甥が失踪したとされる父親に連れ去られる。そして甥の命と引き替えに狙撃を強要される。同時に時の首相にポセイドンと呼ばれるテロリストから脅迫状が舞い込むのだった。ポセイドンとは?姉の死の謎は?、絡み合った糸が解きほぐされる時、新たな哀しみが湾岸を包むのだ。

 ハードボイルドだぞ、サスペンスだぞ。風変わりな登場人物が華やかに咲き乱れて盛り上げてくれます。ただねぇ、盛り上がる物語と裏腹に、笛吹けど踊らず・・みたいにぼくとしては乗り遅れてとり残されたようです。それもこれも、たぶん一気に読めば良かったのでしょうけど分割読書でいたので白けたのかしらん。(^_^;) 総理大臣の暗殺という割には何故か緊迫感に欠けるように思うのです。実は主人公は幼くして両親を交通事故で亡くし叔父の家へ引き取られます。叔父には一人娘がおり、義理の兄弟として育って来ました。その姉との関係が重要な伏線になっているので随時そのいきさつなりが挿入されるのですが、これがどうもハッキリしない。ハッキリしないから甥の誘拐から狙撃へのつながり方がどうも弱すぎると思うのです。本人同士は実の兄弟の愛と認識しているのに、それを誤解されるのが嫌でカナダへと飛び出した軟弱な主人公です。本当はお互い愛し合ったなんて方がスッキリするぐらいです。 
 テロリスト、右翼団体、元警察官など賑わしますが、重要な登場人物の設定からくる行動が一致していないのではないでしょうか。主人公こそもっともつかみ所がないのです。中傷が嫌で逃げ出した闘わない男は厳寒の氷山ハンターになり、あくまでも義姉との関係は兄弟愛と言いその子供のために狙撃を承諾し、姉の仇に人は撃たないと遠回しながら結局復讐。チグハグじゃない?。氷を溶かす程の熱さが伝わって来なかったな。他の人ももその辺が似ているので印象が薄いのです。しかし物語の設定は面白いし、複雑に絡み合って単調ではないし、それなりに十分に楽しめます。氷山ハンターが厳寒の地で活躍する物語だったら壮大なあーなんて思ったりもしています。
 悪  意  東野 圭吾 10/11 TOP HOME
 東野圭吾「悪意」です。あまり裏が無さそうな、深く無さそうな意味あいの「悪意」ですが、人はここまで残酷になれるのかと驚く程の他人に対しての仕打ち、いや殺人までもがその動機に気に入らないから程度の悪意でしか無いとしたら、我々は本当にひどい時代を作り上げてしまったのだろう。

 数日後にカナダへカナダへ居を移すという作家が書斎で殺された。発見者は妻と同じ作家でもある幼なじみ。警察は早くも犯人を逮捕するが動機が不明なのだ。何故、殺害を自供した犯人は動機を語らないのか?。刑事は過去へと追及の手を広げるのだ。そこで見たものは・・・。

 人の心の奥に潜む残酷な悪意は無意識の内に首をもたげて密かに様子を伺っている。悲しいかな、大きさの大小はあれど誰もが持っているようだ。人が人を嫌う理由なんて多くはちっぽけな所にあったりする。眉毛の形が嫌いだとか、歩き方が嫌いだとか、話し方が気にくわないとか、気にしなければ済む程度のものだ。また、ちっぽけな出来事も決して忘れない。隣の子が消しゴムのゴミをこちらの机に掛けたとか、お弁当をのぞいて笑ったとか、隣の家の葉が庭に落ちたとか・・・キリがないくらい、くだらない出来事だ。そんなちっぽけな事で人は嫌いになるのだ。そんな芽が出た時に悪意が顔を出してくる。相手の不幸を望む小さな悪意だ。でも、これをそのままにしておくと、その不幸を作り出したくなるのだ。悪意が半身乗り出した時だ。自ら作り出した不幸に相手が見舞われた時に、もし喜んでいる自分を発見したら悪意が全ての姿を現した時だ。こうなったら、手遅れであなた自身が悪意に生まれ変わったのである。
 パラレルワールド・ラブストーリー  東野 圭吾 10/9 TOP HOME
 「パラレルワールド・ラブストーリー」東野圭吾。どうなのでしょう、東野圭吾は本格物と言われているものより、こういったミステリアスなエンターティメントの方が素晴らしいような気がしますけど。記憶が改ざんされたのは真実なのか、現実との整合性を確認しながらその謎に迫るミステリーは、題名にあるように実はラブストーリーなんですね。簡単に言えば三角関係なのですが、誰もが被害者でもあり加害者でもあるように上手く設定されています。この均衡があるからこそ成り立つ物語でもあるわけです。

 敦賀崇史は大学院在学中に電車で同じ曜日の同じ時間に必ず会う女性に恋をした。1年間、声も掛けずに来たのだが、卒業で逢えなくなる為に最後の日に逢おうとするがすれ違いで終わるのだ。敦賀崇史は親友三輪智彦と共に世界をリードしている米国バイテック社に入社、研究部門のMACへ配属され、直接神経に働きかけて仮想現実を作る研究をする事になった。入社して1年後、三輪智彦から自分の付き合っている女性を紹介したいと言われ待ち合わせ場所に出かけた。敦賀崇史がそこで逢ったのは学生中に恋いこがれた電車の女性だった。彼女(津野真由子)もMACへ来る事になったと聞かされる。・・・朝、目覚めた敦賀崇史は朝食を作っている津野真由子を見る。一緒に暮らしているのだ。・・・何が現実なのか?、記憶を探る敦賀崇史は真実に出会えるのであろうか・・・。

 ・・・と、まあこんな感じで過去の現実と記憶の壊れた現在とが並行し交差を繰り返しながら語られていくのです。真実とは・・・・難しい定義ですね。いろいろな側面から検証すべき命題ですが記憶という面から見ると実に不安定で危ういようです。嘘を言っている内に本当に嘘が真実と思えてきたり、完全に思いこんでしまったりしてしまう例は少なくないようです。嘘は事実ではないですから前後の整合性が取れなくなるはずですが、どうもぼくらの脳にはその前後まで替えて整合性を取れるように自動的に改造しているようです。そんな、脳の分野にテクノロジーを持って記憶のメカニズムを研究している登場人物たちなわけですが、実は一人の女性を巡る二人の男性の愛と友情の苦悩の物語でもあるのです。この三者三すくみの設定があるからこそ苦悩のストーリーはバーチャルからリアリティーへ読者は引き込まれるのです。
 記憶の真実を求めていく先に待っているのは哀しい現実なのかも知れませんが、そこから救うのも原因となった研究とは皮肉なものです。しかし、どうなのでしょうか?。哀しい過去、辛い過去、を記憶から取り除いて何もなかったように生きていくのは本当に幸せな事でしょうか?。哀しくとも、辛くても、乗り越えて行かなければ見えない大切な物が有るはずです。実は友情も恋愛もそこまで行ってこそ成就するのです。人は忘れるという防御装置を持っています。装置が作動するまで頑張らなきゃ。辛い坂を登らせてボクを泣かせ欲しかった。
   新野 剛志 10/8 TOP HOME
 新野剛志の「罰」です。新野剛志を読むのは「8月のマルクス」に次いで2冊目です。ぼくは何でもミステリーの範疇に入れてしまうのに抵抗のないヤツですが、まあ、どちらかというとハードボイルドというかサスペンスというかエンターティメントというか・・・。でも、面白く読まさせていただきました。

 恋をしていた従姉妹が父親のベットに・・・。思わず父親を殴りつけてしまったが、打ち所悪く死亡。父親殺しの罪を背負い刑務所に。今は成田の空港近くのパーキングに勤務しているが、そこは従姉妹の住んでいる所でもあった。そのパーキングの上司から無理矢理押しつけられた海外逃亡の補助の仕事だが、そこで殺人事件が起きてしまう。そこから何者かに命を狙われながらも男の真実を追う旅が始まるのだった。

 ・・・と、いうわけで、罪を背負った男が、人生に失望した男が、犯罪に巻き込まれ新たな罪を重ねようとしているのは罰なのか、それとも父親殺しの原因の一端である思い切れなかった自分の過去に対する罰なのか、真実を追究する果てに答えが得られるのであろうか。そもそも罰が何かと言うよりも罰を受けなければならないような事があるのか、ようわからんですたい。父親殺しと言っても傷害致死・・・。・これって刑務所行きなのかな?。  愛すべき女が父親と関係を持ったわけですが、それが無理矢理なされた関係ならともかく同意しているわけですから、事件を機会に心が離れても不思議じゃないし、むしろ自然ではないだろうか。そんな女の後追い、住居を側に移し見守るなんて・・・なんとありがた迷惑な。そうか、どうも台詞がスポーツ青年の筈が文学青年的で違和感をたびたび感じたけれど、女々しい男なのかも知れない。うむ、つじつまが合うな。(^_^;)
 女は自分の為に父親殺しの罪を背負った男をどう見ていたのだろうか?。その行為で自分を好いていてくれる事は分かったと思うけど、その後、自分を追って側にいるくせに告白をするわけでもなく、身体を求めるわけでもなく、一人罪を背負った聖職者のようなつもりの男を、一体どう見ていたのだろうか?

 そうかぁ、これは女の側にたった話なのだ、罪を犯したのも女で、罰を受けなければならないのは女の方だったのか。ふむ、納得。純情で告白も出来ずにただ後ろ姿を目で追うしかない男よりも、現実に肌の温もりを持った人間らしい父親に惹かれたわけだ。それなのに、この情けない男は嫉妬して父親殺しまで・・・・。その上、愛情が冷めれば救いもあるのに、諦めもせず、反対に自分の近くに生活圏を移してきた。それも、想いのたけを伝える出もなく、また以前のように後ろ姿だけ目で追う男。その男を受け入れる事が自分の罰だと女は思っていたのだろう。じゃなければつじつまが合わないのだ。罪を犯し、警察に出頭すれば済むものの、逃亡を企てて、行く先々で事件を複雑にした男に付いていくのも自分の罰として女は従ったのだ。

 ・・・・と、いうわけで、いかようにも取れる罰です。何に対しても追求する男は強くなければならないし、弱い男は追求出来ないのである。どんな男であるか行動と言動で見えてくるのである。ミスマッチはあり得ないのである。高倉健は女々しくないのだ。帯に「罪を償った男に、最後の罰が下される」と。償った罪に罰が下されるのか?答えはノーだろ。罰を受けていたのは女であり、女に背負わずに済む筈の罪を押しつけたのは男ではなかったのか。帯に書くなら「男の償わなかった罪に罰が下ったのだ!」とお願いしたい。しかし、男も最後には高倉健になれたのである。このラストが男も女も他の登場人物も、そして読者も救ったのだ。これはハードボイルドだ。まさに、最後のここだけにハードボイルドがあった。
 ぼんくら  宮部 みゆき 10/5 TOP HOME
 宮部みゆきの時代劇ミステリー「ぼんくら」です。好きです。ボクはこういうのは大好きです。江戸の町並み、道路、長屋、堀、橋・・・・が目の前に浮かんで、そこの生活の音までが聞こえてくるような、そんな時代劇です。

 江戸、深川北町にある鉄瓶長屋の兄、妹に寝たきりの父親の家で殺人事件が起きたのが発端です。夜明け前に兄が階下で殺されたと妹が差配人の九兵衛の所へ届けます。しかし、様子から妹が殺したのではと思われる現場。しかし、九兵衛の計らいにより殺し屋の仕業で収めます。この事件から1軒、また1軒と何か問題が起きては長屋を後にしていきます。減っていく住民。何か裏にありそうだと同心井筒半四郎が乗り出すのでした。

 江戸庶民の生活にズッポリ入り込み、あたかも見てきたような時代物語りは物語自体に存在感がたっぷり。当時の身分制度や生活慣習が当たり前のように染みこんだ登場人物たちは生き生きと飛び回っています。そこで生きている者にとっては当たり前の事ですが、こうもあっさり書かれてしまうと数百年前の時代とは思えない驚きがあります。素晴らしいのは文中で語られる奉行署の仕組み、町役人の仕組み、与力と同心、目明かしと岡っ引き、商家の仕組みなどなど時代背景を確実に捉えた、登場人物の生き方、考え方が、まさにこの時代のものなのです。この時代に合った生き方こそが、共感を呼んでいるとも言えそうです。身分制度が根ざした封建社会の筈なのに、電気も車もない貧しい時代だったのに、当たり前に普通に生きていく人々に愛着を覚え、現在無くしてしまった日本人の心を憂い、何故か懐かしく、決して悪い時代じゃなかったとも思うなんて、どういうわけでしょうか?。どんな時代でも、どんな境遇でも、救いは限りなく有るはず、諦めちゃダメだぞと宮部ミステリーはぼんくらなボクらに語りかけているようです。
 暗鬼  乃南 アサ 10/3 TOP HOME
 「暗鬼」乃南アサです。見合いながら心惹かれるものがあり結婚をする。嫁ぎ先は曾祖母、祖父、祖母、義父、義母、義弟、義妹の8人家族だった。思いも寄らぬ大歓迎を受け、その心優しい家族の対応に安心するのであったが、ある晩のこと夜中に家族が集まって話しているのを偶然見てしまう。その時から家族に対しての不審が広がり異様な雰囲気を感じるのであった。呪われた家族の秘密とは・・・。

 ・・・家族の小さな言動や行動が少しずつ異様に感じてくる。まさにサスペンスですねぇ。そもそも日常の態度が模範的家族過ぎることも異様ですけど、それが崩れ始める時から怖さが増します。怪奇ホラーとかじゃなくサイコスリラーとで言うのでしょうか。いかに有るべし・・・・みたいな家族の定義なんぞあるわけじゃ無いのですから、自由に好きなように作り上げれば良いわけです。現に結構、変わったしきたりや、変わった家族関係や、変わった生活習慣など、見聞きしますからね。もっとも、そのどの家族も自分じゃ変わっていないと思っているわけですが。しかし、自由と言っても程度ですからねぇ。人の道を踏み外してしまうようなものは、いかがなものでしょうか。人間とうのはつくづくコワイものです。
 そして扉が閉ざされた  岡嶋 二人 10/2 TOP HOME
 岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」。別荘に集まった男女5人。一人の女性が崖から落ちて死んだ。事件後数ヶ月して残った4人が死んだ娘の母親に拉致され、別荘の下に作られている核シェルターへ監禁される。4人の中に犯人がいると示唆され4人は事件の日を振り返りながら容疑者を絞っていくのだった。果たして犯人は4人の中にいるのだろうか?閉じこめられた4人の運命は?

 ・・・と、いうストーリーです。この間読んだ東野圭吾の「むかし僕が死んだ家」のように1幕物の芝居になりそうな推理劇です。一つの場所にいながら、記憶をたどって真相を探る。全員が容疑者であると同時に探偵でもあります。お互いの供述は確かめるすべもなく、出来るのはただ供述の中から矛盾点などを探るしかない状況で真相を究明するのですから、一つ一つの台詞や記憶の供述に深い意味があります。また核シェルターに監禁されているという状況が食糧問題などを含めて生死をいっする期限が付いているわけで、嫌がおうにも真相究明をしないとならない状況にもなっています。面白い設定で緊迫した状況の中での推理劇は確かに読ませるのですが、警察が事故死と断定した事件を娘の母親は何をもって疑問に感じたのか、いまひとつ不明瞭な部分が気になりました。
 珊瑚色ラプソディ  岡嶋 二人 10/1 TOP HOME
 岡嶋二人「珊瑚色ラプソディ」。オーストラリアから結婚式のため休暇を取り日本へ戻る里見は成田で迎えに来た弟から婚約者の彩子が学生時代の友達と出かけた沖縄で急性盲腸炎のため入院したと告げられる。急遽、そのまま沖縄に向かった。入院している病院へたどり着くが、手術を受ける前の2日間の記憶が無い上に同行した女友達が行方不明だと聞かされる。記憶のない2日間に何が起きたのか?女友達の行方は?

 ・・・と、相変わらず最初から謎、謎、謎のオンパレードで目を離せない展開が続きます。婚約者の足取りを追えば追う程、新事実が出てきて尚更混迷。真実が知りたいのは読者も同じ、目が離せません。この息もつかせない展開は岡嶋二人の独断場ですね。他の作品も同じレベルで維持されているところにすごさを見る事が出来ます。無駄がない、無駄がないからテンポが崩れない、テンポが崩れないから読者を引きつけて飽きさせない。豊富な題材は別な作品、また別な作品と次々読まされてしまう大きな要因ですね。
 半落ち  横山 秀夫 9/30 TOP HOME
 「半落ち」横山秀夫。警察用語で逮捕後の取り調べで全てを供述する事を「落ちる」と言い、全てを語らない供述を「半落ち」と言います。

 W県警中央署の本部教養課次席の梶警部はアルツハイマー症の妻を殺害する。妻に懇願されての嘱託殺人であった。W県警本部捜査第一課強行犯指導官 志木警視は梶の取り調べを命ぜられる。全てをありのまま話す梶ではあったが、殺害してから自首するまでの空白の2日間については沈黙を守るのであった。空白の2日間は警察と新聞社、警察と検察、検察と裁判官、と様々な確執を生みつつ偽りの自供として裁判を通過してしまう。空白の2日間に何があったのか?。物語は感動のラストへ怒濤のように雪崩れ込むのだ。

 「陰の季節」で警察内部の一般社会とは違った職場関係や人間関係に新鮮な驚きを持って触れましたが、「半落ち」ではそれに加えてマスコミ、検察、弁護士、裁判所と司法界の全てが事件を軸に語られ、絶妙な緊迫感を常に維持しながら2日間の謎に様々な角度から解明の手が差し伸べられました。その一つ一つの章が見事に完結し次の章へバトンを渡していく展開は見事と言うしかないでしょう。人は何の為に生きるのか、生きて行かれるのか、大きな命題が示されます。関わり合う人々の生活の中に大きな伏線があり、それらがラストの感動へ導いてくれます。誰もが向き合わなくてはならない現実がそこにあり、どのように向き合って行けばいいのか複数の答えが明示されますが、正解は示されません。いや、正解なんてないのでしょう。

 話から外れますが、ボクは3年前から臓器提供意思表示カードを所持しています。崇高な想いがあるわけじゃありませんし、子供が心臓病を患っているからでもありません。簡単に言えばリサイクルが好きなんです。医学の進歩とか、医学と倫理とか、人間の尊厳とか、いろいろ考えない訳じゃないのですが使えるのなら使った方が良いのだろうと思うのです。一番良いのは、カードを持った事で「死」に一時でも真面目に向き合えると言う事です。常にそればかり考えている訳じゃありませんが、自分のやりたい事、やらなければいけない事が、心の声で聞けるのです。
 むかし僕が死んだ家  東野 圭吾 9/29 TOP HOME
 東野圭吾「むかし僕が死んだ家」。また東野圭吾の驚かされる一面を見せられました。まるで一幕物の芝居を見るようで緊迫感がヒシヒシと感じられ、まさにミステリー&サスペンス、本格ミステリーほかならない作品です。

 高校の同窓会で7年前に別れた恋人と再会する。その既に結婚していた恋人から一週間後に相談事をされる。相談とは「実は小学校前の記憶が全然無い。アルバム等も小学校の入学以来の物しかない。最近父親が亡くなり所持品から一枚の地図とカギを見つけた。ぞのカギに見覚えがある。ついては一緒に地図に示された場所へ行ってくれないか」というものだった。彼女の夫は現在ニューヨークへ単身赴任中で、3歳の一人娘は彼女が幼児虐待の兆しが見える事から夫の実家に居るとの状況であった。迷った末、同行を決意し車で地図に示された山荘へ向かうのだった。彼女の無くしてしまった記憶とは?。記憶は蘇るのか?

 ・・・山荘だけ。これ以上省けないくらいシンプルなのですが、どうしてどうして山荘に残された品物(伏線とも言い換えられますが)が出てき始めるとそれぞれが絡み合い複雑でミステリアスな謎が展開されます。蝋燭と懐中電灯しかない夜迎える頃から緊迫感は高まり、もう本は閉じれなくなります。交錯した糸が解きほぐされた時、謎が解けた開放感と、何故に彼女の現在があるのかまで理解できる事になり、深い感動を覚えるでしょう。さりげなく書かれた1篇の「むかし僕が死んだ家」は実は緻密に計算された本格派ミステリーでもありました。
 陰の季節  横山 秀夫 9/28 TOP HOME
 「陰の季節」横山秀夫。(1)陰の季節(2)地の声(3)黒い線(4)鞄、以上4篇が収録された短編集です。表題の「陰の季節」は平成10年第5回松本清張賞の受賞作品です。県警本部警部部警務課が中心となった警察内部小説です。まずは内部事情の詳しさに驚かされてしまいますが、本が書ける程の題材が有る事に一層の驚きを覚えます。事件はミステリアスであり展開はサスペンス、登場人物の今までにない役職のうえに、役職に伴う人物像など真新しさがいっぱいです。収録された作品の全てが十二分に楽しめるミステリーです。大げさな表現や詩的表現など、集中を妨げる事のない語り口が構成力と共に素晴らしい。久しぶりのお薦めの逸品でしょう。
 七日間の身代金  岡嶋 二人 9/27 TOP HOME
 お得意の誘拐劇、岡嶋二人の「七日間の身代金」です。資産家の後妻から亡き夫の息子と自分の弟が誘拐されたと、ミュージシャンカップルが相談を受ける。しかし、相談したにも関わらず人質の身の安全を心配した後妻は断り一人で身代金の受け渡しに向かうのでした。それをミュージシャンカップルが追います。カップルの女性の方の父親が警察署長なので途中で連絡を入れます。身代金の受け渡し場が特定されるとそこは湘南海岸の小さな島。警備が張り巡らされる中、後妻は身代金を持って島に渡ると間もなく銃声が。警察が駆けつけるとそこには銃で撃たれて殺害された後妻の姿がだけが・・・・。四方を海で囲まれ陸海空から監視されている島から犯人はどの様にして逃げたのか・・・。

 誘拐事件に密室の謎まで、たっぷり盛りだくさんな「七日間の身代金」は軽快なテンポで最後まで一気に読まされました。沢山の謎(謎こそ伏線でもありますが)が次々と出てくるのだけれど、それがどの様に結びつくのか興味をわかさせてくれるので飽きないのですね。誘拐というパズル、密室というパズル、そんなパズルを解くような気軽さが陰惨な事件をオブラートしているようなミステリーです。
 家族趣味  乃南 アサ 9/26 TOP HOME
 「家族趣味」乃南アサ。(1)疑惑の輝き(2)彫刻する人(3)忘れ物(4)デジ・ボーイ(5)家族趣味、以上5篇収録されている短編集です。全作が共通のテーマではありませんが、所謂日常的というか特別の人間が犯す過ちではなく普通の生活の中で起きている話です。普通の人が普通に生活している中で、ちょっとしたボタンの掛け違いが大きな出来事に発展してしまう。それの怖さとは誰でもが心の奥に悪意が潜んでいるというような人間的な部分よりも、安心していられる家庭や学校や会社・・・そして社会がいかに脆く不安定なものなのかと思わざる終えない状況こそが怖いのですね。成るようにしか成らない、なんて簡単に言い切りたいけれど、やはり成るように成らしている・・・ように思えます。成らしている1本の柱でも無くなれば崩壊してしまう程、微妙なバランスがあるのじゃないだろうか。日常とは故に壊れやすいわけで、壊れやすいから強い意志が必要なのですね。
 400年の遺言  柄刀 一 9/25 TOP HOME
 「400年の遺言」柄刀一。これほど緻密に壮大なスケールで描かれたミステリーがあっただろうか・・・・なんて何処かの過大広告みたいな事を書いてしまいましたが、まさに久々に見る本格ミステリーの醍醐味が全て挿入された完璧な作品と言っても良いでしょう。素晴らしい。

 400年の歴史を持つ京都の龍遠寺。神社仏閣の巡回保安員の蔭山は親友で京都府警本部捜査第一課の係長、高階警部の妻、枝織と訪れた龍遠寺の庭園で首にロープを巻かれた住職の子供と庭師の倒れている姿を発見する。子供は命をとりとめたが庭師は死亡するが今際の際に庭師から「この子を、頼むと」最期の言葉を託される。実はこの庭園で庭師の息子が4年前に殺害されていたのだ。同じ頃、歴史事物保全財団の職員が、一人は失踪、一人は殺害される事件が起きた。歴史ある古都の寺の庭園に隠された秘密とは、殺人事件とどのようにつながるのか。感動のラストまで壮大で緻密な本格ミステリーは今、始まるのだ。

 謎に包まれた庭園ではありますが、京都の寺社ならではの枯山水や白砂を引き滝に川に山と龍遠寺の庭園は知る人ぞ知る有名な庭園なのです。ただ、置き石が北斗七星も表しているかのように配置されたり座敷の柱も北斗七星をもじっていたり、そしてそれらが何かを秘めているような謎として有るため学術的にも注目されていたりします。この辺の書き込みがしっかり書かれているので400年の歴史が重厚に迫って来るようなのでしょう。そして現在の殺人事件が絡み合うわけだから面白くないわけがないじゃないですか。それに、蔭山が出会う事件は密室殺人ですし、歴史事物保全財団職員の事件も首輪につながれた犬のように監視の中で行われた殺人事件で事件の謎でさえ不可思議なのに絡んでくる寺社の庭園の謎まであるのだから、めくるページは止まらないわけです。ふと、出会った本に逸品を見る事がありますが、ホントに久しぶりに本格ミステリーの醍醐味が味わえました。オーバーな表現や気取った台詞などなく語り口が平坦でいながら軽くなく、正当派的な文章は読みやすく物語を損なうことなく表現されています。構成に少し凝った所もありますが、それはそれでこの作品らしさとも言えそうです。こういう本ほど多くを語れないのが残念です。
 スナーク狩り  宮部 みゆき 9/23 TOP HOME
 宮部みゆき「スナーク狩り」です。題名から内容を窺い知る事の出来ない本です。スナークとは?まあ、明かさない方が良いので(明かしても小説の価値を減少させるものではありませんが)明かしませんが、明かされる時にテーマが見えてきます。しかし、犯罪に対して法律を含めていかに我々は無力なのか知らされますね。

 裏切られた元恋人の結婚式へ散弾銃を持ち込んで現れた女性。お客の一人が女性が銃を所持している事を知って奪おうとする者。職場の信頼している年上の同僚の覚悟の行動を阻止しようと追う若者。貢がせた女性がじゃんになり殺害しようと襲う者。残虐非道な犯罪を犯し裁判にかけられる者。いくつもの人間関係がが交錯し一つに合わさる時、スナークが・・・。

 犯罪とは償えるものなのでしょうか。償いとは何をもって償いとするのでしょうか。犯罪被害者の無念は報われるのか。・・・昨今の凶悪犯罪は目に余るものがあり、人の命がこうも簡単に奪われてしまう現実に為すすべもないのが実情ですね。罪に匹敵した罰が与えられているのだろうかと刑の軽さに驚く事もしばしばです。犯罪の自覚すら心に浮かぶことなく躊躇もせずに犯す人々に果たして更正が必要なのだろうか疑問です。スナーク狩りがスナークにならない為にも替わりに法律がスナークにならなければならない現実がすぐそこまで来ているのだ。
 妻の女友達  小池真理子 9/22 TOP HOME
 短編集「妻の女友達」小池真理子です。(1)菩薩のような女(2)転落(3)男喰いの女(4)妻の女友達(5)間違った死に場所(6)セ.フィニー 終幕、の6篇が収録されています。どれもが女性の心に潜む悪意の行方を描いています。男性作家が想像や思い込みで書くのと違って女流作家が描いた世界なのだから女性心理はこの通りなのだろうな。・・・・コワイ。(^_^;)

 まあ、悪さ比べをすれば、男女とも同じようなものだと思うし、性別で比較をする事もないのだろう。その質に置いても最近の現実社会を見れば、看護婦仲間による連続亭主殺しや男性顔負けの事件や母性本能は何処へと当たり前にまかり通る幼児虐待など枚挙にいとまがない程に同等にありますからね。陰湿そうなイメージがあるように見えても男性だって陰湿はあるし、ホントに違いを探す方が難しくなって来ているのかも知れませんね。まあ、それでも男性から見れば未だに女性には優しさや従順さなどのイメージは消えていませんから、小説で女性心理を目の当たりにするとやはり「コワイ」になってしまいます。マリア様は遠くになりにけり・・・だ。
 八月のマルクス  新野 剛志 9/20 TOP HOME
 第45回江戸川乱歩賞受賞作「八月のマルクス」新野剛志。良い題名ですね。題名から対テロリストの話じゃなかろうかと思いましたが違っていました。小峰元の「アルキメデスは手を汚さない」に続く作品名も歴史上の人物を題名に施した本で題名にどう結びついて行くのか興味津々でしたが、同様に「八月のマルクス」も同じく引きつけるものがありますね。

 スキャンダルが元で芸能界を引退している主人公に今ではお笑い界でひとかどの名を上げている元の相方が5年ぶりに会いに来ます。自分は末期ガンだと告げるのですが、よく来た目的も分からぬままに泥酔し別れますが、その後失踪してしまいます。同時期に引退の引き金になったスキャンダル記事を書いた週刊誌の記者の死体が発見されます。警察に嫌疑を掛けられながらも主人公は元相方の足取りを探り始めるのでした。

 そういえば、現実社会にも片割れがスキャンダルで芸能界を去ったコンビがいますね。スキャンダルにもいろいろあるようで、去っても去っても戻れるものや、再起不能なスキャンダル、その物差したるや一般社会にいると全然分からないですね。その裁量は法律じゃなくTV局とプロダクションにあるのでしょうか。メディアを握っている者は強いです。なんでもまかり通してしまうものねぇ。しかし、陰で押しつぶされた亡霊たちは奈落の底へ引きずり降ろそうと、今か今かと待ち受けているのです。怨念は生き続け、そして新しい亡霊を生み出し、それを繰り返す事で維持して行くのです。笑えないお笑いの世界じゃ、洒落にもなりませんがな。
 美しき凶器  東野 圭吾 9/18 TOP HOME
 「美しき凶器」東野圭吾。スポーツ界で現役引退をした4人はそれぞれ別な道を歩いていた。「輝かしき栄光はドーピング」という過去を持つ4人はその資料を奪い取ろうとドーピングを主導した元スポーツ医師を訪ねるが殺人を犯してしまう。証拠隠滅のために放火をし逃走するが、母屋から離れたところに立つ訓練施設に居た
元スポーツ医師のよってサイボーグ化された人間に次々と襲われるようになる・・・。

 ・・・と、まあ、こんな感じの復讐ストーリーであります。スポーツ界のドーピングが動機や凶器(美しき凶器)など全てに関連して来るも、そもそもカナダで過去に行われたというドーピングの詳細がわからず美しき凶器なるものを、どの様にして作り上げたかも想像で終わっており、「鳥人計画」でみせた驚くようなデータ付き説明までは必要がないまでも、もう少し納得出来る説明がないと殺人を犯してまで葬り去りたい気持も伝わらないし、復讐も何故と思わざるおえないのではないでしょうか。ところで、今回も狛江市が「ブルータスの心臓」に続いて登場しました。かなりマイナーな市でありますから知名度は限りなくゼロに近いのではないでしょうかね。今回は多摩川沿いの公園ということで正式には「宿河原公園」と言っております。その上に土手があり「多摩川5本松」と言って東京100景」の一つがあります。ふむぅ、あそこで殺人が起きたんだな。(^_^;)(^_^;) 「ブルータスの心臓」でも出ました成城警察も登場。(所轄は調布警察さって言ってるのにぃ) さて、ドーピングで土を付けてしまいましたが、サスペンスたっぷりに復讐劇は始まります。ハリウッド映画を見るようなビジュアルな展開でハードな映像を連想させ、たっぷり楽しめる事でしょう。・・・謎なんてないけど。
 クリスマス・イブ  岡嶋 二人 9/16 TOP HOME
 岡嶋二人の「クリスマス・イブ」はちょっと今までの岡嶋作品とは毛色の変わったミステリーです。いや。ミステリーとは違うかな・・・。サスペンスとでも言いましょうか謎はないのです。
 クリスマスパーティが行われる山岳地帯の別荘へカップルが向かいます。雪道をやっと到着すると明かりのない真っ暗な山荘が。中に入るり一緒にパーティをするはずだったこの山荘の主人の死体。そしてカップルは謎の男に襲われるのでした。・・・謎の男が誰かはすぐに判明し動機も判明するのですが、後はもう追いつ追われつの逃走劇。果たして凶暴な魔の手から逃れられるのか・・・。
 と、いうようなお話で隠すべき事もないので粗筋もぺらぺら喋れてしまうのです。これが恐怖を感じるかは、殆ど読者のイマジネーションの差で決まるようなもの、どんなに詳しく残忍に書いても受け取り側次第というわけです。ですから、この手は映像化で有効なものの本ではどんなものでしょうね。有名なスピルバーグの「激突」だって映像だからこそで本にして果たして恐怖を表現でき、かつ与えられる事出来るかは疑問ですね。血だとか斧だとか小道具は限界があり、視覚的な怖さは映像で、本では読者が理解できない謎こそが恐怖の源であり謎の解明こそがページをめくる原動力なのです。
 怪しい人びと  東野 圭吾 9/14 TOP HOME
 短編集「怪しい人びと」東野圭吾です。(1)寝ていた女(2)もう一度コールしてくれ(3)死んだら働けない(4)甘いはずなのに(5)結婚報告(6)灯台にて(7)コスタリカの雨は冷たい、以上7篇が収録されています。このところ長編を読み続けたものでちょっと一息つこうかと。・・・こういう時にも短編は良いですね。だいたい短編ですから長編のような大仕掛けはいらないし、テーマも掘り下げる必要もないし、登場人物だって数も少なくさほど書き込まなくても良いですから、読み手にとっても肩を張らずに気軽に読めるわけです。ただ作り手は大変なのでしょうね。無駄をそぎ落として簡潔にしながらも伝わらなくてはならないから1行1行に重みが増すわけで、その上に一応最後ではオチが必要ですからね。「怪しい人びと」は確かに怪しい人々が満載です。ただ最後に奈落の底へ突き落とすのではなく、辛うじて救いの手があるので心乱されることなく読めます。読み終えた後にちょっと口元だけでニヤリとしフッと一息はいて次の物語に移る、そんな感じでしょうか。お休み前のナイトキャップにもってこいの一冊でしょう。
  震える岩 霊験お初捕り物控え  宮部 みゆき 9/12 TOP HOME
 霊験お初捕り物控えの第一作目「震える岩」宮部みゆき。先に2作目の「天狗風」を読んでしまいましたが、短編集「かまいたち」で既に収録されていた「迷い鳩」と「騒ぐ刀」を読んでいますのでシテュエイションは知っていましたからすんなり溶け込む事が出来ました。ですから長編の2作目と言う事になりますかね。

 姉妹屋という一善飯屋で兄嫁と働くお初は、兄は岡っ引きの六蔵で幼い頃から持っている不思議な力で事件解決の手助けをしている。またお初は、南町奉行根岸肥前守鎮衛の後ろ盾がもあるのだ。深川の十間長屋で起きた死人憑きの騒ぎを発端に幼児殺人事件が。追う六蔵とお初、右京之介を迎えるのは赤穂浪士討ち入りの忠臣蔵の事件だった。百年前の討ち入りとどの様に結びつくのか。天下の御政道は無情にも怨念を生み出してしまったのか・・・。

 赤穂浪士の吉良邸討ち入り、「忠臣蔵」は日本で最長期間演じられている芝居じゃなかろうか。忠義のため敵討ちをし最後には自決するという美学は多くの共感を生み語り継がれてきましたが、またもや新説忠臣蔵が登場し物語の中枢を占めています。そもそも敵討ちですから敵じゃなければ意味のない事になってしまいます。つまり浅野内匠頭が殿中松の廊下で吉良上野之介に刃傷に及んだのは勅使を迎える儀式の当番大名だった浅野内匠頭がその采配の段取りを吉良上野之介の教えを請うのに賄賂が少なかったから意地悪をされ、堪忍袋の緒がきれて起きたとされるのが一般的な解釈ですね。もう一つの説は、浅野内匠頭の赤穂城は当時多くの大名が困窮していたにも関わらず塩田技術を持っている御陰で他藩に比べて大いに潤っていたそうです。また浅野家はその技術を門外不出の藩の最高機密として狙ってくる隠密などに対し最大の防御態勢を引いていました。困窮していた藩を立て直したいと願っていた吉良上野之介はその塩田技術が欲しかったわけで、時の老中と結託して浅野に技術の譲渡を申し出ていたそうな。で、語り継がれるような賄賂の少なさの意地悪は無く、むしろ塩田技術をしつこく求めてくる吉良上野之介に怒り爆発とうことらしい。また勅使お迎えの儀の当番は二人の大名が充てられており、その内の一人の浅野内匠頭はなんと二度目の役で一度経験しているという事。それなら儀式の仕方など聞く必要もないわけです。つまり藩が取りつぶしになる事(家臣が路頭に迷う)も承知で刃傷に及ぶ浅野内匠頭は名君であろうかというわけです。実際のところ吉良上野之介は名君の誉れ高いと伝えられています。

 さて、宮部みゆき説の忠臣蔵、唸らせますねぇ。題名の「震える岩」は浅野内匠頭が切腹をした陸奥一関藩田村家の下屋敷で夜になると庭の岩が震え出す事から来ていますが、お奉行と同行してお初と右京之介が見に行きホントに震えているところを見てしまいます。その上、お初の目には切腹される場面がおぼろに見えて来てしまいました。震える岩は何の怨念なのでしょうか。 「風さそう 花よりもなを われはまた 春の名残をいかにとやせむ」
 あかんべえ  宮部 みゆき 9/10 TOP HOME
 時代小説「あかんべえ」宮部みゆき。定評のある宮部みゆきの数ある時代小説のなかで「霊験お初捕り物控え」では岡っ引き六蔵の妹”お初”が特殊能力(超能力って感じと違いますよね、霊感は)を使って事件を解決しますが、短編集などでもこの特殊能力の話が数多く出てきますね。ボクなどホントに江戸時代の頃には有ったのではと思ったりします。(^_^;) また、題材そのものが摩訶不思議なお話だったりします。「あかんべえ」もそんな不思議なおはなしでした。

 本所にある弁当や「高田屋」の主人七兵衛は身寄りのない子供らを引き取っては面倒を見ていた。太一郎はそん中の一人で今では一人前の料理人となり下働きの多恵と所帯を持っようにまでなり、おりんという娘も授かっている。子供の居ない七兵衛はおりんを孫のように可愛がっている。そんな折り、太一郎に「海辺大工町」へ店を出さないかという話が元上がった。話はトントン拍子に進み高田屋からも人を出してもらいのれんをあげる準備が進んでいた、そんな忙しい時におりんは高熱を出して生死を彷徨うほどの重病になりつつも奇跡的に持ち直し助かるのだが、赤い着物を着た女の子と家の中で出会うのだ。女の子はおりんにあかんべえをして消えてしまった。それからというもの、次々と他の者のには見えない人が・・・。

 物語を通じて、人の徳とか業とかが登場人物の言葉を借りてさりげなく語られます。特別な大層な事じゃなく、いつもぼくらの廻りにある普通の事なのです。人の生き方みたいなものが言い回しや台詞に収められている事によって教訓めくわけでもなく、あくまでも自然に見えてくるようです。否応なしに心に入り込んでくる様々な誘惑から逃れる事はそんなたやすい事じゃありません。だからといって気の向くまま風の向くまま流されたって決して望む結果に終わるのは難しいはなし。どのように自分を制御し律していくかは結局自分次第ですが、心して闘わないと火の粉にさらされるのも自分だと覚悟しないとね。二転三転しラストの大円団は壮観ですらあります。おりんと、そしておりんに見えるものとにも別れがたいラストは感動でしょう。
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